狂牙
MIN:作

■ 第4章 回り始める舞台17

◆◆◆◆◆

 鞠恵は、前田に連絡を入れた。
 前田の携帯番号は、自治会の連絡網に残っていた。
 鞠恵はそれを控え、公衆電話から連絡を取った。
「もしもし、鞠恵です。ご主人様に許可を頂きました。変態の精液公衆便女をご自由にお使い下さいとの事ですが、なにぶん使用者の多い[物]ですから、使用権は早い方優先だそうで御座います。この間の工事現場でお待ちしておりますが、他の方から、お声掛かりが御座いましたら、そちらに伺いますので、お許し下さい」
 前田に熱い吐息混じりに告げると
「ま、待て! 20分で行く。その間、他の奴とは、連絡するなよ!」
 前田は突然の電話に驚きながらも、鞠恵に命令して、通話を切った。

 鞠恵は、隣に佇む啓一に頷いて、工事現場へ向かう。
 工事現場に着くと、啓一は鞠恵に頷いて建物内に潜伏した。
 鞠恵は薄く微笑むと
「由梨様、廃棄致します…」
 ボソリと小さく呟く。
 前田は、連絡通り20分で工事現場に現れ
「へへっ。話の分かるご主人様じゃねぇか。良し、さっそくホテルに行こぜ」
 鞠恵の手を掴もうと伸ばしたが、スッと鞠恵が身体を引き
「あの…、ここで一度…」
 ブラウスのボタンを外しながら告げ、再び一歩下がり、ブラウスの前を大きくはだけた。

 毬恵は、ブラウスの下に何も身に付けておらず、白く大きな乳房が揺れている。
 前田はニヤニヤ笑いながら
「奥さんも好きだね〜…。我慢出来ないんですか」
 鼻の下を伸ばして、追い掛ける。
 スルリとまたかわし、鞠恵は更に一歩後ずさり
「あ〜、許して。止めて下さい」
 はだけていた、ブラウスをかきいだいて、身体をくねらせ濡れた瞳を向けた。

(何のつもりだ? 今更逃げ…。はっ…そうか、レイププレーか! そう言うシチュエーションも悪く無い)
 一瞬驚いた前田だが、直ぐに鞠恵の意図に気付き
「諦めるんだな。ここには、誰も来ねぇ。大人しくな」
 下卑た笑いを浮かべ、にじり寄る。
 前田が乗ってきた事を確認した鞠恵は、クルリと身体を回して、建物の奥に走り始めると、前田もそれを追い掛けた。
 前田は気付いていない。
 身を翻した、鞠恵の口元に、嘲るような笑いが浮いていた事を。

 10m程走ると、鞠恵を捕まえた前田が、鞠恵を押し倒す。
「いや、止めて〜!」
 毬恵が大声で叫び、のし掛かった前田を押しのけようと、腕で突き放す。
 その手に込められた力は、かなり強い本気の抵抗だった。
 訳が分からなく成った前田だが、興奮状態で自分の衝動を止められず、力を込め鞠恵をねじ伏せようとする。
 その力にも、鞠恵が大声を上げて抵抗したため、前田は反射的に手を出し、鞠恵の頬を平手で打った。
 [バシーッ]と鞠恵の頬が派手な音を上げる。
「くふぅ〜ん…。いや…、お願い…止めて…。止めて下さい…」
 鞠恵の声がか細い物に変わり、抵抗の力が弱まる。

 しかし、鞠恵の目の奥には、はっきりと喜悦の色が滲んでいた。
 その目を見て、初めて前田は鞠恵の真意を理解する。
(こいつ…。遊びのレイププレーじゃ無く。本気で来いって言うのか…。[力の加減なんか要らない]って…そう言うのか…)
 前田はそれに気付いた瞬間、背筋をゾクゾクと走る興奮に襲われる。
(良いだろう。やってやるよ…、お望み通りな!)
 前田は、精神のタガを外し、鞠恵に暴力をぶつける。

 馬乗りに成ったまま、何度も、何度も鞠恵の頬を打ち、鞠恵の頬が真っ赤に染まり、唇の端が切れ血が滲む。
 暴れる毬恵の身体が、コンクリートに擦れ、薄汚れ、傷ついて行く。
 鞠恵の抵抗が徐々に弱まり、ぐったりとすると、前田はブラウスの合わせ目に手を掛け、大きく開いた。
 揉みごたえの有る、鞠恵の白く大きな乳房が飛び出し、前田はそれを鷲掴みにして、握り潰す。
「いや〜っ、お願い…許して…」
 鞠恵は、顔を歪め悲鳴を上げると、また前田が頬を打ち付ける。
「くふぅ〜…。もう…打たないで…」
 鞠恵は抵抗を止め、ぐったりと力を抜いた。

 鞠恵は、涙を流し、肩を震わせ恐怖に怯えている。
 勝ち誇った表情で、前田がスカートを捲り上げると、すり合わせた鞠恵の艶めかしい足が、最後の儚い抵抗を演出し、前田の情欲をそそった。
「おい! 足を開きな!」
 前田が鞠恵に命じると、鞠恵はハッと驚いた表情を浮かべ前田を見、顔を背けて
「い…いやよ…」
 力無い声で、拒否する。

 前田はぎらついた獣性に染まる笑顔で睨み付け
「まだ、殴られたいのか?」
 低く押し殺した声で問い掛ける。
 怯えた視線を前田に向け、フルフルと屈辱と恐怖が瞳の中で葛藤し、下唇を噛み締めうなだれる鞠恵は、屈服を見事に表現した。
 震える足が、徐々に広がると、前田の興奮はピークに達し、これが本物のレイプのような気持ちにすら成っていた。
 無毛の秘部が目の前に現れた時には、前田は鞠恵の身体に覆い被さり、チ○ポを突き入れた。
 ぐしょぐしょに濡れたオ○ンコだけが、これが本物のレイプで無い事を物語っていた。

 夢中で腰を振る前田は、背後から忍び寄る気配にも全く気付かない。
「くおっ! 奥さん凄い締め付けだ…。俺、もう…保たねぇ…」
 前田は荒い息を吐きながら告げる。
 その時、鞠恵の顔が今まで見た事の無い酷薄な笑顔を浮かべ
「身の程をわきまえ無いからよ」
 前田に告げた。

 その瞬間前田の目の前から、鞠恵の顔が消え、啓一の無表情な顔が現れた。
 前田はどこか遠くで、バキッと言う音を聞き、それと同時に射精した。
 啓一の右手が前田の頭頂部から離れると、前田の頭がぐらりと後ろに倒れ、身体の前面にぶら下がる。
 重心が背中側に掛かっていた、前田の身体が仰向けに倒れた。
 仰向けに倒れた前田の胸の上には、顔が揺れている。
 頭を下にした前田の顔は、両目を見開いた驚いた表情のまま、天井を見ていた。
「さあ、帰りましょう」
 鞠恵は、起き上がりながら身なりを整え、啓一に告げる。
「はい。鞠恵様」
 啓一は頭を深々と下げ、鞠恵と建物を出て行った。

◆◆◆◆◆

 晶子は川原に連絡を取り、呼び出しを掛けた。
 晶子は、川原の息子と幼なじみで有り、自治会の子供会行事などでも親しく接していたため、今でも道で会えば、軽い冗談のやり取りをする間だった。
 その晶子から
『川原のおじさん。ママの事で相談にのって欲しいの…。大人の人と話さなきゃいけない事なんだけど、パパにも話せないし…。私どうして良いか…もう、分からないの…。おじさんお願い…、私の知っている中で、こんな相談出来るの…。もう、おじさんだけなの!』
 晶子は、そう言って川原を呼び出したのだ。
 川原は、その話しを聞いて心底驚いた。
 鞠恵が誰かの命令に服従している事は、気付いていた。

 だがそれは、当然夫で有る、幸司だと思って居たのだ。
(どう言う事だ?[パパにも相談出来ない]って。奥さんの相手は、旦那じゃ無いのか? もし、それが本当なら決定的な情報だ! こりゃツイてるぞ)
 川原はニヤリと笑い、待ち合わせを承知する。
 晶子は、待ち合わせ場所を駅に程近い静かな公園を指定し、[一刻も早く相談したい]と付け加え連絡を切る。
 川原も思わぬ展開に、仕事が手に付く訳も無く、直ぐに会社を後にした。

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