狂牙
MIN:作

■ 第7章 それぞれの未来(さき)3

 良顕が涼子達の寝室に入る。
 涼子は、青白い顔で荒い息を吐きながら、眠っていたが、香織は目を覚ましていた。
「あっ、お兄ちゃん…」
 香織は暗い目で良顕を見、直ぐに視線をそらせて
「何で…、何で、殺してくれなかったの…」
 ボソリと呟く。
「殺す? 徳田は、死んだ。全一も直に公開処刑される。お前を苛んだ奴は、みんな死んだ…」
 良顕が答えると
「違うわ! 私よ! 私を殺して欲しかったの! こんな身体で、あんな事をされ続けて…。生きていたくなんか無いわ…」
 香織は良顕に捲し立てると、涙を流しながら懇願する。
 良顕は、グッと下唇を噛み俯いてしまった。

 涙を流す香織は、スッと視線を涼子に向け
「お義姉ちゃんもそう…。ううん…、お姉ちゃんの方が酷いかも知れない…。二度と外を歩けない身体にされて…。何百人もの人達に…、全身に傷を負うなんて、日常茶飯事だった…。あんな思いをして、それでも感じてしまう身体にされたのよ! 可哀想なお義姉ちゃん…」
 香織は、過酷な陵辱生活を思い出し、良顕に訴える。
「済まん…」
 良顕は香織に謝罪するが、顔を上げる事は出来なかった。
「ううん…、良いのよ…。お兄ちゃんのせいじゃないって解ってる。徳田が…お義姉ちゃんに楽しそうに言ってたもん…。だから、優葉ちゃんも恨んで無い…。ううん、話を全部聞いて、優葉ちゃんも被害者だって知ったし…逆に、同情しちゃう…。でも、でもねお兄ちゃん…。それで、私達の何が救われるの? もう嫌なの…。殺して欲しい…、生きていたくないの…。うくぅ…はぁ、はぁ…あっ、あはぁ〜ん…。い、いや…また、また来た…わ…。お願い…お兄ちゃん…見ない…で…」
 香織は荒い息を吐きながら、良顕に見るなと懇願する。

 良顕は、香織の声の変化に驚き、足を踏み出そうとするが
「ご主人様…、今はお控え下さい、お願いします。私が…私が治しますから…」
 優葉が奥の部屋から慌てて飛び出し、悲痛な声で良顕に懇願した。
 良顕は戸惑ったが、優葉の余りに悲痛な声に、何も言い返せず頷くと、優葉が香織の身体をシーツごと抱き上げ
「香織様、あちらのお部屋で…。今楽に致しますから…」
 優しい声で語り掛けながら、部屋を出て行く。
 香織の身体に何が起こったか、良顕は直ぐに理解した。
「あはぁ〜〜〜ん。お、お願い〜オ○ンコかき回して〜ぇ…。アナルも〜オシッコの穴にも頂戴〜あん、あは〜〜〜っ…」
 香織達が部屋を出る時には、その声は隠しようもない程、ハッキリと快感を求めていた。
「はい…、解りました。直ぐに、気持ち良くして差し上げますからね…。もう少しです…ほら…」
 ドアが閉まりきる前、優葉の優しい声が香織に答え、合図を呟くと
「あきゅぅ〜〜〜ん、もっと! もっと入れて〜〜っ、全部〜3っつとも全部して〜〜〜っ…」
 香織の官能の声が、寝室に漏れてきた。
 閉じたドア越しに小さく響く香織の嬌声を聞きながら、良顕は拳を強く握りしめブルブルと肩を震わせる。

 震える良顕の手に、ソッと涼子の手が重ねられた。
 良顕がそれに気付き振り返ると、涼子が目を開け悲しげな表情で良顕を見上げていた。
「涼子…。大丈夫か…」
 良顕が膝を突いて、涼子の枕元に跪くと
「大丈夫じゃないわよ…」
 か細い声で、良顕に笑いながら告げる。
 その雰囲気、その笑顔、その仕草は、良顕が愛した女性のままだったが、その姿は悪夢のようにズレていた。
 完全に形が変わる物より、その面影をキッチリと残しながら、姿を歪められた涼子は良顕の心をささくれさせる。
「涼…子…」
 良顕が苦しそうな声で名を呼ぶが、涼子はフッと明るく笑い
「馬鹿ね…嘘よ…。ほら、そんな顔しないで…」
 良顕を優しく気遣う。

 涼子の装飾品は、全て取り払われていたが鼻環が取り付けられていた為、小鼻は外に広がり鼻中隔が垂れ下がっている。
 その為、全体のバランスが崩れ、どこか滑稽に成っていた。
 視線に気付いた涼子が、慌てて鼻を押さえるが、右手はギブスで固められ、まともに動かす事は出来ない。
 それどころか、身体を動かすたびに軋むような痛みが走り、顔を歪めてしまう。
「うくぅ〜〜〜ん…」
 だが、その痛みで涼子は甘い吐息を漏らし、慌てて口を押さえた。
 固まる良顕。
 顔を背ける涼子。
 2人の時間が静止する。

 やがて顔を背けた涼子が、ポツリポツリと話し始めた。
「みっとも無いでしょ…、こんな私…。痛いのに…気持ち良いなんて…。でもね…、自分ではどうしようもないの…、我慢しても…、身体の奥から…ドンドン沸いて来ちゃうの…。4年前それを無理矢理覚えさせられ…この姿にされて…2年間で…全部変えられた…。もう、どんな事されても…全部が…気持ち良いの…。欲しくて…欲しくて堪らなくなるの…、変態なのよ…」
 涼子の告白を良顕は何も言い出せず、ただ聞き入った。
「殺して欲しかった…。ううん…、終わらせて欲しかったわ…。あの日、あなたの手で、私の全てを終わらせて欲しかったの。そうすれば、まだあなたの涼子で終われた…。みっとも無い姿を晒さずに…、あなたの涼子で終われたのに…」
 涼子は、悲しそうに良顕に心の内を明かす。
「な、何を言う。お前はお前だ! 涼子は、どんな風に成っても俺の涼子だ!」
 良顕が必死に告げるが、涼子は薄く笑って顔を左右に振り
「違うわ…。私は、涼子じゃないの…。あなたの知ってる叶涼子は、こんな姿じゃないわ」
 自らシーツを捲り、その姿を晒す。

 白く滑らかな肌は以前のままだが、大きく張り出した乳房は異様だった。
 アンダーバストは更に締められ、60pを切りトップは2mと言ってもうなずける程の大きさだ。
 乳房の先端に乗る乳首は、対比で気付かなかったが、大人の親指2本分は有る。
 そして、ピアスが入っていた為、乳首を貫く空洞が開いており、その直径は3p近い物だった。
 乳首の直ぐ下から、皮膚が襞を構成し付け根に走っている。
 襞は厚く、その中心にピアスホールが開いていた。
 リングピアスで、襞を左右に開く為に付けられた物で、涼子が左手でソッと襞をかき分ける。
 襞の奥には、赤い淫裂が覗いており、何の目的に使用されるか、一目瞭然だった。
「これはね…、このオッパイにされた時に作られたの…。私の膣の細胞が培養されて、オ○ンコと同じように締める仕組みに成ってるの…。右は快感を左は痛みを感じるように作られたんだけど、今はどっちも気持ち良いのよ…」
 涼子の告げる言葉が、鋭い刃のように良顕の心を斬りつける。

 涼子の左手が更に下に下がり、股間に行き着くと
「ほら、見て…。このクリ○リス…こんなの見た事有る…?」
 肥大されたクリ○リスを見せた。
「ここ…こんなに大きく成っちゃって…。重りとか…引っ張られたりして…ほら…今じゃ…こんな風に…」
 そう言いながら、子供のチ○ポ程に成ったクリ○リスに開く穴に、人差し指をねじ込み、引き上げる。
「うくぅ〜〜〜ん…あん…あひぃ…。浅ましいでしょ…。醜いでしょ…。私は、もう…あなたの涼子じゃ無いの…。私は、変態雌牛涼子なの…。男の人のオモチャになるだけしか、存在価値の無い、最低の生き物…。ううん…、物なの…」
 涼子が泣きながら訴えるその息が、荒く早く成って行く。
 それは、苦痛からでは無く、身体の奥底から沸き上がる物に、全身が浸食されているからだ。
「あっ、あっ…。あなた…もう、出て行って…お願い…、見られたく…無い…。あなたに…だけは…嫌…早く…」
 涼子は、迫り来る波に息を荒くし、必死で良顕に懇願すると、隣の部屋から優葉が戻り
「ああっ、涼子様…。今、今すぐ楽にさせて頂きます…。ご主人様…お願い致します。席をお外し下さい…」
 慌ただしく衣服の前を合わせ、髪の毛を直しながら涼子のベッドに近付く。
 良顕は、その悲壮感に唇を噛み締め、頷くと涼子達の寝室を後にする。

 遣り切れない気持ちに満たされながら、良顕が怒りに身を任せていると、良顕の携帯電話が着信を知らせた。
 良顕がポケットから電話を取り出すと、着信は一也の携帯電話だった。
「あっ、もしもし? 良顕です」
 良顕が、通話を繋ぎ直ぐに一也に告げると
『おいおい、随分恩知らずじゃねえか? お前の窮地を救ってやったのに、目が覚めても挨拶の一つも無いなんてよ』
 良顕の携帯電話から、笑いを含んだ低い怒鳴り声が聞こえる。
「あっ、その声は橘さん? まだ、日本に居られたんですか? 宗介から直ぐにでも帰ると、聞いていた物で」
『ああ、今帰ろうとしてた所だ。だが、御老の所に、お前さんトコの女狐から連絡が有ってな、こうして電話したんだ』
「そうですか? 申し訳有りません。私も目覚めて直ぐに妻達の容態を見に行っていたモノで…」
『んっ。ああ、そうか…。その声なら、あんまり芳しく無いな…。だが、直ぐに死ぬって訳でも無いなら、出て来いよ。帰る前に直に会って話がしたい』
 良顕は優駿の申し出に頷き、出向く事にした。
 お互い軽い挨拶をしながら、通話を切ると良顕はコントロールルームに向かう。

 コントロールルームに入ると、アリスは全てを承知した顔で、良顕の外出準備を終えていた。
 その姿を乙葉が不思議そうに、見詰めている。
 アリスは満足そうに乙葉の顔を横目で見て、良顕に頭を下げた。
(こいつ…、そう言う事か。アリスは、俺達の驚く顔を見たいんだ。そして、乙葉の悔しがる顔…。子供の嫌がらせレベルじゃないか…。思考が幼い…。だが、その分危険な気はする…。あの、能力であの思考…まるで、重機関銃を持った小学生みたいな状態だ…)
 その一連の遣り取りで、アリスの性格や行動原理を推察した良顕は、ニヤリと笑うも、秘めた危険性に気付きアリスを手招きすると
「アリス、良いか? これは、重要な事だから良く聞け。俺は、人に踊らされるのは、大嫌いだ。人の思惑に嵌められるのもだ。だが、俺はお前を嫌いに成りたくは無い。だから、俺には正直に言って許可を取ってから行動しろ。俺の許可が取れない緊急時は、仕方が無いがそれ以外は絶対にしてくれ」
 アリスの目を見据えて、ハッキリと分かり易い言葉で説明する。

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