狂牙
MIN:作

■ 第3章 転換の兆し12

 昌聖は、小さく頷いて
「うん、気に成る事が有ってね…。調べ物の得意な歩美に頼んだんだ」
 昌聖が正直に答えると
「そう言う内容なのですね…」
 美咲は、全てを理解して微笑みを消す。
 昌聖は、美咲の変化を気配で感じ
「そこ迄に成るか、まだ解らない。けど…、感が囁くんだ…[何一つ見落とすな]って…」
 昌聖は、静かに美咲に告げると、美咲の気配が再び変わる。

 美咲の頬にスッと赤味が差し、身体から妖しい色気がユラリと立ち上る。
 昌聖が呟いた時に漂った獣性が、美咲の雌をくすぐった。
 (あんっ。昌聖様…、格好良い…。凄い速度で、雄々しく成って行かれる…。お兄ちゃんの言った事は、本当だったわ。私も、もっと自分を磨かなくちゃ…。昌聖様に置いていかれないように…)
 美咲は、昌聖の資質を優駿に教えられ、優駿の言う通り、自分自身を磨き上げながら、昌聖の身を過剰に心配した。
 そして、昌聖は優駿の言う通り、美咲に心配を掛けないように、優駿の訓練から無傷で戻って来るように成る。

 昌聖は知らなかった。
 自分を悩ませる、上司と部下がグルだった事を。
 昌聖が、感じて居た中間管理職の悲哀迄も、優駿の掌の上だったのだ。
 何も知らない昌聖は、日増しに美しく成り、強い従属を示す、最愛の婚約者に一生懸命相応しく成ろうとしていた。
 だが、昌聖が努力すればする程、美咲も女を磨き、どちらも立ち止まらない。
 結果、2人は優駿の思惑通り、急速に成長した。
 今の昌聖は、組織の幹部として不足している経験を補う十分な能力を持って居る。
 だが、昌聖の周りには、化け物のような能力の持ち主が多いため、その事実に気付いていなかった。

「何か、嫌な予感がするんだ…。宗介さんに伝えなきゃいけない。そんな、きな臭い感じのね…」
 昌聖が、ボソリと呟く。
 呟いた昌聖の頬に、不敵な獣性を含んだ微笑みが浮かぶ。
 第三者には、絶対に見せない昌聖の真の顔。
 鍛え上げられた、サディストの微笑みである。

 昌聖の表情に、美咲と美由紀が反応する。
 頬を赤く染め、瞳が潤み、吐息が熱を帯びる。
 2人の内股をヌルついた体液が、ツッと流れ落ちた。
 昌聖はニヤリと微笑みを歪めると
「はしたないぞ、お前達。こんな所で涎を垂らしちゃ駄目じゃ無いか。主の躾が疑われる」
 笑いを含んだ声で、注意を与える。
「申し訳ございません」
 2人は、昌聖に謝罪しながら、平伏しようとした。

 だが、昌聖の手が素早く伸び、2人の行動を阻止した。
「あきゅん」
「ふにゃ〜」
 2人は鼻に掛かった声を上げ、顔を逸らせ、悩まし気に眉根を寄せた美貌を晒す。
「駄目…許さない。このままリビングに行くよ。そこで躾だ」
 昌聖は掌を上に向けて、右手で美咲、左手で美由紀の股間を覆って言った。
「は、はい。ご主人様。だらしない美咲を、躾けて下さいませ〜」
 美咲が震える声で答えると
「ふにゃ〜ん」
 美由紀が甘い声で鳴きながら、少し小振りの美尻を揺らせ、媚び視線を送る。

 昌聖の掌は、ただ股間にあてがわれただけだが、2人の表情には、完全な欲情が浮いていた。
 昌聖は小さく鼻で笑うと
「勝手に逝くのは勿論、声を上げるのも、姿勢を崩すのも許さないよ」
 静かに命令を与えながら、中指と薬指を第一関節から曲げ、秘裂の中に深々と収める。
 2人の身体が、ピクンと小さく跳ね、首迄真っ赤に染まるが、2人は必死に奥歯を食いしばり、快感を押さえつける。
 だが、昌聖の攻撃はそれだけで終わらない。
 2人の剥き出しの大きな肉芽に、親指がスッと近づき、サワサワと掃くように撫で始めた。
 2人の腰が、ビクリと大きく震え、姿勢が崩れ掛ける。

 しかし、2人はそれにも耐えて、命令を忠実に守った。
 昌聖は2人の耐える姿を[フフン]と鼻で笑い、左手を突き出し、右手を引きながら歩き始めた。
 美咲は股間を引っ張られ、美由紀は秘裂を突かれる。
 昌聖の歩く速度に合わせて、2人も移動するが、昌聖の指が歩くリズムで絶妙に揺れ、Gスポットとリングピアスが貫いたクリトリスを刺激した。
 2人に取って昌聖は、敬愛する主人で、その手で性感を刺激されるのは、最も快感が生まれる事だった。
 しかも、開発された2人の身体は、敏感に反応する。

 Gスポットとクリトリスを刺激されれば、10秒と経たずに逝ける2人は、昌聖の命令で感じる事を禁じられた。
 無茶な命令である。
 だが、2人はその無茶な命令を必死で守る。
 罰が怖い訳では無い。
 嫌では有るが、[それは自分の責任]とどんな罰も、甘んじて受けられた。
 2人が恐れて居るのは、命令を守れ無かった時の主人の[落胆]で有り、ご褒美の輪に入れない、[疎外感]で有る。

 昌聖の躾は、常に服従心に問い掛けて来る。
 本人が耐えられる、限界ギリギリまで追い詰め、成功には蕩けるような官能を、失敗には暗闇に呑まれような不安を与えた。
 昌聖の奴隷達は強い服従心で、躾に耐え、更に服従を強めて行く。
 強固な服従心は、同時に信頼を強め、深い官能を生み、不安感をより濃くする。
 理想的な主従関係だが、その構築は生半可な事では出来ない。
 昌聖はその関係を自分の嗜好と結びつけ、完成させたのだ。
 昌聖の嗜好[極限の飴と究極の鞭]は深く奴隷達に浸透し、極上の女性に成長させていた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊