黒い館
けいもく:作

■ 11.プレゼントは亜紀ちゃんの処女2

 そんな亜紀ちゃんだから、かねがね、自分だけ夜伽の当番がまわってこないのが不満でした。その理由が、亜紀ちゃんが処女であるからということも知っていました。そしていったん、お館様のベッドに寝れば、必ず亜紀ちゃんの処女は失われるということも知っていました。

 だから、「わたしにも、お館様の夜伽をさせてください」と裕美さんに言ったのでした。

 亜紀ちゃんにそう言われても、と裕美さんは困りました。

「お館様とも相談しておくからね、しばらく待っていなさい」

 とりあえず、そんなふうに答えておいたのですが、香子さんと少し話し合っただけで、お館様には、何も言いませんでした。

 裕美さんは、お館様が亜紀ちゃんとセックスをしたくない、本当の理由を知っていたからでした。

 実は、この館に住み着くことになった五人の女性のうち、わたしを含めれば六人ですが、処女のままここに来たのは、亜紀ちゃんだけだったのです。

 裕美さんに自由に身体を抱かせてもらえるようになるまでのお館様は、貰った給料からお金を工面し、何ヶ月に一度か、ソープランドにいき、女性の身体で欲望を処理できるくらいだったそうです。

 だから、お館様は、亜紀ちゃんがくるまでは、大人の処女の女性にふれたこともありませんでした。

 亜紀ちゃんがきてくれて、初めて、そのみずみずしい肉体を、裸にさせて、乳房や処女の部分を舐めまわすことができるようになったのでした。もちろん、それは嬉しかったのです。

 足を開かせ、亜紀ちゃんの大切なところを電気スタンドで照らし、裕美さんに持ってきてもらったルーペでのぞいてみても、「そんなのも、見えるわけがないでしょ」言われるまでもなく、処女膜は見つけられませんでした。

 もちろん、お館様にしても、最初から興味本位という以外、何ものでもありませんでした。

 でも、たとえば、毛のはえ具合や、刻まれたしわ、指で広げたときに見える中のピンク色の部分をルーペで拡大して観察しているうちに、つい夢中になってしまったというのが本心のようでした。

「かわいそうに亜紀ちゃん、泣いているじゃない」と裕美さんに言われ、お館様は視線を上に向けました。

 亜紀ちゃんは、泣いているのかはわかりませんでしたが、うつむいて、両手で自分の顔を隠し、じっと、恥ずかしさに耐えているような気がしました。

 それでも、開いた足は閉じずに、お館様に好きなだけ、自分の秘部を見せてあげようという、痛ましいまでのけなげさが感じられるように思いました。

 それは少女のような亜紀ちゃんの意外と頑固な一面だったのかもしれません。

 そんな、スケベーなお館様でも、最後の一腺、絶えず、「おれのようなものが亜紀の処女を奪っていいのか?」という気持ちだけは持ち続けてきました。

 そんなこともあって、裕美さんは、あいまいに数週間、返事を延ばしていたのですが、亜紀ちゃんは強行でした。

「街に行って、最初にナンパして来た男に処女をあげてくる」とまで言い出したのです。

 裕美さんにしても、亜紀ちゃんにそんなことをさせられるわけがありません。第一に危険でした。

 そして、裕美さんは、咄嗟にでたらめを言っていました。

「あのね、亜紀ちゃん、お館様はあなたを自分のベッドで抱きたいのよ、本当は今すぐにでも。でもね、あなたの処女は大切なものだから、これっていうときにあなたを抱きたいのだって。勝手なものよ、男なんて、高価なウィスキーの栓を開けるときと、同じみたいに考えているのだから。

それで三ヶ月待って、あと三ヶ月経ったらお館様の誕生日なの。亜紀ちゃんの処女は女性全員からのプレゼントということにさせてほしいの」

 裕美さんからそう言われ、亜紀ちゃんは納得したように大きく頷きました。

 お館様にしても、裕美さんに、「他の男の人に奪われてしまったっていいの?」説得されれば、断れるはずがありませんでした。

「そんなもったいないことできるか」といったのも本心でした。

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