黒い館
けいもく:作

■ 16.楽しい混浴1

 夜伽の女性というのは、ある意味、お館様に差し出された人身御供でした。

女性たちもそのあたりのところは心得ていました。時に人形のようにされるがままになり、時にお館様が自分の身体で欲望を満たしやすくするために積極的に動くこともありました。

もちろん、その欲望がサディスティックな女性を泣かせて楽しもうとするたぐいものであったとしてもでした。

たとえば愛子さんが当番のとき、お館様が真菜ちゃんと風呂に入っていたとします。

お館様も愛子さんが部屋で待ってくれているのを知っていたので、真菜ちゃんとは、ただ一緒に湯船につかり、身体を洗ってもらおうと思っていただけでした。だから、湯船の中でも背中から真菜ちゃんの身体をゆるく抱き、うなじに三度口づけしただけでした。

部屋にひとりで待たせている愛子さんのことを考えて、乳房を揉むのもためらっていました。

それで湯船から出たとき、真菜ちゃんの隣に座ったのです。普通に背中でも流してもらえればいいかなくらいに思ったのかもそれません。

ところが真菜ちゃんに、「洗ったげるから仰向けに寝てください」と言われて、「ああ、ありがとう」と、気のない返事をしたお館様は、マットの上にごろりと寝てしまったのです。

真菜ちゃんは、自分の乳房や腹部に石鹸を塗り泡だらけにしてから、反対向きにお館様の上にかぶさっていきました。

真菜ちゃんは、元気のないお館様のものを立たせようと、胸の谷間で挟み、両手で乳房を押さえました。真菜ちゃんも、それなりに懸命に尽くしてくれてはいるのですが、お館様のものは、すぐには勢いを取り戻しませんでした。

やはり、裕美さんや香子さんとはちがうと思いました。

お館様が、裕美さんや香子さんにさせるシックスナインには、ただ目を閉じて、全身の力を抜いているだけで快感が高まりうっとりするような桃源郷をさまよわせてくれる、そんな鍛え抜かれたテクニックがありました。

それもそのはずで、もし、今お館様に乗っているのが、真菜ちゃんでなく、裕美さんや香子さんだったとしたら、即座に下からスッルと伸びてきた指が力いっぱい乳首をつねって、悲鳴をあげさせられていたはずでした。あるいは、そのうえに明日の鞭打ちを宣告されていたかもしれません。

裕美さんや香子さんには、絶えずそうした厳しい条件下でお館様に尽くすことが要求されていました。

極端なところ、片時も手を抜くことが許されなかったのです。

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