狂牙
MIN:作

■ 第4章 回り始める舞台7

◆◆◆◆◆

 昌聖達は一旦解散し、別々に通学を始める。
 東京メトロ千代田線に乗って、揺られていた。
(ふ〜ん…。敵意は無い…、殺気も感じ無い…。見てるだけって感じだけど、姿を判別させない…。まあ、この乗客の量じゃ仕方ないか…)
 昌聖の乗る車両は、乗車率120%を超える状態で、昌聖もかろうじて吊革にぶら下がっている。
 両手で、吊革を掴むのは、こういう電車に乗る時の、最低防衛手段だ。
 下手をして、隣の女性に手が当たりでもしたら[止めて下さい!]と怒鳴られ、駅員に連行されてしまう。
 今の昌聖の姿は、間違い無く大声を出されるタイプなので、かなり気を遣っている。

 そんな、状況の中、2駅前から、ズッと視線が突き刺さっていたのだ。
(この状況で、僕が姿を確認出来ないって…ランクで言うと中の上って所か…)
 昌聖は冷静に分析しながら、携帯電話を取り出し、メールを打ち始める。
(う〜ん…ポイント的には、妙極院の裏かな…、みんな頼むよ)
 昌聖はポケットに携帯電話を片づけながら、送信を始めた。
 昌聖は数分後、ポケットの中で携帯電話のバイブを4回感じ、全員が指示を受け取ったのを確認する。

 根津駅で降りた昌聖は、そのままトボトボと真っ直ぐに大学に向かった。
 視線は相も変わらず同じ距離を保ったまま、背後を付いてくる。
 人通りはさほど無く、昌聖は追跡者の姿を確認した。
(やっぱり、君だったね…。さて、どこの組織かな〜…)
 昌聖は、クスクスと笑いながら、歩みを進めていった。
 妙極院の壁を右手に見ながら、昌聖はスッと壁を曲がった。

 追跡者は足早にその後を追い、同じように曲がり辺りを見渡す。
 少し奥の方で、昌聖がスッと視界を過ぎると、追跡者も後を追った。
 通りから影になった場所に来ると、追跡者は足を止める。
「深追いは、禁物だって、習わなかった?」
 昌聖が追跡者の前で、にこやかに微笑みながら、問い掛けたのだ。
「えっ、何の事ですか?」
 千佳は驚きながら、昌聖に笑顔で答えると
「駄目だよ、惚けても。叶佳子さん…、ううん、三浦千佳さんって呼んだ方が良いかな?」
 昌聖は笑顔を崩さず、千佳に問い掛ける。

 その言葉を聞いて、千佳の顔から一瞬で血の気が引き、直ぐに後ろを振り返る。
「駄目だわよ。まだ、お話の途中でしょ」
 振り返った、千佳の目の前に身長180pの佐知子が道を塞いで、微笑んでいた。
 千佳は、直ぐに通りに逃げようと、左を向くと
「あらあら、聞き分けのない子は、お仕置きしちゃうぞ」
 そこにも、美由紀が立ちふさがり、千佳は後ずさる。
 そんな千佳の背中に、柔らかな感触がフワリと触れ
「お休みなさい。良い夢が見られると良いわね…」
 美咲が囁くと、千佳の意識が頭の中から、弾き出された。

 4人はそのまま、千佳を中心にして移動し、妙極院の裏を通り抜け、駐車場に向かう。
「ご主人様、こちらで御座います」
 涼やかな小声で、昌聖を呼ぶ声の先には、歩美が車の扉を開いて、頭を下げていた。
 千佳を車に乗せると、佐知子が運転席側、昌聖が助手席側に乗り込み、歩美が助手席に収まる。
「美咲達は、タクシーを捕まえて戻って来て」
 昌聖が美咲に伝えると
「美咲様を、そんな物で送らせる訳には参りません。私の方で車を用意しました」
 歩美が昌聖に告げると直ぐに、後方からベンツが音も無く滑り込んで来た。

 美咲は歩美の気配りに、ニッコリと微笑むと
「有り難う」
 お礼を告げて美由紀と共に、車に乗り込んだ。
 2台のベンツが走り始めると、その1ブロック反対の道を、1人の青年が走っていた。
 青年は辺りに鋭い視線を送り、道路を駆け抜けて行く。
 途中、道行く人を引き留め、写真を見せて質問し、情報を集めて顔をしかめる。
 立ち止まった青年は、おもむろに携帯電話を取り出すと、ダイヤルした。
「啓介です。根津駅から妙極院までは目撃者が居ますが、それ以降は誰も見ていません。おそらく、一足違いです」
 啓介が沈痛な声で告げると、電話の相手は息をのみ[帰って来い]一言だけ告げて、通話を切った。

◆◆◆◆◆

 昌聖の屋敷の地下で、千佳が手足を拘束されて、ぶら下がっている。
 まだ可愛らしい赤いワンピースも、その下のミュールすら脱がされては居ない、捕まったまんまの姿に、手首と足首に拘束ベルトが増えているだけだ。
 昌聖はその姿をジッと、ソファーに座って見つめている。
 昌聖の右には美咲、左には歩美が腰掛け、背もたれに佐知子が肘を起き、足下に美由紀が座って、同じように見つめていた。

 そんな昌聖が、歩美に顔を近づけ、コソコソと耳打ちをすると、歩美はクスリと微笑み頷いてソファーを立ち上がる。
 歩美が席を立つと、今度は美咲に顔を近づけ、同じように耳打ちすると、美咲もクスクスと笑いながら、頷いてソファーから立ち上がった。
 美咲が立ち上がると、昌聖は手を上に伸ばし、佐知子の頭を抱え、佐知子が顔をスッと昌聖の横に差し出す。
 昌聖が佐知子の耳元に囁くと、佐知子の口元がニヤリと歪み、コクリと頷いて奥に消えて行く。
 最後に昌聖は身体を前に倒し、美由紀の耳元に囁くと、美由紀は楽しくて堪らないと言う表情で、頷いて掛けだして行った。

 昌聖がソファーの背もたれに身体を預けると、数分で歩美が手に銀色の小箱を持って、戻ってくる。
 次に美咲が棘の付いた1本鞭を手にして戻って来て、ゴロゴロと佐知子がごつい木の椅子を押しながら戻って来た。
 最後に美由紀が様々な淫具を手に戻って来ると、準備が完了する。
(さって、どんな反応を見せるかな…)
 昌聖は口元に微かな微笑みを浮かべ、千佳を見つめ美咲達が口を開く。

 美咲が昌聖にしなだれ掛かり
「昌聖様、この女どうします? 私に任せて頂いたら、嬲り抜いてキッと口を割らせて見せますわ」
 胸に手を添え、陶然とした表情で告げる。
「あら、お姉様、そんな面倒な事…。このお薬を使えば、殆どの者は何でもしゃべりますし、後はお人形さんみたいに従順に成りますわ」
 歩美が銀色の小箱を開け、中から注射器を取りだして、昌聖の前に翳す。
「そんなの味気ないわ。やっぱり、口を割らせるのは、これに限りますわ。古来からの拷問の数々で、泣き叫びながら口を割らせるの」
 佐知子が椅子を撫でながら、楽しそうに昌聖に提案する。
「えっ〜っ、そんなのは、男にでもしたら良いわよ。こんな可愛い女の子なんだから、やっぱり可愛い声で鳴いて貰わなきゃ。3日ぐらい快感漬けにしたら、殆どの女の子は、何でもしゃべっちゃうよ」
 美由紀が口をとがらせて、淫具を広げた。

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