家畜な日々
非現実:作

■ 〜さよなら過去〜6

会場に戻るなり、目敏く副委員長こと渡辺さんが近寄って来る。
このタイミングの良さは、恐らくご主人様が一報入れたのだろう。
私が敬遠するなか、突如副委員長が顔を近付けてきたのだった。

「随分とお楽しみだったみたいね?」
「え、え…ええ」
「何をして来たのかは知らないけど……フフン、大体の想像は出来たわ」
「っ」
「昔っからチョット何考えてるか解らない叔父さんだったけどねぇ。
ホントに凄い事を平気で出来ちゃうのねぇ、貴方達って。」
「……」
「私もそれなりに経験あるけど〜〜〜由紀さん、貴女……」
「ぇ?」
「口……くっさいわぁよぉ〜〜、フフフッ」

咄嗟に私は手を口にやる。
何も言い返せない。
この(憎たらしい)副委員長は、私の今を知っている。
それに、ご主人様の親戚とあらば尚更の事。

「そうそう、男子達が話ししたいって言ってるのね?。
今からつれて来るから、その臭い口は何とかしておいた方が良いかもね。」

そう言い放ってから副委員長は男子達が集まる所へと向かってしまった。
(何とかって言ったって……)
これはご主人様のご命令である、何ともならないのだ。
多分、私の推測だがあの副委員長は、私がどうにも出来ない事を知ってて言ったのだと思う。
去り際の、アノ憎たらしい笑みはそれを意味しているのだろう。
(何よ……アイツ〜〜〜)
昔だったら散々言ってやるのに…… ……悔しかった。

程なくして、副委員長と男子3人が私の目の前に立つ。
別段私から話題を振るつもりもないし、極力口を開きたくなかった為、話の先導は自然と副委員長が進行している。
男子達も何から喋っていいのか解らないという感じで、副委員長が取り持つ話題に尾びれを付けて私に質問を繰り返すだけ。
まるで副委員長が通訳をしているような、そんな下らない会話だった……。

「私なんかさ、どんなに良い服着てもたかが知れてるじゃない?。
でもさぁ〜やっぱり由紀さんはセンスが良いと思うのよねぇ〜。」
「いやいや副委員長も中々キマってるって。
由紀さんのはセクシー過ぎなんよ、すげー眩しいもん。」
「あ〜何かスゲーよなぁ、オーラが出てるっての?」
「ここまでセクシーに着こなせるのはヤッパリ由紀さんだけよねぇ〜」
「べ、別に……普通、よ」
「これが普通かよ〜〜彼氏とか超羨ましいんだけど」
「そんなの、居ないし」
「マジでぇぇぇ〜〜〜いや、絶対嘘でしょ〜?」
「そうそう、フりーなんてありえねぇよー」
「だよなぁ〜も〜〜〜気ぃ使っちゃってくれて〜〜」

ここで「じゃあ俺が……」と言えるほどの勇気はないらしい。
(まぁ…御免被るケド)
悪い気はしないがジロジロと上から下まで見るのは止めて欲しい……まるで視姦されているような気分になる。
肩口から羽織っているストールを、さりげなく胸元に宛がい直す。
苛め続けられている乳首の突起は絶対に見られてはならないのだ。
ドレスで身を包んではいるものの、この中身は常人では考えられないモノと改造されている。
男子達の好奇の視線は、確実に私を快楽に導いていた。
……身体が疼く。

はっきり言って私は話など聞いちゃいない、いや聞いてるほど余裕がない。
見られているだけでも快楽、自分の理性と性欲に溺れかけている。
(早いトコ、1人になって落ち着きたい)
その思いとは裏腹に、今なら輪の中に入れるかもと変な期待を抱く男子達がチラホラと集まって来る。
気付けば、三分の一ほどの男子生徒が私を取り巻いていた。
360度見渡しても、男子生徒のギラついた眼差し。
昔ならば、それこそ女王様気分にでもなっただろうシュチュエーション。
だけど今はそれどころではない。
平然を装いながらもロングスカートで隠れている両足は微かに震え、下着無しの下半身はグショグショに濡れている。
まだ隠されているから何とかなるのだが、縄と穴開きブラの責めで散々充血しきっている乳首が痛くて堪らない。
少しでも無理して動くと、リングピアスにぶら下がっている鈴が音を奏でてしまうのだ。
既に何度となく、淫靡な鈴の音は聞かれている筈。

「スタイル更に良くなったんじゃない?」
「そう?」
「いや〜そこら辺のグラビアアイドルなんか目じゃないよ」
「アハ、はは」

正面に立つ男子生徒(相変わらず名前が思い出せない)は、スタイルの事ばかり褒めちぎって来る。
そして本人は私に気付かれていないと思っているのだろう、胸の谷間をチラチラと盗み見ている。
(ったく、キモいってばっ!)
さりげなく位置を真正面からずらす私。
身体にはお金も時間も十分に掛けてきたが、今日の胸のボリュームアップは間違いなく、ご主人様の仕立てた縄のせいである。
確かに細身と診断される身体のラインにしては、以上に膨らんでいるのかもしれない。
時間が立てば経つほど男子同級生達は顔を赤らめ、私に執拗なくらい絡んでくる。
お酒の勢いというやつなのだろう。
私を取り巻く輪で、ウェイターさんが4人がかりで忙しそうにお代わりを持って来る。
そして私は、カラカラに乾いた口内でご主人様の愛を感じつつも、流石に潤いを求めていた。

「飲まないんだね、由紀さんて」
「だねぇ、ちょっと以外?」
「飲もうよぉ〜〜久々に会ったんだし愉しくやろ〜ぜぇ?」
「あはは、はは……」

口に手を当てながら、私は適当な誤魔化しの笑いをするのだった。

「由紀さんて、喋る時は口に手をやるけどぉ、ソレって何かの礼儀作法?」
「ぇ?」

副委員長だった。
(……この子っ!?)
一瞬、視姦の快楽を忘れるほどの嫌悪が迸った。
そうだ副委員長は知っている。

「べ、別に礼儀とかないけどネ……ただの……癖、かな」
「そなんだ〜〜〜へぇ〜〜」
「場慣れしてるってやつ〜〜?」
「そ、そんなんじゃ無いわよ……別に」
「そのドレスとか、スッゲー艶っぽくて着慣れてる感じするんだけど?」
「合コンとかでドレスなんか着ないし……」
「うぉぉ〜〜〜合コンするんだぁ〜〜〜行ってみてぇぇぇ!」
「煩いよお前ぇ〜〜、まぁ由紀さん目当てのヤローばっかでしょ?」
「あは……ははは…… ……あの、ちょっとゴメンね」

もう嫌だ……ギラついた視線に参ってしまいそうだった。
ドレスの胸元を気にしつつ、零れ落ちない様にこの場から立ち去ろうとした時だった。
場から抜け出したい一身で急いでいたという事もあったのかもしれない、無理した動きが私を凍りつかせた。

リリィイィイイン、チリイイィイイィィン……。

周囲が突如無言となる。
無音の中で、揺れが収まるまで鈴は鳴り続けたのだった。
その場の全員が顔を見合わせた後だった、1人の男子生徒が言った。

「あのサ、鈴付けてる?」

その言葉に、顔面おろか全身が強張る。
今のは拙かった……派手に鳴った……丁度悪いタイミングだった。
ど、どうするっ私っ!?。
「乳首のリングピアスからぶら下がっている鈴が鳴っているのよ?」なんて事、絶対に言えない。
でも外部の装飾はイヤリングとネックレス、ブレスレットとアンクレット。
思い付く部位の装飾はそれだけであり、そこには当然鈴など付いていない。
そんな絶体絶命の中、助け舟を出したのは副委員長の渡辺さんだった。

「最近の服って凝っててね、由紀さんが着てるドレスもフリルの中に鈴が入ってるんじゃないのかな?」
「へぇ〜〜そうなんだ……流行にはさすがに敏感だねぇ〜」
「ま、まぁ……ね」

この場合はどうしようもない……この好機に便乗する私であった。
盗み見るかのように副委員長が微笑んでいる。
彼女は私の今を知っている……駄目だ、逆らえない立場のお方。
私は全身の快楽を抑えつつ、覚悟した。

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