黒い館
けいもく:作
■ 12.真菜ちゃんの失態1
夕食後、女性だけで裕美さんの部屋に集まり、日常生活の規則などの説明のような話し合いがありました。
といっても、堅苦しいものではなく、テーブルにはビールやお菓子も置かれていました。
「愛子さんは、当番だからあまり飲まないようにね」
裕美さんが言いました。
「大丈夫、今日は二本だけにするから」
ふだんは、どれだけ飲んでいるのかなと思いました。
当番というのは、もちろん、お館様とセックスをする日のことでした。お館様が一方的に性的な行為を楽しむだけだとすれば、女性が自らの身体をお館様に提供する日と言い換えてもいいのかもしれません。
「明日香さんにも当番の日を引き受けてほしいのだけど」
裕美さんは言い出しました。
当たり前のことだと思いました。
わたしは、亜紀ちゃんのように処女でもティーンでもありませんでした。わたしは、お館様に身体を差し出すためにここにきたのでした。
「当番というのはね、女性が交代で、お館様のベッドで寝ることなのよ。
もちろん、ただ寝ていればいいというのではないのだけれど、最低限セックスはされると思っといてね」
「そのほか、変態みたいなこといっぱい」愛子さんが笑いながら言いました。
「当番というのは、お館様から見れば、一年、365日ね。好きなようにしていい女性が、必ず自分のベッドにいるということだけど。
もちろん、当番の女性には何をしてもいいのよ。愛子さんの言うように変態みたいなことされるかもそれないし。乱暴なこともね。
でも、そのかわり、他の女性には手を出してはいけないということでもあるの。だから当番になった人は、見張っていて欲しいの」
「うちなら、一時間くらいで眠ってしまうけど」
真菜ちゃんが言いました。
「未成年者は子供時間」
愛子さんが茶化しました。
「残念でした。二十歳になったんです」
真菜ちゃんが、口をとがらせました。
「ほら、レイプ事件、あのときの当番誰だった?」
真菜ちゃんにとっては、痛いところを衝かれました。
「あの時は、怖くて、なにがなんだかわからなかったわ」
どうやら、レイプの被害者は、香子さんのようでした。
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