哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ 子供と大人の境の誕生日6

 キッチンでは、母が夕食の仕度をしている。夕食が終わるまでは2階に上がってこない。
(おかあさん……、大人の女性って……こんな下着……、履くのかな?)
 いつもやさしい母は、芽衣の目指す女性の一人だ。仕事もきちっとこなすキャリアウーマンでもある。芽衣は、自分の部屋を抜け出し、母の部屋に入っていった。母の衣類が仕舞ってあるクローゼットを開け、下着の仕舞ってある引出しを半分開ける。そこには、色とりどりのブラジャーやパンティーが丸めて、整然と仕舞われている。その一つを取り出してみる。普通のお尻を完全に包むパンティーだった。
「やっぱりおかあさん、あんなパンティー、履かないよね。おにいちゃん、変だよ。
 芽衣にあんなパンティー、プレゼントするなんて……」
 引出しを直そうとしたとき、芽衣の中に引っかかるものがあった。途中まで直した引出しを全部引っぱり出してみる。引き出しの一番奥の一列だけは、その他の下着と明らかに違うランジェリーが並べられてあった。それらは、普通の下着とは明らかに違うシルク製のランジェリー特有の艶を放っている。黒、ショッキングピンク、パープル等のランジェリーが並べられている。芽衣は、恐る恐るその一つを取り出してみた。それは、兄がプレゼントしてくれたのと同様のセクシーなものだった。
「いやっ、おかあさんも履くんだ……」
 手にとって広げてみる。縁をレースで飾られたそのパープルのパンティーは、生地の向こうが透けて見えた。

 芽衣は、引出しを直し、部屋を出ようとしたとき、部屋の隅にランジェリーが干してあるのを見つけた。昨夜、母が身に着けていたランジェリーだろう。外に干すには過激すぎるので、部屋に干しているのだろう。そのランジェリーは、黒のブラとパンティーのセットだ。ブラジャーは胸を包む三角の布地がメッシュで出来ている。その目の粗いメッシュからは、乳首が飛出してしまうだろう。パンティーはもっと変わっていた。恥丘を包む小さな三角の生地の中央が縦にレースで飾られていた。芽衣は恐る恐るそれを手にとってみた。中央のレースは、二つに分かれ、縦に穴が開いた。
(なんなの? この割れ目……)
 芽衣は、それを自分が身に付けた場面を想像する。その割れ目は、自分の恥丘に刻まれた縦裂と重なった。
「あっ、この穴……」
 芽衣にでも、その穴が何のためのものかはっきり分かった。
(おかあさん、昨日……これを着ておとうさんとHしたんだ……)

 芽衣は、そっと自分の部屋に戻り、兄からプレゼントされたランジェリーを箱に仕舞い、ベッドの上にうつ伏せた。
(おかあさん……、お父さんのためにあの下着……身に付けるんだ)
 芽衣の頭の中には、セクシーなランジェリーを身につけ、父と重なり合っている母の姿が映し出されている。顔の横には、兄からのプレゼントの箱が置かれている。
(芽衣も、大切な人のためにこのランジェリー……着るのかな?)
 恋人のいない芽衣の脳裏を、兄の顔がよぎる。男性を思い浮かべるときには、クラスメートではなくいつも兄だった。兄の裸を見てしまった芽衣には、いままでの想像と違い、より現実味を帯びていた。兄の厚い胸板、引き締まったおなか、その下には、剛毛の中から生えている怒張が頭の中に浮かぶ。それも、しっかりと勃起し天井を向いた、鋼のように硬く太い怒張だ。始めてみた男性が、一昨日の夜の兄のものだったのだ。今まで曖昧だった想像が、はっきりと思い浮かぶようになった。
(芽衣に身体の中に、あんなに大きくて……太いものが……入るの?
 おかあさんの中にも……おとうさんの…入ってたの?)
 兄のものしか知らない芽衣の想像は、男性は兄だけになっていた。

 風呂から上がり、パジャマに着替えた芽衣は、兄からのプレゼントのランジェリーを取り出した。パジャマを脱ぎ、下着を兄からのプレゼントのランジェリーに着替える。その上に、父からのプレゼントのキャミソールとミニスカートを着てみた。鏡に映ったその姿を見ながら、
(この服、この下着がおにいちゃんの好みなんだ……)
 鏡に映った自分が、少し大人になったような気がする。手が動こうとする。
(だめよ、芽衣……。だめなんだから……)
 そう自分に言い聞かせ、ベッドにうつ伏せた。動こうとする手を、胸の前で組みじっと耐えた。その間も、裸の兄の姿が頭の中に浮かぶ。うつ伏せになっている芽衣は、全体重を胸の前に組んだ腕で感じている。まるで、裸の兄に抱きしめられているような感覚に似ていた。

 昨日、一昨日と寝付けなかった芽衣は、そのままの格好で深い眠りについていった。

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