狂牙
MIN:作

■ 第5章 血の連鎖5

◆◆◆◆◆

 とある雑居ビルの地下、エレベーターを特殊な操作方法で操作しないと行けない階に、昌聖は座っていた。
 30畳は有ろうかと言う、広大な板張りの空間に正座していた。
 そして、その板張りの空間の真ん中に佇む、1人の老人に目を向けている。
 老人は、隻脚隻腕盲目の拳師、[住職]と呼ばれている禿頭の男だ。
[住職]の身体がユラリと前屈みに倒れ、その輪郭がぶれる。
[ギキシュァン]金属が激しく擦り合うような音を立て、老人の姿が消えると、5m程離れた場所に老人が現れ、ほぼ床と平行に倒れ込んだ姿勢から放たれた足が、床と垂直方向に綺麗な白線の弧を描き、中空を切り裂いて、立ち上がる。

 その姿を見ていた昌聖が、正座した場所から腰を浮かせて身を乗り出し
「どうですか、師匠!」
 老人に興奮した声で問い掛けた。
 老人は、義足に視線を向け、持ち上げたり、捻ったりしながら
「驚いたわい…。まさか、[紫電脚]が打てるとわな…」
 少し興奮した声音で、昌聖に告げる。
 昌聖はその言葉を聞いて、両手で拳を握り、勢い良く脇の下に引き込んで、ガッツポーズを取ると
「っしゃーーーーっ!!」
 腹の底から歓喜の声を出し、叫んだ。
「じゃが、連発はできんの…。ちと、熱く成り過ぎとるわい…」
 住職が、ボソリと呟くと昌聖は、直ぐ横に置いてあった工具箱を手にして、走り寄る。

 佇む住職の側に昌聖が座り込み、道着越しに足に触れると
「熱ちゃ! 師匠道着のズボン脱いで下さい!」
 慌てて、住職に告げた。
 住職は昌聖の言葉で、直ぐにズボンを脱ぐと、義足部分から薄く煙が立ちこめている。
 摩擦で、金属同士がこすれ合い、高温を出していたのだ。
「うわっ! こんな高温に成るなんて…。想定外も良い所だ…、一体何tの荷重をかけて捻ったら、こんな事になるんだ…」
 昌聖は、冷却スプレーを噴射しながら、住職の[機械式義足]を点検する。

 カバーを外し、内部構造を見た瞬間、昌聖の頭が項垂れた。
「なんじゃ? どうした」
 住職が軽い口調で問い掛けると
「どうやったら、こんな負荷が掛かるんですか? パッと見4割のパーツに、熱が入ってます…。致命的な損傷は…、取り敢えず有りませんが、1回の動きでパーツが殆どなまされてます…」
 昌聖は大きな溜息を吐き、ガックリと肩を落とす。
 そんな昌聖に、住職はカラカラと笑いかけ
「いや、そう落ち込むな。お前は、本に天才じゃぞ。何の動力もないこの義足、恐ろしい程に意のままに操れる。感覚や感触は無いが、まるで元の足のようじゃ。[紫電]が出来ただけでも驚きなのに、まさか[脚]が放てるとは、思わなんだわ」
 昌聖の作った義足を素直に褒める。

[紫電]と言うのは、住職の身に付ける体術の奥義で、流派の代名詞である。
 脱力状態から倒れ込み、重力と螺旋の動きで、爆発的な突進力を作り、瞬時に移動する体術だった。
 その独特の移動術に、拳や肘を突き出す[拳]や[突]、身体に捻りを加える[打]や[肘]、足を突き出す[蹴]横になぎ払う[旋]が有り、そして今住職が行った、縦回転の[脚]が存在する。
 どれも、一撃必殺の攻撃だが、後に行く程難易度は跳ね上がり、身体の捻りを使う[打]や[肘]で目録、足を使えて皆伝と認められる。
[脚]に至っては、使えた物は数えるだけしか居ない。
[紫電]ですら、才有る者が努力と鍛錬を積み重ね、やっと行き着くレベルとすれば、異常な身体能力を必要とする。
 住職は、それを義足で行い、昌聖はそれが出来るレベルの義足を作り上げた。

 真剣な表情で、ブツブツと呟きながら、住職の義足をチェックする昌聖に
「お前は、本に凄い奴じゃ。こんな儂にも、まだ夢を見させてくれる…。昌…、有り難うな…」
 顔に暖かい表情を浮かべ、ポンポンと頭を叩く。
「何言ってるんですか。師匠は[脚]の連撃が出来たんでしょ? 僕は、絶対にそのレベルまで持って行きます。だって、あんな綺麗な技、僕は見た事がないんですから!」
 昌聖は、昔見た住職のデモVTRを思い出しながら、熱の籠もった声で告げる。
「馬鹿、あれは20年も前の、一度切りの演舞じゃ。無理を言うでない! この年寄りに、何を求め寄るんじゃ!」
 住職が慌てて告げると
「駄目です! 師匠はいつも僕に言うじゃないですか[出来ないのは、しないからだ]って」
 昌聖は切り返した。
 2人は暫く顔を見合わせたが、お互い笑い始め、大声で笑い合った。

 道場の床に座り込み、カチャカチャと義足を修理する昌聖に顔を向け
「昌…。また、悩み事か? 優駿の罠はどうなった」
 優しげな声で、問い掛ける。
 昌聖は大きな溜息を吐きながら
「そうだ…、それも有ったんですよねぇ…。もうわかんないんです…僕…」
 肩を落としながら、ボソリと呟く。
 昌聖はそう告げると、事のあらましを住職に告げた。
 千佳の尾行や捕獲、尋問中の突然の解放指示。
「爺ちゃんは、爺ちゃんで[もう終わりじゃ。何も詮索するな!]の一点張りだし。僕に分かったのは、[ユウハ]と[オツハ]って名前と、[リョウケン]って主人の名前ぐらいなんですよ…。はぁ〜〜〜っ…、頭痛いや…」
 昌聖が愚痴るように、住職に告げる。

 その話を聞いていた、住職は
「まあ、そう言うな。一也さんもお前を心配しとるんじゃろう。なんせ、かなり無謀じゃからなお前さんは」
 カラカラと声だけで笑いながら、昌聖の頭をポンポンと叩く。
 昌聖がムッとした顔を上げながら
「師匠まで、僕の事をそんな風に言うんですか? もう! みんなで子供扱いだ」
 住職に文句を言った。
「すまん、すまん。じゃが、少し違う事は覚えておけ。みんな、お前が可愛いんじゃ。儂も含めてな…」
 住職は口の端を持ち上げて、優しい表情で昌聖に告げる。

 昌聖は、照れた表情を浮かべ[もう! 知りません]拗ねたような声で、住職に言った。
 だが、住職は微笑みを浮かべながら、昌聖の意識が義足に向くと、スッと唇を引き結び考えに没頭し始めた。
 顔の中央を走る深い傷のため表情が変わらず、その内心を知る事は出来ないが、どこか苦悩しているようにも見える。
 また一つの歯車が噛み合い、物語を織りなして行く。

◆◆◆◆◆

「うっ、くうぅん…あっ、あはぁ〜〜〜っ…、あっ、あっ、あくぅ〜〜〜っ…」
 白く艶やかな裸身が波打ち、官能の吐息が赤い唇から漏れ、黒髪が千々に乱れ汗に濡れた乙葉の美しい顔に絡み付く。
 ソファーに座る良顕の膝の上で、妖艶なダンスを踊る乙葉の周りで、同じように千春と千佳が貫かれて乱れる中、晃と夏恵と優葉が全く別の驚きで、交わっていた。
「うくぅ〜〜〜っ! はぁ、はぁ、はぁ…。何なのそれ…。そんなの反則よ!」
 晃が低い声で、優葉に告げると
「う、うん…。これ…凄い! あって言う間に快感が掘り起こされる感じ…」
 千佳が買った、ツインバイブのゴムショーツを穿いた優葉が、驚きを顕わにして呟く。

 優葉の驚き顔に夏恵が食いつき
「ちょ、ちょっと優葉様、それ私にさせて下さい…」
 優葉の腰に手を伸ばそうとすると
「まだ駄目よ! これの、機能使い切ってないんだから。今度は、夏ちゃんを犯して上げるから、ちょっと待ちなさい」
 優葉は珍しく、夏恵を制し股間に手を伸ばして、手探りでダイヤルを回し、夏恵に飛びついた。
「さぁ、夏ちゃん楽しませて上げるわ」
 そう言うと、優葉は夏恵の足をわり割いて、オ○ンコにバイブの片割れを挿入した。
 その途端
「いひぃ〜〜〜〜っ!」
 侵入した筈の優葉の身体が仰け反り、ビクビクと痙攣して白目を剥く。

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