狂喜への贐
非現実:作

■ くたびれた街10

妙に頭が冴えている。
今日は相当調子がいい。
身体も軽いしヤル気も十分だ。
だけど・・・なにの・・・
今日に限って手持ちぶたさなのだ。
軽く舌打ちをして下半身のソレに一瞥くれる。
ソレは天井に向かってそそり立ち、今か今かと結合の瞬間を欲していた。
無意識にビクンビクンと動き、肉柱は透明の液が滴り落ちる。
相変らず手足は動かない。
だが彼の肉棒は絶好調と言わんばかりに蠢く。
何で今日に限ってこんなに調子がいいのだろうか。
今日ならば、何度でも何回でもデキそうなのに。
だが・・・かのお相手は姿を見せない。
隣の部屋からは時折聞こえる艶めかしい淫靡な声。
獣のようにただひたすら交尾を繰り返し、はてるまで終わらない淫獄が繰り広げられているらしい。
彼は思う。
何で今日に限ってアイツとなんだ、と。
今日の私は今までとは違うのに、と。
とにかく、疼く下半身をどうにかしてほしい。
このままでは寝る事も出来ないだろう・・・。
「こっちに来てくれ!!」
そう叫ぶも全くの反応は無く、それどころか隣の部屋は更なる盛り上がりを聞かせてくれる。
弄りたい・・・弄りたい弄りたい。
せめて手が動かせられれば自らの行為で解消できるのに・・・なぜか拘束されていないのに手足は動かない。

「っふっぁっぁっぁああああああ〜〜ぁぁ・・・ぁぁあ・・・ぁぁぁ・・・」

何度目かの女のイッた声が壁越しに聞こえた。
だが、彼女は小悪魔な笑みで彼女をまた犯し続けるのだろう。
かつて私が精根尽き果てた時のように・・・。
羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい。



コーヒーを片手に深々と椅子にもたれ掛っていると、五反田がデスクに腰を下ろして言う。
最初は注意していたのだが、もう慣れっこになっていた。

「結局、警察のマルタイは女でしたね〜」
「最初の食いつきから何となく予想は出来たがな」
「でも、警察何だからそれこそ何で直接店に特攻しないんですかねぇ?」
「そりゃアレだ」

田端は情報を一部公開したのだった。
当然、上野という女刑事は仰天したがお構いなしだった。

「ホスト狂いのキャバ嬢が行方不明じゃあ、キャバ店に聞いても何も出てこんだろ」
「そうなんスか?」
「あくまで個人的に遊んでるだけだからな、店側が知る由もないわ」
「・・・何か上手くいかないっすねぇ・・・」

餌を撒いて展開を期待したが見事空振りに終わったわけである。
大凡、田端達が追っているヤマとは無関係だと目黒のみならず五反田も感じているようだった。
だが、ここで目黒には1つの違和感を感じていた。
このK町の風俗関連という共通点で、男女2人の行方が分からなくなっているにも拘らず、裏で噂になっていない事に。
追っかけている佐伯タカユキは大手に努めるという程度だが、田端が提供したキャバ嬢はその店NO1の娘だ。
それなりにどこぞの店に移っただの、売りを始めただのという噂があってもよさそうなものだ。
寂れくたびれた街と変わっても性の対象はソコソコ敏感なものな筈なのに・・・。
(もう一度、その件で李のトコに行ってみるか)
依頼とは別に、興味が沸いてきた目黒だった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊