清めの時間
ドロップアウター:作

■ 43

「玲ちゃんて、すごく女の子っぽいよね」
 この頃、よくそんなことを言われます。仕草とか清楚な感じだし、髪とか手とかいつもきれいで、清潔感があるよねって。
 自分では全然そんなつもりないから、すごく戸惑いました。あまりにもよく言われるから、クラスの子の前で赤面して(後で恵美ちゃんが教えてくれました)、うつむいてしまったこともあります。
 わたしが都会から引っ越してきたから、そんなふうに見られるのかなって思いました。本当は、ただのいじめられっ子の、不登校少女なのに……
 でも、清潔感のある子だって言ってもらえたのは、正直うれしかったです。あの時から、わたしは自分が汚れた子だってずっと思い込んでいたから、反対のことを言ってもらってすごく救われた気持ちになりました。

 だから、そういうみんなの前で、あの時と同じ格好になるのはすごくつらかったです。清潔できれいだって言ってくれたみんなに、わたしの汚れた部分を見せなきゃいけなくなってしまうから……

 今朝、わたしはいつもより長くシャワーを浴びました。わきの下とか、股間とか、そういう体のあまりきれいじゃない部分を、たくさん石けんをつけて念入りに磨きました。
 どうせ全部見られるのなら、できるだけきれいな体でいたかったんです。わたしのことを清潔感のある子だって言ってくれたみんなに、裸になっても同じことを言ってもらえるように……
 でも、みんなの前で素っ裸にされるんだって思うと、やっぱり悲しくて、わたしは泣きました。せめてパンツだけでも許してもらえないかなって、変なことを考えてしまいました。
 シャワーを止めて、バスタオル一枚を羽織っただけの格好で浴室を出ると、キッチンで朝食の支度をしていた母に訝しがられました。
「どうしたの? いつもよりシャワー長かったわね」
 泣いていたことを気づかれたと思って、一瞬どきっとしたけれど、そうじゃなくてほっとしました。
「健康診断があるの」
 わたしは、母に嘘をつきました。
「お医者さんに診てもらうから、清潔な体で来るようにって……」
「そんな予定あった? 健康診断なら、とっくに終わったはずでしょう」
「だから、再検査なの」
 そう言うと、母は眉をひそめました。
「再検査って……そんな大事なこと、どうしてお母さんに言ってくれなかったの?」
「ごめんなさい。言いそびれちゃって」
「それで、どこが悪いの? 玲ちゃん、大丈夫?」
 わたしを心配そうに見つめる母の顔を見て、胸が痛みました。母は、わたしがいじめられて不登校になったことをまだ引きずっていて、今でもちょっと過剰なくらいわたしの身を案じているんです。
「ううん、別に大したことはないよ。ほら、わたし六年生の時入院してたでしょう? 養護の先生にそのことを話したら、念のため再検査でもう一度診てもらった方がいいって……」
 焦って、つい早口になってしまいました。これ以上、母に心配をかけたくないんです。
「だから、心配しないで。わたしは平気だから」
 そう言って、わたしは母の制止を振り切るように、自分の部屋にかけ込みました。
「お母さん……」
 部屋のドアにもたれて、わたしはつぶやきました。小さかった時みたいに、母に抱きついて思い切り泣けたら、どんなにいいだろうって思いました。
 でも、母に「清めの時間」のことを話すわけにはいきません。自分の娘が裸にされて、体中を弄くり回されるって知ったら、母はきっと耐えられないと思います。それに、わたしだってあんな恥ずかしいこと、親に言いたくありません……
 わたしは、体に羽織っていたバスタオルを取って、もう一度濡れているところを拭きました。そして、タンスの中から最近買ってもらったばかりの新しいブラジャーとパンツを取りだして、一枚ずつ身につけていきました。
 純白の下着を選びました。何となくその方が、「清めの時間」にふさわしいような気がしました。
 裸になっても、清潔感のある姿のままでいられるといいな……

 願いは、叶いませんでした。

 おかあ、さん……
 両手を縛られた不自由な格好で、わたしは声に出さないでつぶやきました。あの時、何もかも母にうち明けていたら、こんなに苦しまなくて済んだのになって……今さら思ったりしていました。
 後悔はしていません。でも、やっぱり……すごくつらいです。

「んふっ……」
 少し苦しくて、小さくうめくような吐息が漏れました。
 今、わたしは兵藤先生に両手をわきの下に通されて、左右の乳房を先生の掌にすっぽり包まれて、強くさすられています。
 これは、けがれを……んくっ、体に戻す儀式です。そのために、お……おしっこを、皮膚にこすりつけられているんです……
 逆らうことはできません。わたしが、儀式を早く終わらせることができなかったから悪いんです。最後まで、耐えるしかありません……
 やめてっ、わたしの体を汚さないで……何度も、そう叫んでしまいたくなりました。わたしのことを、清潔感のある子だって言ってくれたみんなの前で、いじめられた時と同じ姿にされるなんて、死んじゃいたいって思うほどつらかったです。
 先生は、わたしの左の乳房を尿で濡らした後、右の乳房、左右のわき、おへその辺りにも同じようにしました。そして、わたしに指示しました。
「後ろを向いて。足を肩幅よりも広く開いて、背中を前に傾けなさい」
「はい……」
 恥ずかしい指示だったけれど、言われたとおりにしました。おしりの穴とあそこをみんなに見られて、すごく嫌でした。
 すると、先生は股間のワレメと肛門にも、おしっこをかけました。
「んひゃっ」
 思わず、変な声を出してしまいました。
 その後、先生はもう一度わたしに前を向かせて、後ろに回り込んで言いました。
「あとは、けがれを皮膚に染み込ませるだけだからね……」
 そう言って、両手でわたしの左右の乳房を、さすり始めました。
「あっ……んふっ、あぁ……」
 少し声が漏れました。くすぐったいような、気持ちいいような、変な感じがして……んふっ、あそこが……股間のワレメが濡れてきました。
「乳首が立ってきているわね」
 背後で、先生が言いました。
「えっ、あ……」
「北本さんは、胸が敏感みたいね。ちょっと刺激しただけでも、乳首がすぐに隆起してしまうわ」
「くふぅ……そ、そんな……」
 顔がかぁっと熱くなりました。「お祓いの儀式」が始まる前に、美佐に胸を触ってもらった時のことを思い出しました。
「は、恥ずかしいです……」
 兵藤先生は、ちょっとあきれたみたいに笑いました。
「北本さんって、ほんとに真面目ね。生理現象なんだから、そんなに恥ずかしがることないわよ」
「あっ、はい……くふぅ……」
 また吐息が漏れました。刺激に反応してしまう自分が、恥ずかしいです。
 何だか……んふっ、変な感じなんです。先生におっぱいをさすられて、嫌なことをされているはずなのに……すごくきもちいんです。だから……わたしは、本当はこういうことして欲しかったのかなって……裸になって、変なことされたかったのかなって……そんなことを考えてしまいました。
 わたし……やっぱり、マゾなのかなぁ……
「んあっ、あぁ……」
 思わず、わたしは声を上げました。
 先生が、ふいに両手で、わたしの乳房を揉み始めました。
「くふぅ……あぐっ、んあぁ……」
 快感と苦痛が入り混じったような強い刺激に、わたしは悶えました。
「ごめんね、大丈夫?」
 おしっこの匂いのするおっぱいを揉みながら、先生は優しく言いました。
「こうしないと、けがれを体に戻せないから……ちょっと痛むかもしれないけど、我慢してね」
「はい……んふっ、大丈夫です……」
 息が乱れて、ちゃんと返事をすることもできませんでした。頭がぼうっとして、気が遠くなっていくような感じがしました。
 ハァ……ハァ……ハァ……んくっ……

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