家畜な日々
非現実:作
■ 〜愛しき繭〜10
「うっわ〜〜大分酷くなったなぁ」
「そ、んな……うぅ」
「相当臭いな?」
「…… ……」
「可哀想になぁ」
「ぅぅ」
その言葉とは裏腹にユウジの表情は嬉々としている。
ユウジに言われると更にヘコむ。
「あのっ、ユウジぃ〜〜もういいでしょ……?」
「んぅ〜〜〜?」
途端眉を潜めるユウジに、酷く後悔した。
散々、雌豚由紀にも言い聞かせていた事……私は言い間違えた事に気付いた。
「ご、ごめんなさぃぃ〜〜許してぇ……」
「ふふん、解ったなら言い直せ」
「はい……あの、ユウジ様……もぅ、お許し下さい…ませ」
「そうだ、今度間違えたら置いてくぞ?」
「申し訳…ありませんぅ」
「ふふふ、いいぞ僕と話すときは奴隷言葉だからな」
「はい……ユウジ様、心得ております」
中高社会人と苛められ続けた私は、スイッチを入れれば相手に媚びる言葉は瞬時に出るものだ。
(ホントは嫌だけど)
これ以上嫌な事に会わない為の、自己防衛だった。
「僕は明日日本に帰ろうと思うんだよ」
「ぇ?」
「滞在も2日延長してるしさ、手術の予定もあるんだよ」
「あ、はいっ!!」
「そこでだけどな、公衆便器をどうしようかってトコなんだけど?」
「……あ、あのっ!?」
必死だった。
いや、ここは必死にもなるものだった。
置いていかれたら……もう生きてはいけそうに無い。
必死で言葉を選んでいた。
「あ、あのっぉ…ユウジ様ぁ、どうか公衆便器繭も日本に連れて帰らせて下さい。
に、日本で……ユウジ様の公衆便器として……や、役に立ちたいです。」
「ぷくっ……ふふふ、あぁ〜〜はっはっはっは。
いいぞぉ実にいいじゃないかぁ、公衆便器繭ぅ〜。」
夜空にユウジの笑い声が木霊する。
私は更に哀願する。
「ユウジ様、ど…どうかどうか公衆便器繭も…連れてって下さい。
オ、オシッコも精液を…精液を飲ませて……下さぃ。」
「よぉし、日本に帰っても僕のを全部飲む事、そして公衆便器として誓うか?」
「誓いますっ、誓いますぅ!!」
「結婚の誓いじゃないんだぞ、お前は公衆便器として誓うんだな?」
「は、はぃぃ……私は花嫁としてでなく公衆便器として誓いますぅ。
一生、一生……ユウジ様の公衆便器として付き添いますぅ。」
涙が零れた。
悪魔との契約だった。
婚前旅行の筈が、奴隷への始まりの旅立ちだった。
涙は止まらない。
幸せの誓いを述べる筈の口は、どうした事だろう……。
日常に置いても人では無くなる、公衆便器として生きるという地獄の宣言。
「よしっ、良いだろう、日本に連れて帰ってやるよ」
「ありがとうございますぅ!」
「ただね……?」
そう言い淀んだユウジ様はポケットからデジカメを取り出した。
「照明の写真を撮っておくよ?」
「ぇ?」
「告げ口したらどうなるか、解ってもらうようにね」
「そ…そんなっ!?」
パシャァッ!!
パシャパシャァ!
連続のフラッシュに思わず唯一動く首を逸らす。
「ふふふ、公衆便器繭の姿を焼き付けておくよ?」
「や…ぁ…やだぁ!!」
「誰かに言ったらこれがネットに流れるんだよ?」
「そ、そんな事っ!」
パシャ……パシャ、パシャパシャァァ!!。
「僕は別にいいけどね、むしろこんな公衆便器繭を全国に見て貰いたいくらいだ」
「ちょ…まってぇ!」
様々に移動しながらデジカメのシャッターを切るユウジは、実に楽しそうだった。
(記録に残るのは……ゃぁ!)
まるでグラビアアイドルみたいに色々な角度でシャッターを切られながら……。
私は恥ずかしい、いや……決して親にも見せられない画像を納められたのだった。
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