清めの時間2
ドロップアウター:作

■ 痛い、恥ずかしい……1

 相手が泣きやむのを待って、私は指示した。
「青山さん、立ちなさい」
「はい……んっ」
 香帆は、言われた通りすぐに立ち上がったが、一瞬よろけた。硬い床に正座させられて、足がしびれているようだ。両手を伸ばし、足のふくらはぎの辺りをさすった。
 無意味なことを……
 私は、あやうく吹き出しそうになった。足のしびれなど比較にならない苦痛を、少女はこれから味わうのである。 
 すると、ふいに香帆が苦笑いを浮かべ、「意味ないか……」とひとり言をつぶやいた。
 私は、何だか妙な気分になった。香帆が、これから苦痛を与える相手が、自分と同じことを感じている。そう思うと、これから自分がしようとすることに、ほんの少しためらいの気持ちが芽生えた。
 だが、それはすぐ掻き消えた。目の前には、全てを受け入れるつもりの無抵抗な少女がいる。加虐の欲望を抑えることは、もう今の私にはできなかった。
「青山さん……」
 従順な少女に、私は威圧する口調で命じた。
「衣服を脱いで、ショーツ一枚だけの格好になりなさい」
 香帆は、さすがに驚いた目で私を見た。
「……はい」
 真面目な彼女は、それでも素直な返事をしたが、なかなか衣服に手をかけようとはしなかった。まさか裸にされるとは思ってもいなかったのだろう。 
 香帆の目が、何度もちらっ、ちらっ……と、医師の立っている方に動いた。医師は男性で、二十代後半とまだ若かった。思春期の少女にとっては、十分に異性として意識してしまう年齢だ。
 しかも、四月の健康診断とは違う医師で、香帆とは初対面だった。だから、なおさら目の前で脱ぐのは恥ずかしいはずである。
「服を着たままだと、叩きづらいのよ」
 私がそう告げると、香帆はまた目を大きく見開いた。
「叩く、んですか……あの、服の上からじゃなくて……えっと、肌を直接……」
 裸を見られる羞恥心に加え、体を痛めつけられる恐怖が、少女をさらに追いつめた。香帆の可愛らしい顔が、みるみる青ざめていく。しっかりしていると言っても、まだ十二歳の少女である。いよいよという時には、どうしても不安を隠しきれないようだ。
「青山さん、何してるの?」
 相手に追い打ちをかけるように、私はわざと声を荒げた。
「さっさと脱ぎなさい。まだ後ろの子達が待ってるのよ。早くしないと、みんなに迷惑がかかるわ」
「はい……」
「それとも、さっきのは口だけ? やっぱり、自分だけは逃げたいって言うのかしら」
「……いいえ」
「でも、言われた通りにできないっていうのは、そういうことじゃない」
「違います。違うんです、ごめんなさい……」
 可哀想に、香帆はまた泣きそうな顔になって、床に突っ立っていた。
「あなただけじゃないわ。久美ちゃんも、他の子もみんなそうしたのよ。だからあなたも、みんなと同じように耐えなきゃいけないわ」
 私は、香帆を容赦なく責めた。友達思いの子だから、特に「みんなそうした」という言葉はこたえるようだった。
「じゃあ、早く脱ぎなさい。ほら、まず制服の上着から……」
「はいっ」
 香帆は、最後は媚びるような返事をして、それから上着のスカーフに手をかけた。
 スカーフの結び目をほどき、胸元から引き抜くと、今度は上着の留めボタンを一つ一つ外していった。そして、頭から抜き取るように、セーラー服を脱ぎ去った。
 白いスリップが露わになった。まだブラジャーは着けていないようだった。香帆は手を止めず、続けてスカートのホックも外し、足下に落とした。
 香帆がスカートを足から抜き取ると、私は「靴下も取るのよ」と命じた。
「あっ、はい……」
 香帆は律儀に返事して、靴下も脱ぎ素足になった。香帆の足は、太股や臀部にも余分な脂肪がついていない、すらっとした形の良い足だった。私は、つい女として嫉妬してしまった。
「スリップも取りなさい」
「はい……」
 下着も脱ぐように言われると、香帆はさすがに一瞬ためらった。だが、私達に背中を向けて胸を見られないようにすると、スリップの裾に手をかけて、ゆっくりではあるが素直に取り去った。
 脱いだスリップを床に置いて、両腕で乳房を隠すと、香帆はうつむき加減でこちらに向き直った。
 私は、少し柔らかい口調で指示した。
「……じゃあ、またさっきみたいに床に正座しなさい」
「はい」
 返事すると、香帆はため息をついた。若い滑らかな頬が、ほんのりと上気したように赤くなっている。やはり恥ずかしいのだろう……



 私は、また香帆に命じて、太股を少し持ち上げさせた。
 少女が固く閉じた太股の間から、清潔な白いショーツがのぞいている。下着一枚だけの裸にされた少女は、まだ両腕で乳房を隠して恥ずかしそうにしながらも、素直に私の指示に従った。
 香帆の太股とふくらはぎの間に、私は金属の棒を挟むように置いた。
「いいわよ、元のように座りなさい」
「はい……んぐっ」
 香帆が、小さくうめいた。
 棒は直径三センチとさほど太くはないが、一メートルほどの長さがあり、両手で持ってもずしりと重い。それを挟んだ状態で正座させられるのだから、時間が経つにつれて足の肉に食い込み、段々痛みが増していくはずだ。
 まるで罰のように見えるが、もちろん香帆には何の落ち度もない。これも「清めの時間」の儀式の一部なのだ。
 次に、私は椅子を立って香帆の背後に回り、少女の可愛らしい髪のおさげを首の後ろに移動させた。髪の束ねた先が頬や乳房に少しかかっていたので、叩くには邪魔だったのだ。
 相手の正面に戻って、私はさらに命じた。
「青山さん、両手を頭の後ろに組んで。それと、胸をこう……くいっと張りなさい」
「えっ、あ……はい」
 香帆は、今度はさすがに戸惑う表情になった。乳房を露出させられる上に、胸を強調する姿勢を取らなければならないからだ。
 それでも、香帆はまだ従順だった。ためらいがちではあるが、ゆっくりと両腕を持ち上げ、言われた通り頭の後ろに組んだ。そして、くいっと胸を張った。
 少女の上半身が、とうとう完全に露わになった。華奢な肩も、お腹のちょこんとした臍も。そして……膨らみかけの小さな乳房も、胸の先端の可愛らしいピンク色の乳首も。
「これで……いいですか?」
 かすかに震えた声を発して、香帆は私を見上げた。
「ええ。素敵よ、青山さん」
 少女の素直さに満足して、私はうなずいた。それから、相手のすぐ手前に屈んで、さっきから赤くなったままの頬をなでた。
「まずは、ここよ」
「えっ、あの……」
 香帆は、訝しげな目を私に向けた。
 私は無言のまま、右腕を振り上げた。
 バシッ、バチィ・・・
「あぐぅ……」
 香帆が、さっきよりも大きくうめいた。
 私は、少女の左右の頬を平手打ちにした。顔を打たれた衝撃で上半身が揺れ、そのせいでさらに棒が足に食い込んだのか、また「うぐっ……」と声が漏れる。
「ちゃんと顔を上げていなさい。叩きやすいように」
 相手の苦痛を承知の上で、私は非情に命じた。
「は…い……」
 相手が返事をしたことに、私は驚いた。これだけ理不尽な仕打ちを受けても、香帆はまだ従順な態度を変えていなかった。そして健気にも、すっと顎を上げて、私が「儀式」を進めやすいようにした。
 私は、さらに欲望を掻き立てられた。

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