狂牙
MIN:作
■ 第2章 ゲーム16
乙葉はその状態で、腰を前後左右に振り、カツン、カツンと音を立てさせる。
俺はその音の間隔と音質に首を傾げグラスを覗き込むと、乙葉は子宮に氷を受け入れ、子宮口の締め付けで氷を打ち出し、ロックグラスの底にぶつけていた。
「乙! 直ぐに止めろ!」
俺は慌て乙葉の行動を怒鳴りつけた。
乙葉は俺の努声でビクリと震え、直ぐに体勢を入れ替えようとする。
乙葉の身体が起きあがり、クルリと俺の方を向いた瞬間、乙葉の目が眩んだ。
フラリと頭が揺れ、そのまま後ろに尻餅をつき掛ける。
俺の顔面から一瞬で血の気が引いた。
あの状態で尻餅をつけば、結果は一目瞭然だった。
俺の身体は、考えるより早く動き、すんでの所で乙葉を抱き留める。
乙葉は完全に酔った状態で、焦点の合わない目を俺に向け
「あはぁー、ご主人様グルグル回ってるぅ〜」
あどけなくケラケラと笑っていた。
毒気を抜かれた俺は、大きな溜め息を一つ吐き、コツンと乙葉の頭を一つ叩くと
「出しなさい」
小さな子供を諭すように、乙葉に命じた。
乙葉はM字開脚のまま俺に支えられ、両手で叩かれた頭を抑え
「はぁ〜い〜…」
シュンと小さく成って返事をする。
両手を股間に充て少し息むと、乙葉の両手にロックグラスが戻って来た。
俺はその中身を見て、また溜め息を吐く。
乙葉がオ○ンコに入れる前のロックグラスには、溶けた氷で薄まったブランデーが1/4程入っていただけだが、今はその量がグラス8割程に増え、俺の精液が舞い踊っていた。
乙葉はその愛液と精液が混ざったロックグラスを目の前に翳し
「あはっ、ご主人様のミルク割りだぁ〜」
嬉しそうに見詰めていた。
乙葉はそれを飲む気満々だったが、俺はそれどころでは無かった。
俺は乙葉を助ける時に、自分の頭の中に舞った単語を拾い集めていた。
何かが、俺の頭の中で閃き、俺に囁きかける。
そう、それはヒントの切れ端だった。
(濃さ…、無理をする…、オーバーフロー…、いや違う…。10倍…、パワーゲーム…、それならルールは要らない…。何だ、この引っかかりは…)
俺はアルコールでぼやけた頭が疎ましくなり
「乙、終わりだ。風呂に入るぞ」
乙葉に視線を向けて、低く指示を出した。
乙葉はその時ペタリと床に座り込み、空に成ったロックグラスをペロペロと舐めていた。
多分、時間的に言って乙葉は、グラスの中身を一息に飲んだんだろう。
あの、精液と愛液で満たされたブランデーの水割りを。
俺はガックリと肩を落とし、溜め息を吐きながら顔を拭うと、乙葉に近付き無言でグラスを取り上げる。
乙葉はキョトンとした顔で俺を見上げ、俺の顔を見て
「あ〜ん、ご主人様ぁ〜…それ、乙の〜…」
唇を尖らせて、抗議した。
俺は乙葉を肩に担ぎ上げ
「風呂!」
短く告げて、連れて行った。
こんな状態で、乙葉が明日の朝、役に立つ筈が無い。
少しでもアルコールを抜いて、明日に備えさせる。
俺の状況を的確に把握しているのは、間違い無くこの酔っぱらいだった。
俺は、酒を飲ませた事を少し後悔しながら、乙葉を浴室に運んで行った。
風呂場に着いた俺は乙葉を湯船に放り込み、頭からシャワーを被る。
50℃に設定した湯を頭から被り、全身の皮膚を目覚めさせる。
数分浴びた後、温度調整を一気に下げ、冷水に切り替えた。
熱湯が俺の眠った身体を叩き起こし、冷水が火照った血を冷ます。
俺の頭の中から見る見るアルコールの靄が消え、ピントが合い始めた。
すると俺の背中に、柔らかな肉の感触が押しつけられる。
乙葉が湯船から出て来て、俺に抱きついてきた。
「ご主人様…、私もご一緒して良いですか…」
乙葉は少し酔いが醒めたのか、割とまともな口調で俺に懇願して来る。
俺は無言で乙葉の腕を掴み、クルリと向きを変え乙葉を抱きしめ
「早く頭をシャキッとさせろ。お前の力が必要だ」
乙葉の耳元に囁いた。
乙葉はそれだけで感じたのか、ブルブルと身体を震わせ
「はい…」
小さく答えて俺に身を預ける。
俺と乙葉は、貪り合うようにして口吻を交わしながら、シャワーを浴び続けた。
シャワーを浴びた後、俺は乙葉を横抱きにして、湯船に向かう。
2人で湯船に浸かり、俺は乙葉に数度絶頂を与える。
乙葉は快感に震えながら身体をくねらせ、酔いを散らし、次第に覚醒し始める。
俺は乙葉を責めながら、頭の中で組み立てた計画を誰に行わせるか乙葉に問い、乙葉は俺の質問に的確に答える。
強引だったが、アルコールを抜くには運動が一番だ。
計画が出来た時には、乙葉はグッタリと力無く、へたばっていた。
茹で蛸のように真っ赤に顔を染め、湯船の縁に辛うじて引っ掛かっている。
だが、これで基本的なプランは出来上がった。
乙葉は今俺に何をしたのか解っていない。
単純にその場その場で、俺の質問に答えただけだからだ。
だが、乙葉の答える情報の正確さが、俺にしっかりとした足がかりを作らせた。
天童寺にしっかりと届く、牙は見付けた。
後はそれを打ち込む、タイミングと足場が必要だった。
優葉が今動いている事も、意味を成してくる。
俺は目の前に有った霧が晴れ、一筋の光が差し込んだ様な気がした。
まあ、どちらにせよ、まだコマは足りない。
だが、今までのような焦燥感に苛まれる事もない。
俺はへたばっている乙葉を湯船から抱き上げて、2人分のバスローブを手に寝室に向かった。
ベッドに入る前、乙葉にバスローブを着せ、俺も身に纏う。
今日は、このまま眠るとしよう。
乙葉は自分がどれ程大きな仕事をしたか、全く理解せずスヤスヤと眠っている。
(このゲームが終わって生きていたら、乙葉には特別な褒美を遣らなくてはな…)
俺は乙葉の安らかな寝顔を見ながら、髪を優しく撫でフッと考えた。
どちらにしても、[勝つ事]が[生きる事]だ。
俺は乙葉の横に身を滑り込ませ、眠りに付いた。
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