狂牙
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■ 第6章 狂った牙18

 アリスはすかさず
「それでは奴隷では無く、ガードマンですわ。やはり、女として女を使われないと、奴隷としては失格です」
 良顕に告げると、良顕は困ったような顔で
「だが、意に沿わない相手に、身体を強要する気には成らん。俺は、そう言う扱いは好きじゃない。だから、俺はお前達にそう言う事をしてない」
 アリスに答える。
「あら、私はご主人様に心から従い、全てを投げ出しますわ。勿論この身体全てを使って、ご奉仕の機会を待っております」
 アリスはたわわな乳房を両掌で持ち上げ、腰をくねらせて良顕に熱い眼差しを向けた。
 すると、魔夜と魅夜も良顕に擦り寄り
「わ、私も、お使い下さい。まだ、未熟ですが技術も覚えています!」
「私も習いました。ですから、お願いします奴隷として扱って下さい!」
 泣きそうな顔で懇願する。

 良顕は2人の表情と言葉に驚きを覚え
「お、おい…。俺は、そんなつもりで…」
 2人に呟き掛けたが、言葉を呑み込み微笑むと、スッと2人の顎に指を当て、顔を上げさせ
「ここは、人の家だ。帰ってからユックリ話をしよう」
 唇に口吻をした。
 魔夜と魅夜の頬が真っ赤に染まり、目が驚きで見開かれる。
(あらあら、可愛いたらありゃしない…。キリングドールズが、女になちゃたわね〜…)
 アリスは2人の反応を見てクスクスと笑った。

 そんな会話の中、扉が開き一也が戻ってくると
「会うそうじゃ…。どう考えてるか知らんが、住職の事でもショックを受けとる。あまり、刺激はせんようにな…」
 一也が静かに告げると、良顕は大きく頷きながら
「解っているつもりです。ですが、最終的には、葛西さんの判断に任せるつもりです」
 良顕は思い詰めた表情で、一也に答えた。
 一也は少し顔をしかめて、良顕達を伴い孝司の部屋に向かう。
 孝司の部屋は、道場を出て3っつめの扉だった。
 一也がノックし扉を開けると、そこに孝司が佇んでいた。

 孝司は疲れ切った表情で現れ、一気に老け込んでいた。
 50歳の孝司だが、60歳を越えていると言っても納得してしまいそうな、老け方だった。
「2度外に出ただけで、後は籠もりっぱなしじゃった…」
 一也が心配そうに誰に問い掛けるでもなく呟くと
「取り敢えず、会って貰うしかないです」
 良顕は自分に言い聞かせるように呟き、毬恵達を部屋の中に入れた。

 孝司が顔を上げ毬恵と晶子に気付き、拘束された毬恵を見て
「な、何でこんな事を…」
 良顕に問い掛けると
「済みません、これは有る理由で仕方が無いんです…」
 良顕は苦しそうに、孝司に告げる。
 孝司の視線が、毬恵と晶子に注がれマスクを外す。
 すると、毬恵の顔が孝司を見詰め、言葉を吐いた。
「どなたかご存じ有りませんが、私の身体を使って下さいませ。どのような事にもお応えいたします。どの穴も、キッとご満足頂けるよう、誠心誠意ご奉仕させて頂きますので、太い御チ○ポ様をお恵み下さい」
 毬恵がそう言うと
「私もご奉仕させて下さいませ、御チ○ポ様をお与え下さい」
 晶子も身悶えしながら、擦り寄った。

 孝司の顔が引きつり、ワナワナと震えると
「な、何を言ってるんだ…お前達…。俺が解らないのか…」
 ボソボソと呻くような声で、毬恵達に問い掛ける。
「葛西さん。2人は、薬で記憶を消されてしまったんです…」
 良顕が孝司に告げると
「そんな…。それじゃ、2人は俺の事はもう解らないのか…、今までの思い出も、何もかも無くなったと言うのか?」
 泣きそうな顔で、良顕に問い掛け
「毬恵! 晶子! 本当に、父さんが解らないのか…?」
 毬恵と晶子に縋り付くように、語り掛けた。

 だが、毬恵と晶子はキョトンとした表情で孝司を見詰め
「[マリエ][アキコ]と言うのは、何ですか?」
「[トウサン]って、何ですか?」
 問い返す。
 孝司の顔が愕然として、項垂れる。
「葛西さん…、記憶はこれから植え付ければ、また認知します。ですから、気をしっかりと持って下さい。この2人とまた暮らして下さい」
 良顕が必死な顔で、孝司に依頼した。

 だが、孝司は項垂れたまま突然笑い始める。
「くくくくっ…。ははははっ…。わははははっ…」
 孝司の笑いは、何所か常軌を逸したような声に変わり、顔を上げ天を仰いで笑い続けた。
 良顕が訝しそうに顔を覗き込むと、葛西は涙を流しながら、乾いた笑いを上げる。
 その顔が、スッと良顕に向くと
「解った。俺が引き取ろう…。以前のように、記憶を戻してくれ…。だが、その前に少し3人だけにしてくれ…」
 孝司は疲れ切った顔を歪め、険のある表情で良顕に告げた。
 良顕はその表情に一抹の不安を感じながらも、頷いて毬恵と晶子の拘束を外し、孝司に従わせる。
 毬恵と晶子は使って貰えると思い、孝司に身体をすり寄せ従う。
 孝司は何か思い詰めた表情で、2人を見下ろす。
 良顕と一也はお互い頷き会うと、踵を返して扉に向かった。

 扉を出ると良顕がボソリと呟くように
「少し気に成ります…、ここで待機しても良いですか?」
 良顕が一也に告げると
「儂も、あの目は気に成った…。ここで待つか…」
 一也も頷きながら足を止める。
 2人がお互いに頷き合うと、中から[パーン]と乾いた破裂音がした。
 その瞬間、良顕の身体が反応し扉を押し開ける。
 部屋の中には、扉を向いて孝司が立ち、手に黒光りする金属を持っていた。
 薄く先端の穴から煙が立ち上り、鉄の塊が飛び出した事を物語っている。
 足元には扉の方に頭を向け、毬恵が仰向けに横たわっていた。
 両目を開けた美しい顔の額に、黒い穴が1つ開いている。
 毬恵の頭の下には血の染みがドンドン大きく成り、広がっていた。

 良顕達に気付いた孝司は、右手を晶子の頭に向ける。
 良顕は咄嗟に晶子の身体を抱きしめ、床に転がると2発目の乾いた破裂音がした。
 間一髪で、晶子は頭を打ち抜かれる事は避けられた。
 孝司が更に銃口を晶子に向けようとすると、その間に良顕が身体を滑り込ませ、晶子を庇う。
「どけ!」
 孝司が鋭い声で、良顕に怒鳴ると
「何を考えてる!」
 良顕は身体に力を溜ながら、飛びつく準備をする。
「終わりだ…。俺の妻と娘はもう死んだ…。ここに居るのは、妻と娘の形をした、別の生き物だ…。俺は、全部無くした…何もかも…何もかもだ…。はははははっ…」
 孝司はそう言いながら、一歩後ずさって銃を良顕に向けた。

 良顕は呼吸を計りながら、孝司に飛びかかろうとすると
「来るな!」
 銃口を自分に向け、良顕に怒鳴った。
「葛西さん!」
 良顕は、必死な声で孝司に声を掛けるが
「もう、俺は疲れた…」
 孝司は、ボソリと呟いて銃口を咥え、引き金を引いた。
 3発目の銃声が響き渡り、孝司は物言わぬ肉塊に変わる。

 一也は、この結末を痛ましげに見詰め
「こんな物を隠し持っとるとはな…。外出したのは、銃の為か…。抜かったわい…」
 重い声で、ボソリと呟いた。
 良顕は晶子に視線を向けると、晶子は血を流し倒れている毬恵を不思議そうに見詰めている。
 良顕の視線に気付いた晶子は、良顕に向き直り
「[ママ]は動かなく成りました。壊れたんですか?」
 不思議そうな顔で、問い掛けて来た。
「ああ…。もう、動かない…。今日から俺がご主人様だ…」
 良顕は、苦痛に耐えるような視線を晶子に向け、ボソボソと呟く。
「はいご主人様。何なりとご命令下さい」
 晶子は華やかな微笑みを浮かべ、良顕の前にひれ伏し、隷属を承知した。
 こうして晶子は良顕の元で、その生涯を終えるまで奴隷として、飼われる事になる。

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