狂牙
MIN:作

■ 第2章 ゲーム4

 俺は晃の告白を聞き、大きな溜め息を吐いた。
 これで、合点が行ったからだ。
 どうして、天童寺が強引とも言えるやり方で、俺にゲームを申し込んできたか、コレで繋がった。
 天童寺は親の代から約50年国内のbPを張っている、化け物だ。
 そんな奴がわざわざ出張る程、俺は大物じゃない。
 bSに上がった物の、俺の持ってるポイントは奴の1/100程で、奴が欲しがる物など、俺は何も持っては居ないはずだったのだ
 俺は天童寺との出会いを思い出しながら、横で項垂れる晃に
「気にするな…。お前もこうなる事は、予想しなかったんだ…。それに、あのおっさんはそんな事だけで、俺にゲームを挑んだ訳じゃない…」
 責任がない事を説明してやり、3ヶ月前の出来事を語った。

 そう俺の前に天童寺が現れたのは、今から3ヶ月前。
 まだ年が明けたばかりの1月の初めだった。
 その時の俺は、徳田の斡旋でやっていた、bQとbUのゲームの最中だった。
 bUとのゲームはほぼ片が付き、bQとのゲームも優勢に進めていた。
 俺は祝杯を上げるつもりで、忠雄に経営させているクラブに足を向けた。
 俺が店の扉を開けると、黒服の啓介が直ぐに俺に気付き、慌てて跳んで来て、青い顔で俺に頭を下げる。
「ご主人様…、私では事態を収拾出来ません…」
 啓介が小声で俺に囁くと、店の中からママをさせている夏恵が駆け寄ってきた。

 夏恵は俺の前で優雅に頭を下げ、スッと耳元に顔を寄せ
「1時間前に…、お一人でご入店されました…」
 口早に報告する。
 だが、その声、その表情、その雰囲気は、明らかにこの店には相応しい物じゃなかった。
 俺は事態を推察しながら夏恵を肩で押しのけ、クロークの前を通り店内に入る。
 ママである夏恵があの様だったから、店内は推して知るべしだった。
 いつもは落ち着いた店内が、妙に浮き足立っている。
 いや、完全に欲情していたのだ。
 傍目にはどこがどうと言える程の変化では無い、だが俺には店のホステスが全てモードに入っている事が、一目で理解出来た。

 店のホステスは、俺の入店にも気付かず、あるボックスに意識を集中している。
 接客している客に対して、違和感を与える程ではないレベルだったが、半分以上は意識を持って行かれていた。
 俺は夏恵を呼び
「今すぐ、あの3人のお目当てに、アフターさせろ。店から出すんだ」
 低く鋭い声で指示を飛ばす。
 俺自身も事態を把握し、一瞬でスイッチが入って、それに夏恵が反応し掛ける。
「畏まりました、ご主人様」
 夏恵は危うく平伏しかけながら、それをギリギリ止めて、深々と頭を下げた姿勢で何とか止まり、俺の指示に従った。

 店内にいた3人の常連客に女達を宛がい、流れの中で店から出すと、俺は問題のボックスに向かった。
 そのボックスには、1人の男が座っていた。
 年の頃は40歳後半ぐらいで、身長は恐らく180p近いだろう。
 恰幅の良い体格で、体重は3桁は行かなくても、身長から考えてそれに近い筈だ。
 柔和そうな表情で微笑んでいるが、目の奥は笑っていない。
 その男から流れる雰囲気は、この店のホステス達を絡め取り、雌に変えていた。
 この店のホステスは、全てマテリアルによりマゾに変えられた被害者や奴隷達だ。
 言わば、生粋のマゾヒストだが、乙葉と優葉により、人前に出れるまで訓練した者達だ。
 その女達が、男の雰囲気だけで元の奴隷に戻っていた。

 離れていた女達でも、欲情して居るんだ、同じボックスで世話をしている2人は、目も当てられない状態だ。
 目には霞が掛かり、乳首はドレスの上からでも解る程、固く突き出している。
 座っている椅子には、水を零したのかと思う程、愛液が染みを作っていた。
 俺が男の目の前に立ち、初めて女達が俺に気が付くと、店の中だというのも忘れて
「ご、ご主人様! も、申し訳御座いません!」
 慌てて俺に謝罪し、床に平伏する有様だった。

 俺は多分苦虫を噛み潰したような顔を、その時していたと思うが、男はにこやかに微笑みながら
「良い店だね。ホステスも粒ぞろいだし、雰囲気も良い…」
 店内を見渡し俺に告げる。
 俺が言葉を返そうとすると、男の右手がスッとアイスペールに伸び、マドラーを掴むと、右側に平伏するホステスの尻に何の躊躇いも無く振り下ろす。
「あひぃ〜〜〜っ!」
 ホステスは高い声上げて顔を上げ、背中を反らせる。
「その上、ホステス達の嗜好も私好みだ…」
 男が言葉を続けた。
 
 男が手を放すと、ホステスの尻には銀色に輝くスチール製のマドラーが、ピクピクと震えている。
 フォークのように尖った部分が、ドレスの上から根本までホステスの尻肉を貫いていた。
 男の言うようにこのホステスは、マテリアルによりハードマゾの調教を受けている。
 ホステスは、反らせた背中をブルブルと震わせ、恍惚に染まった顔で、目の焦点が合っていない。
 痛みを快感に変えるホステスは、男の一刺しで絶頂を迎えていたのだ。
 男は初対面のホステスの性癖を見抜き、的確な快感を的確な場所に与えたのだった。

 俺は男の目を真正面から見詰め
「良い根性してるなオッサン…」
 低く響く声で呟くと
「それは、どっちの事かな…?」
 ニヤリと野太い笑みを浮かべて、更にサディストの雰囲気を解放した。
 熱風のような気配が、俺の顔を正面から叩く。
 店のホステス全員を狂わせた雰囲気は、男にとってかなり押さえた物だった。
 俺ですらたじろぐ気配を受けた女達は[あはぁ〜〜〜]と官能に染まった声を上げ、股間を押さえながら全員しゃがみ込んだ。
 それは、圧倒的な[支配者の気配]だった。

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