清めの時間
ドロップアウター:作

■ 26

「どうしてあなたは、そうやってわざわざつらい方を選ぶのかな」
 兵藤先生は、そう言ってため息をつきました。
「好きだから……です。恵美ちゃんとか、美佐とか、みんなことが」
 わたしは、顔を上げて言いました。
「みんなが苦しいなら、わたしも一緒に……苦しみたいんです」
 言ってから、ちょっと自分のことが恥ずかしくなりました。
 本当は、人のことを気にしている余裕なんてないくせに。この状況に、まだ全然慣れてなんかいないくせに……
 兵藤先生が、あきれたように言いました。
「上半身裸にされただけで顔を真っ赤にしている子が、よく言うわね。でも、それであなたの気が済むのなら……好きにしなさい」
「はい」
 わたしは、まだ乳房をしっかりと隠したままで、うなずきました。

「……じゃあ、時間もないから」
 兵藤先生が、ちょっと怖い顔で言いました。
「ここで、短パンを脱いで……パンティだけの格好になりなさい」
「えっ、あ……はい」
 少し動揺してしまいました。男性の鈴木先生も、その場にいるんです。だから、いざ脱ぐように言われると、やっぱり恥ずかしくて、ためらってしまって……
 やだ、男の先生に……また、パンツも見られちゃう……
「何してるの? 早く脱ぎなさい」
 兵藤先生が、急かすように言いました。
「さっき一度同じ格好になっているんだから、そんなに恥ずかしがることないじゃないの」
「はっはい……ごめんなさい」
 こんな恥ずかしいこと、許してください……心の中でそんなふうに言ったけれど、もうどうにもなりません。
 わたしは、思わず目をつむって、両腕を体の横に下ろしました。目を開けると、鈴木先生の視線とぶつかってしまいました。
 いやっ、おっぱい見られちゃった……
 ちょっとためらいがちに、短パンのゴムの部分を両手でつかんで、わたしはまた目をつむりました。それから、短パンを……パンツも一緒に下げてしまわないように軽く持ち上げるようにして、ゆっくりと膝の辺りまで下ろしていきました。
 B組の子達の前で短パン脱いでたら、また変なこと、言われたかな……
 目を開けて、膝の辺りまで下げた短パンを、もっと……足首の辺りまで下ろしました。それから、片足ずつ上げて、足から短パンを抜き取りました。白いパンツが露わになって、つい目を逸らしてしまいました。
 いやっ、恥ずかしい……おっぱいも、パンツも、見られちゃってる……
 下の方を見ると、パンツが膣のワレメに食い込んで、股間の形がはっきり浮き出てしまっていたので、慌てて直しました。
 脱いだ短パンを小さく畳んで、右手で握るようにして持ちました。それから、さっきみたいに胸の前で両腕を組んで、乳房を隠しました。この姿勢だと、パンツが丸見えになってしまうけれど……
 わたしがパンツ1枚になると、兵藤先生が静かに言いました。
「これから……『洗浄の儀式』と言ってね、泉の水で体を清めるのよ」
「はい」
「だから、行く前に……体をちょっときれいにしておこうね」
「えっ……はい」
 わたしが戸惑っていると、兵藤先生がわたしの後ろの方に目配せをして、「鈴木先生、お願いします」と言いました。
 後ろを振り返ると、いつの間にか鈴木先生が、ハンドタオルを持っていました。
 まさか、鈴木先生に体を拭かれるの? さっきみたいに、また男の人に体を……いっ、いやぁ……
「せ、先生……自分で拭きます」
 鈴木先生に、「お祓いの儀式」で体中を弄くり回されたことを思い出して、ちょっと動揺しました。
「ダメよ」
 兵藤先生が、冷たく言いました。
「これもしきたりなのよ。『女だけでは、けがれを落とすことはできない』って、前に教えてあげたでしょう?」
「はい……」
「分かったら……ほら、『お祓いの儀式』の時みたいに、そこでかかとを揃えて、お辞儀をしなさい。『お願いします』って」
「はい」
 兵藤先生に言われて、わたしは山道の真ん中で、かかとを揃えてしっかりと立ちました。それから、恥ずかしさをこらえて……背中を前の方に傾けて、両手を体の前で合わせました。そうすると、パンツだけじゃなく、乳房も全部見えてしまうことを承知の上で……
「お、お願いします」
 声が震えてしまいました。こんなに恥ずかしいことを、自分からお願いしなきゃいけないんだって思うと、辱めを受けているような気分になりました。

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