狂牙
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■ 第6章 狂った牙22

 カメラは女性の右側面からその姿を映し出し、乳房のアップから右斜め後ろを回って、お尻オ○ンコへと移動している。
 その意図に良顕が気付き、握り込んだ手が白くなる程力を入れた。
 食い入るように見詰める良顕の目に、映像はその女性の右の内股を晒す。
[えっ! 嘘!][そんな!][なんて事を!]映像を見詰める、乙葉立ちの口から一斉に声が上がる。
『どうです? 中々、凝った作りでしょ? これは、この半年人の食べ物飲み物は、一切与えていません。これが、口に出来るのは家畜の糞尿だけです。まぁ、お陰でこんな痩せこけましたがね…。元は、中々の美人でしたが、今はほら、こんな風に成りました』
 徳田がそう言いながら、女性の顔を下から持ち上げ、カメラに映し出す。
「秋美…」
 良顕がボソリと呟いた名前は、半年前に殺された筈の秋美だった。

 だが、その顔は痩せ劣り半年前の美貌は、見る影も無かった。
 長い黒髪は千々に乱れ、艶一つ無く白髪まで交ざり、長さも不揃いだ。
 秋美の上瞼は、下瞼に縫い止められ、開く事が出来なく成っている。
 落ちくぼんだ眼窩の奥の眼球が動いて居らず、その機能を無くしているのが解った。
 頬も肉が落ち、頭蓋骨の形が解る程で、唇は潤いなどとうに無くし、カサカサにひび割れて瘡蓋(かさぶた)に覆われている。
 喉が渇いているのか、軽く開いた口から舌を出しているが、その舌は赤く晴れ上がり、表面には無数の傷が縦横無尽に走っていた。
 喉の奥から[こひゅ〜、こひゅ〜]と掠れた呼吸音が漏れており、声帯か喉にダメージを受けている事も、解った。
 徳田が秋美の顔を乱暴に押しやると、それだけの動きで、秋美はフラフラと蹌踉け、ジャラジャラと鎖を成らす。

 秋美が空中を探るように鼻で息を吸うと、秋美はフラフラと涼子達の元に這い進み、涼子達の汚れた身体を舐め始める。
[ペチャペチャ、ズズズ〜]と舌を這わせ、水気を吸い取り喉を鳴らして、ウットリとした表情を見せた。
 秋美は涼子達の身体を舐め終えると、直ぐに床に這いつくばって、床に広がる水気を貪る。
 舌を押しつけ、唇で吸い上げる秋美の姿は、それで命を繋ぎ止めている事を如実に語り、鬼気迫る物があった。
 一心不乱に床を舐める秋美の身体が、ピタリと止まり顔を上げて、空中の匂いをかぎ取り始め、直ぐに身体を回して、徳田の元に急ぐ。
 ジャラジャラと鳴る鎖の音が、先程よりも忙しなくなり、よほど焦っているのが解る。
 徳田の元に付いた秋美は、直ぐに身体を回して、背中を思い切り反らせて、お尻を突き出し徳田の足元で、動きを止めた。
 徳田の目の前には、秋美の剥き出しの直腸と子宮が差し出される。
 徳田の手には、紫煙を上げる煙草が持たれていた。
 無造作に手を刺しだした徳田は、秋美のアナルの縁を火の点いた煙草で[トン]と叩き、直腸内に灰を落とす。
[ジッ]と肉の焼ける音がしても、秋美は微動だにせず堪えている。

 煙草を何度か燻らせ、灰を落とした徳田は、短く成った煙草をアナルに近づけたが、直ぐにその方向を変え子宮口の中に投げ捨てた。
 秋美は子宮で煙草を受け取ると、苦しそうに顔を歪めながら、激しくお尻を揺さぶる。
 子宮壁に煙草の吸い殻をぶつけ、火を消す為だった。
 動きを少しでも鈍らせれば、煙草の吸い殻は子宮内の1カ所に留まり、酷い火傷になって苦しむ事を学んだ行動だ。
 だが、激しく腰を振れば振る程、秋美の身体に付けられた鎖が、肉を引き、皮を伸ばす。
 子宮内の激痛と表皮の激痛に堪えながら、秋美は悲しい尻振りダンスを続けた。

 徳田は秋美の尻振りダンスには目もくれず、視線を上げると
『どうです? この3点セットをお譲りしますので、私に対する[ゲーム]の申し込みは、一切しないと約束してくれませんか? まぁ、お断りに成るなら、私も身の振り方を考えなければ、成りません。どうです? 悪い取引では無いでしょう…』
 余裕の笑みで、良顕に問い掛ける。
 徳田は良顕が断れないのを知っていて、馬鹿丁寧な態度を取りながら嘲う。
 良顕が怒りを噛み殺しながら、返事をしかけると
「良ちゃん…、あの映像…変よ…。半年前から段階的にあの重りを付けたら、もっと伸び切ってる…。ううん、ハッキリ言って千切れてるわ…。アレは、まだ良い所3ヶ月ぐらいよ…。顔は、弄った形跡が見えないから、本人では有ると思うんだけど…」
 晃が良顕にソッと耳打ちすると
「ご主人様…映像も妙です…。時折入るノイズが、妙に意図を感じます…」
 アリスがマイクに入らぬ小声で囁く。

 2人の言葉に、良顕が落ち着きを取り戻すと
「ご主人様…、この半年徳田は、その姿を直接人の目に晒していません。組織の会合にも、出席は映像でした…」
 乙葉がインカムで良顕に報告する。
 良顕の頭の中で、様々な情報が精査され有る答えが導き出された。
(胡散臭いが…、人質はあいつが握ってる。ここは、話に乗って出方を見るか…)
 良顕は腹を決めると
「良いだろう。お前の出した条件を呑もう」
 徳田に答える。
『これはこれは、お早いご決断ですな? 私など眼中に無いご様子。でわ、契約は私どもの事務所で…。この贈り物達は、丁重に梱包致しますね…』
 徳田がニヤリと笑って、告げると
「要らん事はしなくて良い。今この瞬間から、その3人は俺の所有物だ。お前は一切手を出すな!」
 良顕は鋭い声で、徳田に怒鳴った。
 すると、アリスの指摘する通り、一瞬ノイズが走り徳田が話し始める。
『解りました、私は手を出しません。お早いお引き渡しをお望みのようなので、今日の21時に私の事務所にお顔を出して下さい。お越しの際は、何卒最小限の人間…そうですな、3名程でお越し下さい』
 徳田は一方的に言う事を伝え終えると、通話を切った。

 モニターがブラックアウトすると、良顕は身体の中に溜まった緊張を解き、大きな溜息を吐く。
「ご主人様、21時まではまだ、10時間以上有ります。これは、何か怪しい感じがします」
 アリスが進み出て、頭を下げながら良顕に注進すると
「ん? ああ、解ってる。こんな物、罠以外の何物でもない。だが、何を考えているにせよ、あいつが涼子と香織、それに秋美の身柄を抑えている事には変わり無い。まぁ、俺としては強硬手段を取ってくれた方が有り難い。そうすれば、心おきなく奴を叩き潰せる」
 良顕は惚けた声で、アリスに答える。
 だが、良顕の雰囲気は、言葉を重ねるごとにその圧力を増し、最後は猛り狂った獣のような威圧感を発していた。
 アリスの性癖がその圧力に反応し、顔を蕩けさせウットリとした表情で良顕の横顔を見詰め、腰が砕けかける。
 しかし、直ぐに自分を取り戻すと、ペコリと頭を下げてコントロールルームを出て行った。

 良顕は、それを横目で見ながら
「晃、今日の会見に同行してくれ」
 晃に声を掛けると
「へっ、私?」
 晃は、素っ頓狂な声を上げ、自分の顔を指差す。
 良顕の依頼は、晃ばかりでは無く、コントロールルームに居る全員を驚かせた。
 それ程、良顕の依頼は意外だったのだ。

 だが、良顕の次の言葉で、全員が納得する。
「ああ、徳田の事だ、また改造したダミーを用意してるだろう…。情けないが、俺にはそれを見破る自信が無い。ここは、お前に頼るしか無いんだ」
 良顕が理由を告げると、晃は戸惑いの表情を驚きに変え、大きく口を開いたまま
「り、良ちゃん…。う、嬉しい…私…もう、死んでも良い…」
 身体を震わせ、呟いた。

 良顕はが顔を魔夜に向け、口を開き掛けると
「私もご同行して宜しいでしょうか」
 由木が音も無く現れ、落ち着いた声で問い掛けて来た。
 良顕は、視線だけを向け
「珍しいな…、あなたが、そんな事を言って来るなんて。だが、今回はプライベートの会見だ、組織の立ち会いは必要無いでしょう」
 良顕は、薄く笑いながら由木に告げる。
「はい、存じ上げて御座います。ですから、こうしてお願いに参った次第で御座います。今回は、純粋に一個人として、ご同行させて頂きたいのです」
 由木は、全てを了承しながら頭を下げ依頼した。
「あなたに頭を下げられて、俺に断れる筈も無い。良いでしょう、同行して下さい」
 良顕は、由木の意図を図りかねたが、同行を承諾する。

 良顕は、後ろを振り返り魔夜と魅夜に視線を向けると
「と言う事だ。おまえ達は、車でスタンバイしてくれ」
 二人に指示した。
「はい、ご主人様。仰せのままに」
 二人は、内心不満を抱きながらも、従順に指示を受け入れる。
 こうして、徳田との会見参加者が決まり、決戦準備が始まる。

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