清めの時間
ドロップアウター:作

■ 27

 頭を上げると、鈴木先生が、わたしの体の正面に回って立っていました。背の高い先生は、わたしを見下ろすようにして言いました。
「両手を頭の後ろに組んで、胸を張って立ちなさい」
「あっ、ええっ……」
 いやっ、男の先生にこんなこと言われたくない……
 鈴木先生のことは嫌いじゃないけれど、先生は男の人だから、こういう状況だとやっぱり嫌だって思う気持ちが先に立ってしまって……すぐに指示に従うことができませんでした。
「北本さん、鈴木先生に言われたとおりにしなさい」
「あっ、はい……」
 兵藤先生に言われて、わたしはしぶしぶ、両手を頭の後ろに組んで、胸をくっと張るようにしました。鈴木先生の顔の方に、自分の乳房を強調するような姿勢になってしまって……すごく嫌でした。
 鈴木先生は、何も言わずに……タオルを持った右手を伸ばして、わたしの上半身をゴシゴシと拭き始めました。
 まずは、左右のわきから……胸ほどじゃないけれど、けっこう見られたくないところだから、男の先生に間近で見られて、ちょっと涙ぐんでしまいました。敏感な箇所だから、タオルで強くこすられるとくすぐったくて……
「ひゃあっ……くふっ……」
 声をもらしてしまいました。
 次に、おっぱいを左右とも……乳房全体を拭かれると、どうしても乳首を強く刺激してしまうことになるから、男の先生の目の前で、乳首が立ってしまって……恥ずかしかったです。でも、「お祓いの儀式」で直に指で弄られるよりまマシだって、自分に言い聞かせました。
「あっ……くふぅ……んあぁ……」
 また、変な声を出してしまいました。先生が、胸の谷間のところとか、乳首とか、敏感なところをけっこうしつこく拭いてくるから……
 雨がまた強く降ってきて、タオルで拭かれたところがすぐに濡れてしまいました。これじゃあいくら拭いても意味ないよねって思ったけれど、これも儀式みたいなものだから……くふっ……わたしは、ただされるがままに……
「んあっ……くふぅ……」
 その後、鈴木先生はわたしの背後に回って、肩と背中をゴシゴシと拭きました。そんなことをしても、雨がずっと降り続いているから、すぐに濡れてしまうのに……でも、この姿勢だと恥ずかしいところは見られずに済むから、少し気が楽になりました。
「あっ……」
 背中を拭いてもらって終わりかなと思ったら、ふいに鈴木先生が、わたしの左右の太ももの間に、タオルを持った右手をさし込んできたので、どきっとしました。内股に先生の指が触れて、ぞわりとしました。
「あっ、ああ……んひゃっ」
 いやっ、そんなところ……触らないで下さい……
 鈴木先生は、内股の、足の付け根のところを拭き始めました。先生の手が、時々股間にも当たったりして……気持ちが悪かったです。それから、太もも、ふくらはぎ……足首の辺りまでタオルで拭かれました。そうしてようやく、先生はわたしの体を拭くのをやめてくれました。
 男の先生に全身を触られたって思うと、すごく嫌でした。
 でも……涙は、あまり出てきません。わたしも、「清めの時間」に少しずつ慣れてきているのかなって思いました。
 できることなら、完全に慣れてしまいたいです。神経が麻痺して……痛みとか、恥ずかしさとか、そういうのが全部分からなくなってしまうくらいに。

 それから、わたしは先生達に連れられて、もうしばらく歩きました。
「いたっ」
 道の両側に、背の高い雑草が生えていました。そこを裸で歩いているから、肩や二の腕にいくつかかすり傷ができてしまいました。
「ここよ」
 兵藤先生に先導されて、雑草に囲まれた細い道を抜けると、十メートルくらい先に、学校のプールの半分くらいの大きさの泉がありました。その手前は河原のようになっていて、丸っこい石があちこちに転がっています。
「あっ」
 わたしはすぐに、今立っている所の二十メートルくらい先の、泉の左手の方に、クラスのみんなが集まって座っていることに気がつきました。
「さあ……」
 兵藤先生が、背後からわたしの肩を両手でつかみました。
「みんなのところに、行こうか」
「はい」
 そのまま、わたしは先生に肩を抱かれるようにして、みんなの所に連れて行かれました。石を踏んでしまわないように注意して歩きました。そして……

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