黒い館
けいもく:作

■ 19.真菜親分2

ひどい、虐めにあって行けなくなったのでした。亜紀ちゃんにも、なぜそんなに虐められることになってしまったのかわかりませんでした。

クラスのどちらかというと悪いグループに、いつもからかわれている子がいました。かりにA子ちゃんとしておきます。

亜紀ちゃんは別にA子ちゃんをかばおうとしたわけではありませんでした。あくまでも、普通に接したつもりでした。ただ、A子ちゃんにはクラスで亜紀ちゃん以外に親しくしてくれる友達がいなくなっていました。だから、仲良く見えたのかもしれません。

実際に、悪いグループの子から「A子と親しくしないほうがいいわよ」と言われたことがありました。だけど亜紀ちゃんにはA子ちゃんを突き放すことができませんでした。

その時、すでに悪いグループの子の間では、次の虐めのターゲットを亜紀ちゃんにしようと話し合われていました。

クラスの誰もが亜紀ちゃんと話してくれなくなりました。驚いたことにA子ちゃんもでした。A子ちゃんは、亜紀ちゃんという身替りを得て、虐めから解放されたのでした。解放の条件として、亜紀ちゃんを積極的に虐めることになっていたのかもしれません。それでも最初の頃は、誰も見ていないところで謝ってくれていました。ただし、長続きはしませんでした。

A子ちゃんは虐められるより、虐めるほうが楽しいと思ったのかもしれません。

当然、虐めはエスカレートしていきました。下着だけにされて、男子用トイレに一時間、閉じ込められた時に、もう学校には来られないと思いました。

その話を亜紀ちゃんから聞いた時、真菜ちゃんは歯がみして悔しがりました。

「うちがおったら、絶対そげなことさせんかった」と言いました。

もちろん、真菜ちゃんと亜紀ちゃんでは年齢も住んでいた地域も違いました。真菜ちゃんと亜紀ちゃんが同じクラスになるなんてことはありえませんでした。

でも、真菜ちゃんには許せませんでした。真菜ちゃんも不良少女のなれのはてだから、けんかはしました。時にはリンチのようなこともしたかもしれません。

でも、ひとりの無抵抗の人間を全員でいつまでも執拗に虐めぬく、それだけは許せないことでした。真菜ちゃんにはそう思うだけの義侠心がありました。そして闘う勇気も力も持ち合わせていました。

亜紀ちゃんは思いました。もしも、真菜ちゃんと亜紀ちゃんが同じクラスだったとしたら、確かにあれほどの虐めにはあわなかったかもしれない。でも、真菜ちゃんと亜紀ちゃんは、所詮が、スケ番と目立たないおとなしい女の子でした。親友になれるはずもありませんでした。

だから、今のほうがいいと思いました。少なくとも、真菜ちゃんと仲良くなれました。真菜ちゃんと亜紀ちゃんには、ふたりだけしかいなくても、親分子分の関係ができあがっていました。

それでも、亜紀ちゃんは真菜ちゃんの言うことを、すべて信用しているわけではありませんでした。

真菜ちゃんには、持ち前の明るさや奔放さから、ものごとを短絡的に考えてしまうところがありました。それは、たとえばお館様が真菜ちゃんを後背位で抱いたから、香子さんも当然後背位で抱いているだろう、と思っているようなところでした。

もちろん、お館様も後背位が嫌いではありませんでした。香子さんを後背位で抱くこともありました。でも、真菜ちゃんを抱く後背位と香子さんを抱く後背位では、膣に挿入する男根は同じだとしても、そこにたどり着くまでの過程が違いました。

お館様が真菜ちゃんを抱くときは、乳房をなぜ、背中を舐め、せいぜい腰をつかんで前後に動かすくらいのものでした。愛し合う恋人同士がするセックスでした。

だけど、香子さんには、そんなに優しく扱う必要はありません。乳房を搾り、手綱に代わりに髪をつかんで、ひとしきり背中を叩いてから、つながれば十分でした。右手の三本の指で乳首をつまみ緩やかにねじり、香子さんを呻かせてもかまいませんでした。

香子さんもまた、それでいいと思っていました。恨みがましいことを言うつもりはありませんでした。

館とはそういうところでした。女性は、お館様のサディスティックな欲求を満たさなければなりませんでした。そのために香子さんもいるのでした。

ただ、真菜ちゃんや亜紀ちゃんの場合は若いし、これから先、普通の成人女性として暮らす機会はいくらでもあるはずでした。あまりに歪んだ愛しかたをして将来の可能性を摘み取るようなはしたくありませんでした。それは、裕美さんや香子さんも同じ思いでした。

それでも、真菜ちゃんの場合は館に来たときにすでにレイプされていたので、お館様は若い身体で普通のセックスを楽しみました。

だけど、お館様の真菜ちゃんの身体では満たされない欲望は、当然のように裕美さんや香子さんに求めました。それも仕方のないことでした。でも裕美さんには当番がありませんでした。あったとしても、それは真菜ちゃんが生理の日だけの代理だけでした。

結局、ここでもお館様の一番悪い欲望は、香子さんの華奢な身体に背負わさなければならないことになっていたのでした。そして、それがお館様の楽しみでもありました。

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