狂喜への贐
非現実:作
■ くたびれた街9
上野が鞄から手帳を取り出すのを横目に目黒は再び考え込んだ。
女を探していると偽りの餌に、田端はそこそこの反応でごく当たり前の内容を聞いてきた。
メモを取らせるという事は、マルタイは女なのかもしれないと目黒は思えてきた。
若干の失望感を抱えつつ嘘を上塗りしてやり過ごす事にした。
「年は25〜6、この街でとあるお水の女が消えた」
「名前は?」
「ちょっと言えないな」
短くなった煙草を灰皿で強く揉み消してニヤリと意味深な笑みを浮かべて田端はケチつけてきた。
「それで風俗案内に張り込みか、その女がトラブルか焦げて風呂に飛ばされたと?」
「まぁ・・・そんな所だ」
「依頼主はその女の親かなんかか?」
「言えないが大体解るだろ?」
今度は勝手に鶏のから揚げをクチャクチャと咀嚼しながら言葉をつないだ。
「この街で働く奴等ならお前の顔利くだろう、直に移った店聞けばいいだろうよ」
「デカ辞めた時点で俺は一般人さ、世間は冷たいもんだよ、でだそっちも女関連か?」
「・・・ ・・・上野」
今まで小馬鹿にしたような笑みはスッと消え、ベテランのやり手刑事の表情になった田端は・・・。
「おまいさんは聞かなかったことにしろ、もしくは暫く席を外せ」
「ぇ・・え、え?」
困惑している上野を蚊帳の外に、田端刑事は口を開いた・・・ ・・・ ・・・。
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