狂牙
MIN:作

■ 第6章 狂った牙6

 天童寺は、そんな良顕を横目で見て、笑いを噛み殺しながら
「このゲームの片が付いたら、お前はもうプレーヤーじゃない。儂の奴隷だ。儂に逆らう事は元より、一切の自由は無いと思え」
 良顕に告げると、グラスを傾けブランデーを飲み込む。
 天童寺の話を聞き、良顕の仏頂面が更に強くなった。
 2人の視線が、メインモニターに向くとメインモニターでは、孝司が火葬場を出る所だった。
(仕方ねぇ…。後は、こいつの中から食い破るしかねぇか…。だが、こいつの事だ、そんな隙など見せはしないだろうな…)
 サブモニターでは、美由紀を回収した小夜子が
『もう、手も足も出ない状態かしら? 何か秘策でも、思いつけば良いわね〜』
 良顕に楽しそうに嫌みを告げる。

 良顕が小夜子の言葉を鼻で笑うと、小夜子が携帯電話を操作し、天童寺の電話が鳴る。
 メイド奴隷が天童寺に電話を差し出すと
『ご主人様、小夜子です。今から、お土産を持ってそちらに戻って宜しいでしょうか?』
 天童寺に問い掛けた。
 天童寺は、小夜子の言葉に訝しそうな表情を浮かべ
「何を言ってる? まだ、結末は決まって居らん。お前が戻れば、ブラインドの関係上、二度とお前はゲームに戻れんぞ…」
 戸惑った声で、小夜子に告げる。
 しかし、直ぐに有る事に気付き
「戻る必要が有ると言う事だな?」
 問い直すと、小夜子の言葉の前に、[ピンポロン]といつもの間抜けな警告音が鳴り
『この会話は、ブラインドにより遮断させて頂きます』
 女の声が、2人の電話から鳴り響いた。

 モニターの小夜子と天童寺が、同時に舌打ちをする。
「兎に角、ケリが付くまでは待機しろ」
 天童寺が小夜子に命じると、小夜子はモニターの中で、ジッと携帯電話を見詰め
『解りました』
 静かに答え、通話を切った。
 この時、小夜子は天童寺が、良顕を屋敷に招いている事を知らない。
 天童寺もリアルタイムの情報を手に入れている事を、ルール上告げる事は出来なかった。
 だが、その後の小夜子の焦った表情で、天童寺は小夜子の身に重要な事態が起きている事を推察する。

 天童寺はメイド奴隷に
「回線を繋げ、[パブリック]の申請だ」
 低い声で命じる。
 横に座る良顕の眉が、ピクリと跳ね上がると
『[パブリック]の申請番号をお伝え下さい』
 リビングに、いつもの女の声が響く。
 天童寺は、モニターに映る[ブラインド]データーの番号を見詰め
「小夜子の情報で[ブラインド]が掛かったのは、確か晶子が帰って来た辺りか…。それに美沙の情報は、68番までフォローしていた。72番は近所の男が、毬恵に脅しを掛けたデーターだったから、必然それ以前…。確率は、1/3…、真ん中を引いてみるか…。[パブリック]の申請は、70番だ」
 冷静に情報を分析しながら、番号を告げる。

 天童寺の申請に、本部が了承すると、[ピンポロン]とチャイムが鳴り
『天童寺様より[パブリック]の申請が御座いました』
 同じ女が良顕に告げた。
「申請ナンバーは…」
 良顕はウンザリしたような顔で、決められた問い掛けを行う。
『[ブラインド]No70。1件です』
 女は良顕が既に知っている番号を口にする。
「再[ブラインド]はしない、開示させろ」
 良顕がニヤリと笑って女に告げると、天童寺が鼻で笑いダミー映像を目にした。

 ダミー映像を見た天童寺は、直ぐにニヤリと笑うと
「今ので、解ったぞ。突発的に起こった事態だから、それを隠す為のダミーだな。となると、69番が当たりだ」
 天童寺は、冷静な分析で小夜子のブラインドデーターを引き当てた。
 モニター上に映し出された、天童寺サイドのカウンターが、跳ね上がる。
 ベット額408,821プール額2,450,322は、天童寺の資産の1/3を越えた。
 だが、天童寺はその数字よりも、その映像に顔を曇らせる。
「直ぐに本部に連絡だ!」
 天童寺は奴隷メイドに、急がせると
「工作員の撤収要請だ! 現在の工作員は、[ゲーム]から引き上げる!」
 本部に連絡を入れ、小夜子の回収を申請した。

 天童寺は直ぐに、電話を要求すると小夜子に連絡し
「[ブラインド]は解いた。投与限界の拒絶反応が出てたのか? 早く、帰って来い!」
 小夜子に命じる。
『はい、ご主人様! 有り難うございます』
 小夜子は天童寺に感謝し、貨物車を降りた。
 小夜子が貨物車の荷台から降りると、そこはどこかのビルの地下駐車場のようだったが、映像はそこで切れる。
 小夜子が[ゲーム]から離れた為、追尾カメラが付く事が出来なくなったのだ。
 サブモニターがブラックアウトすると、直ぐにウインドーも閉じ、メインモニターのみと成った。

◆◆◆◆◆

 小夜子が貨物車の荷台から降りると、作業服を着た運転手と助手が貨物車の荷台に入る。
 運転手が、小夜子のスーツケースを2つ運び出し荷台を降りると、その背後からゴロゴロと車輪の音が響く。
 助手の男は、大きな獣用の檻を押しながら、その中に目を奪われていた。
 檻の中には、男が始めて見る生き物が、絡み合っていたのだ。
 白い肌を淫猥に絡み合わせ、底板のプラスティックの上に、透明な汁をまき散らし甘い鳴き声を上げる生き物。
 その生き物の呼び名は、[ママ]と[アキ]だった。
 そして、真ん中で悶えているのは、[肉鞘]と呼び名を変えられた、美由紀だった。

 檻の中で美由紀は進行方向に頭を向け、右側に[アキ]左側に[ママ]が絡み付いている。
[アキ]は顔を美由紀の頭側、[ママ]は顔を下半身に向けて、両側から美由紀を使っていた。
[アキ]のクリチ○ポは、美由紀の尿道に納められ、尾チ○ポがアナルに入り込み、左手で美由紀の乳房を弄んで、舌を[ママ]のオ○ンコ深く差し込み子宮を舐め上げている。
[ママ]は尾チ○ポで美由紀の喉を陵辱し、舌で美由紀のオ○ンコを犯していた。
 美由紀は[ママ]に口を犯されながら、舌でクリチ○ポに奉仕し、右手で[アキ]の乳マ○コ左手で[ママ]の尿道口を刺激し、全身を震わせている。

 その光景は、快楽と呼ぶには、余りにも凄惨すぎた。
 改造された2体のSEXサイボーグに、同時に使われる美由紀は、人が感じられる快感の限界を超えている。
 その証拠に、大きく見開かれた目からは、涙が止まらず瞳孔は拡散し切って、何所も見ていない。
 正気を失った者の視線だった。
 塞がれた喉からは、声一つ漏れず、大きく開いた股間から、ビチャビチャと愛液を振りまき、SEXサイボーグのオモチャとしてのみ、存在する[物]に変わっている。
 ゴロゴロと音を立て運ばれる檻は、ピチャピチャ、ネチョネチョと湿った音と混ざり合い、身の毛もよだつ[性]に満たされていた。

 小夜子が立ち止まると、エレベーターの扉が開き、中に入る。
 大型の資材搬送用エレベーターだった。
 全てを呑み込んだエレベーターは、そのまま屋上のヘリポートに向かう。
 屋上には2基有るヘリポートの真ん中に、CH−53Eが鎮座していた。
 後部ハッチが開き、小夜子達を呑み込むと、直ぐに離陸準備が始まる。
 本来輸送目的に使われる、無骨な軍用機だが、改造された機体の中は、防音材がふんだんに使われ、ヘリとしては破格の静音性を実現していた。
 ローターの風邪切り音が、PCファン程にしか聞こえてこない。
 勿論、内装にも凝っており、まるで移動するリビングのような作りだった。

 小夜子は備え付けのソファーに座ると、直ぐにPCの電源を入れ、現在の[ゲーム]状況を把握する。
「あら、ご主人様…、結構使ったのね…。まぁ、あの僕が頑張ったって証拠なんでしょうけど、これだけ資産に差があったら、この[ゲーム]には勝てないわよ」
 小夜子はニンマリと笑う。
 その時パイロットから
『発信準備完了しました。これより、通常無線帯の交信は不可能に成ります』
 機内放送で通知される。
 小夜子はいつもの事と頷きながら、PCの電源を落とした。

 外部との交信も途絶えた小夜子が、固定された檻を見詰め
「さて、後2時間…。何して遊ぼうか…」
 ボソリと呟くと、暫く考え込みながら
「そうね…、調整槽に入ったら2週間は出てこれない…。その間に、この子は気が狂うかもね…。それも、勿体無い話しだし、今の内に調整しちゃおうか…」
 ニヤリと笑って、結論を出した。
 小夜子は立ち上がると、ポケットの中から赤い錠剤を取り出し
「ほ〜ら、出ておいで〜…」
 酷薄な笑顔を向けて、美由紀を呼び出す。

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