狂牙
MIN:作

■ 第5章 血の連鎖23

 全裸で平伏した毬恵達の言葉に、真っ先に反応したのは、間近で見ていた坊主だった。
 数珠を投げ捨て、袈裟を脱ぎ去り晶子の身体に覆い被さる。
 すると、荒い息を吐いていた、孝司の横に座る孝司の弟が、上着を脱ぎ捨てながら毬恵に飛びついた。
「義姉さん…義姉さん…、俺前から義姉さんの事…」
 譫言のように呟き、毬恵を抱きしめ唇を奪う。
 それを見ていた、参列者の最前列の男達が、毬恵と晶子に群がり始める。
 当然130人の参列者の中には、女性も数多く参列していた。
 それに、葬祭場のスタッフも7割が女性だった。

 その女性達はこの異常な状況に、会場を逃げ出すかと思われたが、誰1人席を立とうとしない。
 壁の前に控えている、女性スタッフ達は皆その場にへたり込んで、ビクビクと身体を震わせている。
 そう、この場にいる女性達は、全員が発情し腰が砕けているのだ。
 原因は、この告別式会場を満たす、お香である。
 その効果は、男女共に理性を抑制し、性衝動を爆発的に解放させる。
 特に女性には感覚の増大と、脳下垂体に働きかけ、ある種のホルモンを分泌させた。
 その結果、視覚情報ですら体内に快感として、感じられ絶頂を感じさせている。
 つまり、この時点で女性達は全て、数度の絶頂を迎えていたのだ。

 へたり込んでいた女性スタッフに、側にいた参列者が手を貸そうと、身体に触れた時
「ひゃう〜〜〜ん」
 鼻に掛かった声を上げ、全身を痙攣させる。
 男は一瞬驚いたが、直ぐに女性スタッフが絶頂を迎えた事に気付き、のし掛かった。
 この時には、女性側から隣の男性に手を差し出す者も出始め、告別式の会場では、大乱交が始まる。
 その光景は、狂乱だった。
 娘が父にのし掛かり、母が息子に貫かれる。
 見知らぬ男に犯される妻を見ながら、自分は別の女を抱く。
 まだ、小学生の女の子が、身ぐるみを剥がされ、初めての肉欲に沈み。
 老女が孫のチ○ポに舌を這わせる。
 スタッフを入れ140人程の人間が、老若男女問わず全裸に成り、激しく絡み合って快楽を貪る。

 孝司は自分の親類、友人、取引先が絡み合う様を見て、涙を流し[止めろ]と懇願した。
 動かぬ身体が、口惜しくて堪らない。
 目の前で起こる狂乱は、孝司の悲嘆を聞いても一向に止むどころか、どんどんエスカレートして行く。
 一人息子の告別式。
 厳粛な葬儀の席で、破廉恥極まりない大乱交が行われ、その引き金を引いたのは他ならぬ、最愛の妻と娘である。
 しかも、その妻と娘は変わり果てた姿となり、同衾どころか、近親相姦を行っていた。
 それも、SMと言う、異常な行為でだ。
 孝司の頭の中は、パニックを起こし、最早冷静な判断など付いていない。
 自分の口から漏れる、悲痛な声すら孝司の耳には届いていなかった。

 告別式会場内の男女比率は、6:4〜7:3ぐらいで、男の参列者の方が多い。
 そのため、女性1人にほぼ2人の男性が群がっている。
 男性達は、オ○ンコを貫き、アナルを抉り、口腔を蹂躙した。
 だが、多くの女性達は、男性の行動を受け入れ、身体を激しくくねらせ、快感を自ら得ている。
 しかし、そんな中、未成熟な少年少女は、泣き叫びながら獣と化した大人達に、嬲られた。
「ほほほっ、どう? 最高の画(え)でしょ…。強力な媚薬をベースに、興奮剤、抗うつ剤をブレンドしたの…。こいつらは、この香りが消えて身体から効能が消えるまで、嵌め狂うのよ…。しかも、絶対にいま感じてる快感も、状況も、行為も忘れる事は無い…。一生の思い出になるわよ…ほ〜ほほほっ」
 小夜子は矢口の横で、冷酷な目線を会場に向け、楽しくて堪らないと言う風情で笑う。
 葛西家を陥れた筈の矢口は、小夜子の常軌を逸したやり方に、流石に閉口していたが、自分より遙かに上位にいる小夜子に何一つ言える筈も無かった。

 告別式の会場は、異様な雰囲気と騒がしさに包まれている。
 絡み合った男女の喘ぎや水音が響く中、参列者が座っていた椅子が、ガチャガチャと音を立てて、端に追いやられて行く。
 中央に出来た空間で、妖しく裸身をくねらせる妻と娘。
 その姿は、最早人間では無かった。
 2人が口にしたように、SEXのための人形。
 快楽を得る為の道具その物だった。

 毬恵はクリチ○ポで、正面から孝司の弟の嫁を貫き、身体を捻りながら弟の長女のアナルに舌を差し込んで、オ○ンコを叔父に使われながら、アナルを取引先の部長に与え、尾チ○ポで近所の奥さんのオ○ンコを掻き混ぜ喘がせている。
 晶子は、仰向けに寝ころんだ取引先の社長の上に被さり、尿道で社長を受け入れ、横臥位で繋がった坊主のチ○ポをオ○ンコで咥え込み、アナルを叔父に蹂躙され、尾チ○ポで成人式を迎えたばかりの姪を可愛がり、舌で中学生の姪のオ○ンコに快楽を教えていた。
 異常な光景である。
 淫らな夢でも、ここまで淫猥な光景を見る事は出来ない。

 それが、現実に繰り広げられ、あまつさえそれの中心にいるのは、貞淑だと思っていた妻であり、まだ子供だと信じて疑わなかった娘なのだ。
 その悪夢のような光景は、果てた者から入れ替わり立ち替わりして、延々と続けられる。
 毬恵と晶子は、あっと言う間に精液と愛液と小便まみれに成り、ドロドロの粘液を身に纏っていた。
 だが、その粘液にまみれながら、尚も毬恵と晶子は男女問わず受け入れて行く。
 孝司の悲鳴のような制止の声は、いつしか悲嘆の嗚咽に変わっていった。
 だが、その嗚咽はまだ止まる事を許されない。
 何故なら、この薬の効き目はたっぷり12時間続くからだった。
 孝司はその間、嫌という程の絶望を味あわされる事になる。

◆◆◆◆◆

 一也はKO.堂のレジに座り、渋面を作って黙考していた。
 その理由は、葛西家で動きが有ったからだ。
 情報統制を敷き、啓一死亡の情報が昌聖に漏れないよう指示しているが、大学関係から昌聖がその情報を知るのは、時間の問題だった。
「馬鹿な事を考えなきゃ良いがな…」
 一也が独り言のように呟くと、一也の携帯電話が軽快なポップスを奏でる。
 一也は直ぐに相手を確認すると、その相手の名前を見て少し驚き
「何じゃ? どういう風の吹き回しじゃ?」
 携帯電話を耳に当て問い掛けた。

 携帯電話の相手は、暫しの沈黙の後
『一さん…。外で会えますか…?』
 低く渋い声で一也に問い掛ける。
「お前さんの頼みなら、無下には断れん…。[香奈]で良いかい?」
 一也が軽い調子で問い直すと
『ええ、そう言われるだろうと思いまして、実はもう店の前です…』
 男が一也に答えた。
「おう、なら先に入って待っててくれ。儂も直ぐに出向くわい」
 一也は男に伝え、携帯電話を切り店じまいを始める。

 電話を切って20分程で、一也は約束の店の前に立った。
 暖簾を潜り店の引き戸を開けると、カウンターに客が5人程座って、楽しそうに酒を酌み交わしている。
 カウンターの中には、30代後半と30代前半の和服に割烹着を着た女性が、酔客の相手をしていた。
 どちらの女性も華が有り、艶を醸し出している。
 だが、どちらの女性も上品で、しっとりとした大人の雰囲気を身に纏っていた。
 それが美貌と相まって、とてつもない色気を滲ませている。

 引き戸の開いた音に気付いた、30代後半の美女が
「あっ、いらっしゃいませ。お連れ様が、奥でお待ちに成っております」
 折り目正しく頭を下げて、一也に告げると
「ああ、邪魔するよ…。儂はいつものヤツじゃ」
 女性に告げて、奥に進む。
「あっ、はい。既に奥に準備してます」
 30代後半の女性が、満面の笑みで答えると
「おう、爺さん久しぶりだな。爺さんが来ると、ママも桜ちゃんも機嫌が悪くなるんだぜ。何かしたのかよ」
 常連の中年男性が、あからさまに嫌そうな顔をして、一也に絡む。
「さぁ、とんと身に覚えはないが、儂の店のせいかのぉ」
 一也が軽くいなすと
「違ぇ無ぇ! エロ道具屋のエロ爺だ。嫌がられて当然だわな!」
 大きな声で、一也に告げて、豪快に笑い飛ばす。

 するとその瞬間、2人の女性の視線がスッとカウンターの中に落ち、鋭い物に変わる。
 一也はニコニコと笑いながら、軽く2人に手を翳し
「そうじゃのぉ。このお二人には、儂の作る物など無縁な物じゃからな」
 中年男の無礼な言葉を笑い返して、奥の座敷に向かう。
 一也が奥の座敷に消えた瞬間、中年男が
「けっ、エロ爺が常連面しやがって」
 吐き捨てるように呟き、一息にジョッキを空ける。
 この中年男性は、この後2人の女性にこれ以上ない冷遇を与えられ、二度とこの店に足を踏み入れられなくなってしまう。
 それは、店の名前と[桜]と言う、もう片方の名前から、簡単に憶測できることだった。

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