哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ めざめ2

 両親の寝室は豆電球だけが点けられていた。カーテン越しに両親の影だけが見える。
「芽衣、今日の晩飯、寿司だったろう」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
 芽衣には、桂が何を言おうとしているのか解らない。
「晩飯が寿司の日は、あの日なんだ。3ヶ月ぶりだから、今夜は激しいぜ」
 桂は、そういってラジオを取り出し、チャンネルをあわす。ラジオから、声が流れてきた。

−−《……ああ、そこ……、あなた……》−−
−−《……彩子、愛してるよ……》−−

 それは聞き覚えのある声だ。男性の声も聞こえる。
「えっ、なに? おかあさん?」
 それは、確かに母の声だ。しかし、雰囲気がぜんぜん違う。
「しーっ、昼間のうちに仕掛けておいたんだ。よく聞いてみろよ」

−−《……あ、あ……や、いやンン……ねえ、あなた……》−−

(かあさん、嫌がってるの?……えっ、ちがう……)
 芽衣の心は戸惑いと好奇心で埋め尽くされ、破裂しそうに心臓の鼓動が早くなる。

−−《……ここか? ここがいいのか?……》−−
−−《……いっ、いい……あっ、ああ、そこ、い、いいっ、ううう……》−−

 男の声は、父親の恭一の声だ。窓のカーテンには、二人の影が揺れるように動いている。
「えぇ、おかあさんと……おとうさんなの……?」
 二人の声は、普段の聞きなれた声でなく、とても色っぽい声だった。芽衣は、あまりの驚きから、二人の寝室の窓から目が離せなくなっていた。芽衣自身、自分の身体が熱を持ってきたのがはっきりと分かった。
(おかあさんの声……、色っぽい……)

−−《……ああン。ううン……そうよ、あ〜ん、おっぱい、たまらないっ……》−−
−−《……あ、ああ、いやっ……ど、どうして、こんなに感じちゃうの……》−−
−−《……いや……いやあン……ああ、入れてください。イカせて……》−−

 芽衣は、背中を押すものを感じた。熱い棒のようなものが背中に当たっている。
(えっ、なに?……なにが背中に当たってるの?……すごく熱い……)
 背中には兄しかいない。兄の左手は芽衣の肩を抱いている。時折、頭を撫で、芽衣の背中まである黒髪をやさしく梳かしている。右手は窓から落ちないように手すりを持っていた。背中に当たるものが手でないことは、芽衣にも明らかだった。5歳のときに、実の父親と死別している芽衣には、大人の男性のものを見たことがない。一緒に風呂に入った記憶さえ消えかけている。それが、兄の男性自身であるとは、芽衣には思いもよらなかった。

 桂は、芽衣を背中から強く抱きしめた。背中に当たる棒が、さらに強く芽衣に押し付けられる。それはとても熱かった。熱くなっている芽衣の身体を、より熱くした。桂の腕は、芽衣の胸にあてがわれている。
(どうしよう……なになの……どうすればいいの……)
 芽衣の頭の中にを、両親の声と、背中に当たる不思議な熱い棒が支配していた。
「芽衣、ブラジャーしてないのか?」
「えっ、……うん……、寝る時はしないの……」
 自然と素直に答えてしまう。
「……締め付けられるのが……イヤだから……」
 顔を真っ赤にしながら下を向いたまま、桂の質問に芽衣は答えた。

−−《……一緒にイッてえ……ああン、あなた……》−−
−−《……》−−
−−《……いっ、いい……あっ、ああ……い、いいっ、ううう……》−−
−−《……あっ、あっ、うあっ、イクぅ、イクイクう……》−−

「かあさん、イったな。第一ラウンド終了ってとこか」
「……イクって?……」
 顔を真っ赤にした芽衣が、うつむいたまま、桂に聞いた。男性経験など芽衣には、イクということが解らなかった。二人の行為がセックスだということは解っていた。
「感じたんだよ。おやじとのセックスで……」
 そういって桂は、芽衣の部屋を出て行った。

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