黒い館
けいもく:作
■ 15.お館様の脱走劇4
お館様は左側の乳首に舌を伸ばしてチロチロと舐めました。
「いいか?」
「いやで、い、いです」
さっき、乳房を咬まれた痛さがまだ脳の一部に残っている香子さんには、素直に「はい」と言えませんでした。だから中途半端な返事になってしまいました。
「いいんだね」
お館様はもう一度念を押すように言いました。
「咬んでください」
今度は、香子さんもはっきりと返事をして、自分の乳房をより強くお館様の口に押し付けて、静かに眼を閉じました。
左側の乳房も決して力を抜いた咬まれかたではありませんでした。お館様は左もできる限り右と同じ強さで咬みたいと思っていました。
だから、香子さんはもだえ、のたうち、涙とよだれを流しました。
一分だったか二分だったか、やっと苦痛から解放された時、お館様はすばやく乳房に残された充血痕を見ていました。どうやら、お館様は咬んいでる間、香子さんの苦しみより充血痕に気を奪われていたようでした。
そして左右の乳房の充血痕がほぼ同じ大きさであるのを確かめるとうれしそうに笑いました。
香子さんは、その他愛ないことに喜ぶ笑顔を見ると、まだ乳房は痛くて、涙も止まっていなかったのですが、つい、つられて笑いたくなりました。
そして、ふと咬んでもらえてよかったと思い、喜んでもらえた自分の身体がいとおしくなり、耐え抜いたことを誇りたくなりました。
お館様は香子さんの心の機微をどう見抜いたのか、流れた香子さんのよだれを吸い込み、唇に軽く口づけをしてから、「今日は、もう酷いことはしないよ」と言い、裸の香子さんに優しく布団をかぶせてくれました。
「その代わり、明日、朝飯の後、鞭打ちだからな」と言われたとき、香子さんは自らお館様の唇を吸い、舌を絡め、ディープキスをしました。
そして、「はい、いっぱい鞭で打ってください」と言い、お館様にしがみついていきました。
「裕美も一緒にな」
「裕美さんに悪いわ」
香子さんは、明日の朝、わけもわからないままに鞭打ちを告げられる裕美さんが気の毒になりました。
「いや、いいんだ。裕美はかまわないんだ」
きっと、そうかもしれません。裕美さんとお館様は実際の夫婦以上の深い絆で結ばれているような気がしました。
だから、香子さんは思ったのです。そしてこれだけは、言っておきたいと思ったのです
「以前、裕美さんが『わたし達がここで暮らし始めた頃、お館様が自分の子供をほしがったのだけど、わたしには、その願いをかなえてあげることができなかった』って言ってた。悲しそうだった。そして『もし、今でも子供欲しいと思っているようなら、香子さん、あなたが産んであげてね』って。
だから、わたしなら、孕ませていいのよ。あなたが本当に子供欲しいと思うならわたしに産ませればいい」
香子さんの言っていることは、お館様の望んだ幸せと少し食い違っているような気がしました。
お館様の望んだものは、普通の家庭生活であり、たとえていうなら、明るい奥さんと元気な子供たち、屋根のある家屋と暖かい布団でした。
だけど、裕美さんと香子さんがそこまで自分のことを考えてくれているというのは、正直なところうれしいと思いました。
そこで、『明日、鞭を打ちながらか、打った後で、久しぶりに裕美の身体中を舐めまわして堪能としよう』と考えました。
そして、『やはり、最後は裕美に吸わせ、精液を飲ませたいので、今日はこのまま寝よう』と思いました。
そして、裕美さんの股間を滴らせる愛液の味を思い浮かべていると、香子さんの裸体が抱きついてきて、少し傷を付けてしまったが、柔らかいおっぱいを頬に触れさせてくれました。
「もう、痛くない?」
「ええ、だから好きなようにしてください」
お館様は、香子さんの肌のぬくもりと笑顔がもたらせてくれる、いいようのない幸福感に包まれ、館を脱走しようとしたことなど忘れてしまって、心を安らかにして眠ることができました。
そして一回だけの中出しでは香子さんも妊娠することはありませんでした。
■つづき
■目次
■メニュー
■作者別