狂牙
MIN:作

■ 第1章 籠絡23

 授業が終わり昼休みに入ると、私は急いでトイレの個室に駆け込み、スカートを捲り上げる。
 白地に苺模様の赤が散る中、ポツンとピンクの部分が一つ顔を覗かせている。
 私のクリ○リスです。
 だけど、そのクリ○リスに異変が起きていました。
 先端部分に、1o程の裂け目が出来て、真っ赤な傷口が口を開いています。

 私はあの薬の痒さが集中した所が、この傷口だと直ぐに解り、この傷口があの痛みの元なのも、直ぐに理解しました。
「あのお薬…、時間を守らないと、クリ○リスが裂けちゃうんだ…」
 私はボソリと呟き、それがどれ程恐ろしい事か、ゾッと寒気が走りました。
 ですが、この時は私は全く、理解していませんでした。
 この傷が出来るという事は、私がお姉様の[言いつけを守らなかった証]に成るという事に。

 その日は昼から、大した授業も行われず、殆ど進学の面談や、補習授業に当てられていたので、私は早々に家に帰りました。
 私はこの時点で模試の結果、第1志望の学校のA判定を貰っていたので、こう言った進路指導や、補習授業は免除に成っています。
 私が家に帰ると、お姉様が出迎えて下さり
「お薬はちゃんと塗れた?」
 ニッコリと微笑みながら、鋭い声で私に問い掛けました。
 私が少し時間が遅れて、凄い痛みを受けた事を話すと、お姉様の微笑みがスッと消え、無表情に成って
「そう、言いつけを守らなかったのね…。後で部屋に行くわ…待ってなさい」
 凍り付くような声で私に命じられました。

 私はお姉様の指示で、部屋の真ん中に正座して、お姉様を待ちました。
 姿見に移る私の顔は蒼白で、身体はガタガタと震えていました。
 だって、私に指示を出した時のお姉様の顔と雰囲気は、今迄見た事が無いぐらい怖くて、私はその時初めて事の重大さを理解したからです。
 30分程経つとお姉様が、赤い大きなアタッシュケースを持って、私の部屋に入って来ました。

 入って来る成り、お姉様は後ろ手で、部屋の鍵を掛け、その手が前に来た時は黒くて長い鞭が床に垂れ下がり、次の瞬間呆けていた私の顔を打ち付けました。
 私の顔の左の頬から右のオデコ迄激痛が走ります。
「ぎひぃ〜〜〜っ」
 私は大きな悲鳴を上げ、身体が反射的に逃げようとします。
「誰が動いて良いって言ったの!」
 お姉様の鋭い声が、私の動きを止めます。

 私は直ぐに姿勢を元に戻して、お姉様に顔を向けました。
 すると直ぐに、目の前を黒い影がスッとよぎり、私の右の頬から左の額迄激痛が走ります。
 お姉様の放った鞭が、私の顔に大きなバツ印を刻みました。
 顔の全部がジンジンと痛み、その真ん中に火が点いて居るような感じがします。
 私の両目からは、ボロボロと涙が溢れ、身体の震えは止まろうとしません。

 お姉様は私に鞭の先端を向け
「お前は何様なの! 私の命令を守らず、私の持ち物を無断で傷付けるなんて、一体どう言うつもり!」
 お姉様のお怒りは、もの凄かったです。
(お姉様の命令に従わなかったのは解るけど…。お姉様の持ち物って…、私、何を傷付けたの…?)
 私が考えて居ると、お姉様は私に近付き、右手で私の顎の下から、頬を握り締め、ブンブン私の頭を振り回し
「この身体は、足の先から髪の毛の一本に至る迄、私の物! それを勝手にお前が傷付けるなんて、どう言うつもりなの!」
 お姉様の言葉を聞いて、私は愕然としました。
(お姉様の…物…? 私の身体…えっ? …、どう言う事…)
 私はお姉様の仰る意味が、全く解らずオドオドとするばかりです。

 お姉様はそんな私を見て、苛ついた表情に成ると、赤いアタッシュケースから、もう1本同じ黒い鞭を取り出し左右両手に持つと
「良いわ…、出来の悪い馬鹿奴隷に、徹底的に教えて上げる…」
 冷たい声で呟き、左右の手を素早く振り抜きました。
 ビュッと空気を切り裂く音がしたかと思うと、バッビシィと激しく肉を打ち据える鞭の音が響きます。
 音がしたと同時に私の背中に、電流が流れたような衝撃と、火に灼かれたような痛みが走ります。
 私が痛みを感じた時、私の部屋に[ギャァ〜〜〜ッ]っと言う魂切るような悲鳴が上がりました。
 悲鳴は私の物なのですが、余りの痛みに自分が声を出している事に、気が付きませんでした。

 私の身体が背中の痛みで前に傾げると、今度は身体の前面にその衝撃と痛みが走ります。
 身体を捻って右に倒れると右から、左に避けると左から、その衝撃は襲いかかってきます。
 私はいつの間にか、正座の姿勢から立ち上がり、足を肩幅に開いて立って居ました。
 お姉様が鞭を調整して、私にその姿勢を取らせたのです。
 着ていた制服は、鞭が当たると爆ぜて飛び、今はボロ布に成って、足下に散らばっています。
 お姉様の鞭は、空気を切り裂き、私の回りで嵐を起こしました。
 その嵐の中、私は為す術も無い木の葉のように舞いながら、鞭の雨に身体を切り刻まれます。
 私は鞭の暴風雨の中、全身を血塗れにして、フラフラと揺れるだけの存在でした。

 私の喉からは、笛のような悲鳴が上がり続け、意識は連続する痛みのため途切れる事も出来ず、只々痛みに晒され続けます。
 全身が血で真っ赤に染まると、お姉様は口を開かれ、私にお聞かせ下さいました。
「奴隷の身体は、忠誠を誓った時点で、主人の持ち物よ! お前の物じゃない! 感情も意志も感覚も、全て主人の物! 人権なんか無いの! お前に権利なんか一切無いのよ! お前は、私の命じた事を命じられたようにするだけの存在よ! 解ったの!」
 お姉様が仰った言葉で私は深く反省し、心の底から謝罪しました。
「おねえざま…、おゆるじぐだざい…、あきごは、まぢがいをおがじまじだ…、どうが、おゆるぢぐだざい〜…」
 頬を打たれ、唇も口の中も切ったのか血を吐き出しながら、上手く動かない口で必死にお詫びしました。
 ですが、お姉様の手は休んで下されず、鞭打ちの暴風雨は永遠に続くかと思いました。

 そんな中、フッと目の前が真っ暗に成ったのは、お姉様が鞭を止めてくれたからだと思います。
 両方の頬に衝撃を受け、私の認識が戻った時は、お姉様の顔が目の前に有りました。
 お姉様のお顔は、赤く紅潮しうっすらと汗ばんでいましたが、視線は氷のように冷たく私を射抜いていました。
 髪の毛の付け根が痛かったのは、多分お姉様が、髪の毛を掴んで吊っていたからだと思います。
「どうも、お前は考え違いをしているわね。奴隷に成ったら、主人の命令だけ忠実に遂行するの。それ以外はお前に必要なんか無いの! これをちゃんと理解しなさい。理解して忠誠を誓うなら、もう一度忠誠を試して上げるわ」
 お姉様は私に、髪の毛を左右に振ってそう言うと、チャンスを下さいました。

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