黒い館
けいもく:作

■ 3.裸体と料理1

 わたしは、調理場に案内されたようでした。

 そこでは、4人の女性があわただしく働いていました。若くて、健康美にあふれた女性ばかりだと思いました。働く中にも、華やかなムードが漂っていました。

 どうやら、夕食の支度のようでした。肉の焦げる香ばしい臭いが、部屋に立ち込めていました。

 裕美さんは、一人ずつ順番に紹介してくれました。

 愛子さんは、肌が白く、小太りで、笑顔に人のよさそうな感じがしました。

 香子さんは。小柄で瞳の美しい人でした。

 亜紀ちゃんと真菜ちゃんは、まだ十代に見えました。亜紀ちゃんははにかみ屋で、真菜ちゃんは快活な女の子という感じがしました。

 みんな、裕美さんと同じように、ブラウスと黒のミニスカートだけの服装でした。

 亜紀ちゃんは、ブラウスから透けて見える豆粒のような乳首を少し恥ずかしそうにしていました。わたしには、その仕草がとてもかわいらしく思えました。

「愛子さんと亜紀ちゃんは、急いで体を洗ってきて」

 裕美さんは、指示をしながら、小声で亜紀ちゃんに話しかけました。亜紀ちゃんは、聞いたとたん、パッと顔を赤らめたような気がしました。

 それからわたしは、裕美さんと食堂にいきました。

 お館様は、すでに待っているようでした。一人でいすに座り、本を読んでいました。しばらく雑談をしていると、やがて二台のワゴンに食事が運ばれてきました。

 ワゴンはそのまま食卓になっていました。裸で仰向けに寝ている、愛子さんと亜紀ちゃんは、お皿でした。その上に料理が、ていねいに盛り付けられていました。

「ディナーではね、週に一度くらいだけど、飲み物を飲む以外の食器は使わないことになっているの。すべて手づかみで食べるのよ」

 とまどっているわたしに、裕美さんが説明してくれました。

「ふだんは、お館様だけこうして食べるのだけど明日香さんはお客様だから、お館様と同じようにしたの」

 わたしの前のワゴンの上で、亜紀ちゃんのみずみずしい裸体が呼吸のたびに起伏していました。

 そこにステーキとサラダ、それにご飯が見栄えよく並べられて、緩やかな動きを繰り返していました。わたしには、それがある種の芸術作品に見えました。エロティックな芸術というべきかも知れないと思いました。

 後で知ったことですが、この館には、二人の芸術家がいたのです。

 お館様は、愛子さんの身体に盛られた料理を手づかみのまま食べていました。なれたしぐさで、「この肉少し固いかな?」などと言って、汚れた手は裕美さんにふき取らせていました。

 わたしは、お皿である亜紀ちゃんと視線を合わせました。亜紀ちゃんは、あどけなさが残ったような表情でわたしに微笑みかけました。

「早く召し上がってください」と眼で言っているようでした。わたしには、亜紀ちゃんがこれほどの屈辱に微笑んでいられるのが不思議でした。

 しかし、わたしはとりあえず空腹を満たすことにしました。

 まず食べやすいように切られた、ステーキをつかみ、それからごはんも食べました。

 食べ物で隠されていた亜紀ちゃんの恥毛が少しずつ浮かび上がってきました

 お館様は、愛子さんの胸についたステーキソースにまで舌を這わせていました。ゆっくり、舌先を転がすように、愛子さんの柔らかな乳房に感触を楽しんでいるようでした。指先が肉好きのいい腹部や太ももの内側をなぜ、股間に触れ、そこに差し入れ、静かに上下させ、ついた蜜をなめたりしていました。

 そのたびに愛子さんの口から「アウゥゥー」という短いあえぎ声が漏れ、ワゴンの上で全身を波打たせているのがわかりました。

「ウゥ、やめてください」
 我慢ができなくなったのか、愛さんはそれだけ言うと、口に自らの手を咥え、なおも耐えようとはかりました。

 しかし、もちろんそれくらいのことで攻撃を止めるお館様ではありませんでした。目を輝かせ、かすかに笑うと、愛子さんの全身にくわえられる手の動きは、いっそう速く、激しく、繊細なものになっていきました。左手で愛子さんの左右の胸を、右手は愛子さんの膣部を執拗なまでになぜまわしていました。

 それが、演奏者と演奏される楽器の争いであるとするなら、ワゴンの上に裸体を横たわらせ、そこから降りる事も許されず、「ダメ」と「やめてください」を繰り返すだけの愛さんに勝ち目はありませんでした。全身を思いのままに弄ばれ、官能の境地に放つ泣き声も、演奏された女体が奏でる美しいメロディーでしかありませんでした。

「いかせてみようか?」
 お館様は、ぼそっとつぶやきました。

 そのひとことで愛子さんは、さらにエクスタシーに達するまでの数十分間、気まぐれな技巧に身をゆだね、全身にキスを受け、ワゴンの上でピンク色に染めた裸体をのたうたせなければなりませんでした。

 もちろん、わたしは、亜紀ちゃんの身体に手を触れるようなことはしませんでした。でも、じっと、裸体をさらして、お皿としての役目に徹している亜紀ちゃんをみていると、ふと、かわいそうだと思いました。

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