清めの時間
ドロップアウター:作

■ 7

「じゃあ、時間もないし……そろそろ、いい?」
「あっ、うん。ちょっと待って」
わたしは、草の生えた土の上に正座して、美佐の正面に体を向けました。いよいよだって思うと、さすがに緊張してきました。
 美佐は、優しくに言いました。
「もし途中で嫌になったら言ってね。すぐやめるから」
「ありがとう。でも、大丈夫だと思う。美佐の触りたいところ、触りたいだけさわっていいよ。色々と助けてもらってるから、サービスしてあげる」
 自分の緊張をほぐすために、わたしはわざとおどけて言いました。
「やだぁ、玲ちゃんったら……見かけによらずすごく大胆」
 美佐は目を丸くして、それから笑いました。
 わたしは、軽く深呼吸をして、それから美佐の顔を見上げました。
「一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「うん、なに?」
「美佐って……レズなの?」
 そう言って、わたしはくくっと笑いました。
「まっ、まさか。やだ、玲ちゃんあたしのことそんなふうに思ってたの?」
 美佐が慌てたような顔をしたので、わたしはおかしくて、体を揺すって笑いました。
「うん。だってさっきから言ってることあやしいもん。胸触らせてとか、わたしの体が好きとか。普通同性に向かってそんなこと言わないよ」
「えっ、だってそれくらい……うちのクラスの女子みんなやってるよ。玲ちゃん真面目すぎるから、知らないんだろうけど」
「わたしだってそれくらい知ってる。でも、ああいうのは体育の着替えの時とかにみんなでいたずらでやってるけど、美佐は顔がマジだもん。しかもわたしと二人っきりの時に。わたしが何も知らないと思って、それこそ本当に誘惑しちゃおうって思ってるんじゃないの?」
「こらっ、いい加減にしなさい。さっきまで気分悪いってうずくまってたくせに、良くなったら人のことからかうなんて。そんなこと言ったら、ほんとに誘惑しちゃうよ?」
「きゃぁ、やめてっ。わたしまだ、純潔でいたい……」

 わたしは、はしゃいでいました。
 これは良くないはしゃぎ方だって、自分でも分かっていました。それは、本当は心の奥に不安を抱えているのに、それを忘れようと必死にはしゃいで、はしゃぎ疲れて余計に落ち込んでしまうような……。
 でも、こうするしかありませんでした。どうせこの後、わたしはこの体に辱めを受けることになるんです。その不安を紛らわせるためには、美佐との少し過激な遊びは、ぴったりだと思いました。
 もしかしたら、美佐もそのつもりで、わたしに胸を触らせて欲しいと言ったのかもしれません。

「じゃあ玲ちゃん、胸……見せてくれる?」
「うん。ちょっと、待って」
 わたしは、胸を押さえていた衣服を足下に置いて、少し胸を張りました。
「いいよ。さわって……」
 声が少し震えました。乳房の上に雨が落ちてきて、どきっとしました。

 美佐は、わたしの乳房に少し顔を近づけました。
「玲ちゃんて、見た目細いのに、意外と胸大きいんだね。乳首、ピンク色なんだ。ほんとに思春期の女の子の体って感じ」
「それ、ほめてるの?」
「ほめてるの。すごくかわいい。抱きしめたいよ」
 美佐は満足そうに笑って、それから、右手を伸ばして、わたしの左側の乳房にそっと触れました。
「んっ、くぅ……」
 わたしは思わず、軽くうめき声を上げてしまいました。今までに、一度も経験したことのない感覚でした。たとえばお風呂に入る時なんかに自分で触ってみるのとは、全然違う感じでした。
 わたしが少しうめいたせいか、美佐は、一瞬目を上げて、「大丈夫?」とでも言うようにわたしを見つめました。
 わたしは、微笑してみせました。
「平気。いいから……続けて」
 美佐はうなずいて、わたしの乳房を左、右、そしてまた左と交互に軽く押すように触れました。
「玲ちゃんのおっぱい、やわらかぁい。形もまぁるくてきれいだし、結構大きいし…………すごくかわいい」
「う、うん……ありがとう。こ、この頃急に……大きくなってきて、生理の時は張っちゃって、いっ、痛くなるんだけど」
 胸を触られていると、何だか少し息が荒くなって、しゃべり方がちょっとおかしくなってしまいました。
「そっかぁ、成長期だもんね。じゃあ玲ちゃんの胸、まだ大きくなるよ」
「えっうそ……もう、これ以上大きくなってほしくないよ。四月に買ったブラが、もう……きゅうくつになってきちゃってるし」
「玲ちゃん、今のブラのサイズは、A?」
「う、うん」
「だよね。この胸の大きさだと、Aは少し小さいかな。今度もうちょっと大きめのやつ買ってきなよ」
 そう言って、美佐は、今度はわたしの左の乳房の、乳首に指先で軽く触れてきました。わたしは思わず、「あっ」と小さく声を上げてしまいました。
「えっ痛かった?」
 美佐が少し心配そうな顔をしたので、わたしは首を横に振りました。
「ううん、ちょっとびっくりしただけ」
「敏感な箇所だもんね。ごめんね触る時何も言わなくて。かわいい乳首だなぁって思って、つい触っちゃった」
「やっぱり、レズなんだ」 
 わたしはおどけて言いました。 
「ばかっ、痛いことしちゃうよ」
「うそうそ。美佐がわたしのこと、あんまりかわいいかわいいって言うから、照れちゃって。ほんとは、ほめてくれてうれしかった。場所が場所だから、ちょっと変な感じもするんだけど」
「そっか、照れてたんだ。そういうの、なんか玲ちゃんっぽいね」
 美佐はそう言って、いたずらっぽく笑いました。

「じゃあさ……もうちょっと、触ってもいい?」
「うん、いいよ」 
 わたしは、きっぱりと答えました。
 美佐は、さっきと同じように右手を伸ばして、人差し指の先で、わたしの左の乳首をそっとなでるように触れました。 くすぐったいような、変な感触でした。
「やだ、ち……くびが…………立っちゃってる」
 顔が赤くなるのが、自分でも分かりました。
「恥ずかしがることないよ、普通の生理現象なんだし。それより……ねえ、ちょっとつまんでもいい?」
「う、うん……」
 また、息が少し荒くなってきていました。
 乳首をつままれると、痛むような強い刺激があって、わたしは「んあっ」とまた軽くうめいてしまいました。
「玲ちゃん痛くない?」
 美佐が、少し心配そうな目を向けました。
「平気。そのまま、続けて」
「ほんとに? 無理してない?」
「全然無理してないよ。大丈夫だから。だって、だってわたし……」

「……美佐の指に触ってもらうの、好きだから」

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