家畜な日々
非現実:作

■ 〜主役は後から〜9

「おいおい、見てみろムネさん、コヤツ!」

おねだりの言葉を発する事が出来ない状態であった私の取った行動に、若干不満の声を漏らすのはご主人様が言った。
その口調はかなりご立腹と言ったところである。
ヒュンヒュンと空を切り裂くバラ鞭に対して、自然と下半身をクイクイッと動かしてしまったのが勘に触ったようであった。
(えぇっと一体何故に、ですか?)
あらゆる調教を経て、私はどんな責めに対しても従順かつ至福の思いを込めて言葉や態度を示せるようになれた。
寧ろ、変態家畜にそぐわない態度は絶対認めない筈だった。

「駄目ですよぉ雌豚由紀、今の大野さんは娘さんの為に鞭を振るうんですから〜」

ムネさんが少しニヤケ顔で言う。
正しく「興がそがれた」そんなご主人様は鞭を振るう事無く、眉間の皺を寄せながら佐治様の隣に座り直した。

…… …… ……よく解らない。

それよりも、何だかチョット面倒な事など考えてられなかった。
ただ、熱蝋による低温火傷からくるこの疼いた身体を強く鞭打って欲しかった。
私は必死の思いで拘束された身体が許される最大限の動きで下半身を淫猥に動かしておねだりする。

「いやいやいや〜〜駄目駄目駄目っ、それじゃあ駄目なの雌豚由紀ぃ。
あぁ〜〜なんでこう解らないかなぁ〜〜ていうか、相当空気読まないネェ?。」
「んぁぅあぁ、ぉっ?」
「いっやぁ〜よぉくこれで繭さんと同じ大手の会社に入社できたなぁ〜ねぇっ?」

大げさなりアクションをしながら後方に座るご主人様と顔を合わせるムネ様だった。

「ショウとしてはちょっとばかり面倒だわい」

そこに仕事を終えて日本酒を口にしていた佐治様が割って入った。

「ですねぇ〜」

ご主人様も合いの手の言葉である。

「ショウは魅せる事が肝心、面倒な経緯は客も欲求不満に感じてしまうもの。
魅せるSはソレを感じさせずに更なる演出を施すものじゃ。」
「ようはサ、長いんだよムネさん」

佐治様の言葉を要約してご主人様が言い、更に続けて言う。

「アンタならず、いや私が一番良く知っているんだよ、この変態家畜をね。
あぁ良く解っている、でだ……ムネさんには新しい何かがあるんだろ?。」
「あれ、あれあれ……バレました?」
「ったく、解るも何もチョット面倒臭いんだよそのシュチュエーションはさ、ようは!」

そう言いながらご主人様はテーブルに置いていた飲み掛けの酒を一気に煽り、ゆっくりとした動作で鞭を構えた。
ビシイイィイイイッッッ。
正に懇親の一撃といったところだろうか。
冷たい床を叩き付けたバラ鞭は地下室の空気を一瞬にして変えた。
そして無表情のままご主人様は再び口を開く。

「繭がされた……された数々の、された繭の虐めの数々はこんなものではなぁ」
(ぁぁあ、そかっ……私、わたひぃわたしは本当に迫害されなきゃ駄目だったんだ)

咄嗟に私は理解した、いや……理解出来た。
そしてご主人様の家畜に対する普段の感情とは違う事を察したムネ様が慌てふためきながら奥に置いていたバッグを取りに行った。

「でだ、それを踏まえて面白い芸を考えているのだろうムネさん?」
「ぇえ、ええとははっははは、たっ只今!」

バッグを手にしながらムネ様が誤魔化し紛れに言いながら私の前に戻ってきた。

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