家畜な日々
非現実:作

■ 〜主役は後から〜11

ご主人様の声は私の耳には届かない。
だけどこの鞭の乱打はさぞお怒りなのだという事は理解できる。
だけど解らない、解らない。
私は懸命に鞭を受け続け既に感覚が無くなった腰を振り、淫らな言葉で鳴き続けた。
だけど解らない…… ……解らないの。
家畜である事が嬉しくて喘ぎ求めているのに、家畜である事にこの身全てを晒している筈なのに。
…… ……一向にご主人様の鞭から愛情が感じられなかった。
(じゃっ、じゃあいっその事……!!)

アゲハチョウ!。

ご主人様のお許し無く仰向けに体位を変えて、恥丘に彫っていただいたアゲハチョウを晒してみようか。
この鞭乱打なら両太股の付根に伸びた紫羽のドギツイ色のアゲハチョウも凄い羽ばたいているように見える筈。
(これなら……ご満足頂けるのでは…… ……)
私は背中・尻の交互の合間に体位を入れ替えようとした。
その瞬間だった。

「誰が動いて良いと言った!」
「っうぁ!?」

背中に重い衝撃を受け、私は体位を変えることもままならずに地に突っ伏してしまった。

「あぁ〜ハイハイハイ、ありましたありましたよぉ〜コレ付ければ大丈夫!。
それと、コレも付属品で如何ですかネェ〜へへへ。」
(…… ……止んだ、の?)

これが台風の目というのは理解している。
だからこそ、私はこの小休止を全力で息を整える作業に入るのだ。
だけど暗転は落ちないらしい……肩で息をしている私の前に誰かがしゃがみこんだ。
ラバーマスクが一度脱がされて、初めて眼の前がご主人様だと知るや否や私は顔面をコンクリートに押し付けて言う。

「っぁ、あの、ごご主人様ぁ……お許しをぉ」
「あぁこれはムネさんのミスだから雌豚由紀に非は無い、だから許す」
「あぁ〜〜有難う御座いますご主人様ぁ、でもでも雌豚由紀はぁ……」

変態家畜にとってはどんな理由とかは関係無いのだ。
飼育して頂いてる、ご主人様の機嫌を損ねた事に関しては全面的に雌豚が悪いのだ。
だから私はご主人様のお言葉を優しいお言葉を頂いても顔を上げる事が出来なかった。

「いいから顔を上げろ、ボールギャグを付けてやるから」

ご主人様の言葉と同時に、ガシャンと地下調教室の重いドアが開かれて寺谷様が入ってきた。

「やぁやぁ皆さんやってますなぁ」
「あっれぇ……は、早かったで……す…ねぇ」
「早いと何か不都合でも、ムネさん?」
「あ、いや、その……ま、待ってましたよぉ〜はは、ははは」

やはり一度着替えに戻ったのだろう、寺谷様は普段着なのは理解できる。
だけど…… ……ムネ様同様に……大きな鞄を持参してきていた。
最早あれに何が入っているかは聞くまでもないだろう。

「しかし本当に早かったね、大丈夫なのかい付き合いの方は?」
「大野さんまで私を除け者かい?」

珍しくおどけた言葉だ、どうやら今日の寺谷様は非常にご機嫌のご様子である。
一人息子の結婚、やはり嬉しいものなのだろう……。
そして晴れて親戚同士となったご主人様も笑みを浮かべて口を開いた。

「まさか、駄目駄目なショーを仕切り直すには持って来いの助演男優さ」
「ほぉぉ〜〜いいねぇ、何があったのですかな?」
「それがねぇ〜ムネさんの…… ……」

事の顛末をご主人様が説明しだして……放置された私はチラリとムネ様を盗み見た。
案の定である、巨体な身体が見る見るうちに小さく畏まってゆくのだ。
……何だか少し可愛い。

「なるほどね、ソレでそのボールギャグと言う訳か」
「ムネさんには自ら試着してちゃんと喋れない前頭マスクを買ってもらうとするよ」
「ぇぇぇえ〜〜〜」
「ふむ、前頭マスクにボールギャグねぇ〜〜ふぅむ、んんん!?」

ご主人様の言葉に少し考え込む寺谷様が、途端に紳士的だった表情からサデェスッティックな笑みへと豹変したのだ。
それを察知したのだろう、ご主人様もニヤリとしていた。

「ならば、コイツを使ってみては如何かね?」

寺谷様が持参した鞄を漁り、1つの器具を翳して見せたのだ。

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