哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ セクシーランジェリー登校1

「芽衣!起きなさい。遅刻すわよ」
 一階から、母の声がする。
「ううん……。今何時?」
 芽衣は、時計を見て驚いた。いつもより30分以上寝坊してしまった。遅刻は免れないかもしれない。
「おかあさん、どうして起こしてくれなかったの?」
 自分の部屋のドアをあけ、一階に向かって大声で訊ねる。
「なに言ってんの? 何度も起こしたわよ」

 服装は、昨日、寝入ったままだ。慌てて制服に着替える。キャミソールとミニスカートを脱いで気が付いた。下着も昨夜のまま、シースルーのランジェリーを着ている。
「やだぁ、こんな下着じゃ、学校、行けない」
 ブラを脱ごうとした芽衣は、一瞬戸惑った。時間がないことも気になっている。
(やだぁ、遅刻しちゃう……)
 芽衣は、そのランジェリーの上に、制服を着た。

「芽衣、今日遅くなるからね。原稿の締め切りなの。夕食の仕度お願いね。冷蔵庫に下ごしらえ、してあるから」
「はあーい、10時頃? 帰ってくるの?」
「そうね。そのくらいには帰ってきたいわね」
「おにいちゃんは……?」
「もう、とっくに出かけたわよ。芽衣も早くしなさい。遅刻するわよ」
 母の彩子は、雑誌社のパート社員として働いている。原稿の締め切りの時になると、母の仕事、雑誌のレイアウトで帰ってくるのは10時、11時になるのが普通だ。他の社員は徹夜も珍しくない。
「早く朝食にしなさい。わたしも出かけるから……」
 母の言葉をさえぎり、芽衣は、
「遅刻しそうだから、朝食いらない」
 そう言って、お弁当だけ受け取り慌しく出かけた。

 バス停まで5分、芽衣は、カバンを抱えて必死で駆けた。スカートの裾が翻る。制服のスカートは、膝上5cmくらいなので、パンティーが見えることはない。しかし、芽衣は気になって仕方がない。
(やだぁ、見えたらどうしよう……、パンティー……)
 スカートのプリーツが、Tバックのパンティーから剥き出しになったお尻を直接撫でる。いつもは、フルカップのブラジャーに包まれてる胸も、今日は、走るたびに揺れる。サポートのないシースルーのブラジャーは、身体の揺れに合わせ、芽衣の胸を上下に、左右に揺すった。なんだか、急に胸が大きくなったように感じる。芽衣が身に付けているランジェリーは、下着と言うにはあまりにも頼りなく感じる。スカートの裾を押さえながら、必死で走った。いつも乗るバスより、一つ遅いバスに、何とか乗ることが出来た。学校に間に合う最後のバスだ。

 バスに飛び乗った芽衣は、乗客みんなの視線を集めてしまう。いや、今までも見られていたのだろう。ジュニアアイドルと言ってもいい容姿は、当然のように目を惹く。セクシーランジェリーを身に着けている芽衣は、その視線が気になった。特に男性からの視線は、とてもいやらしく感じる。
(スケスケのランジェリー、着ているの、ばれたらどうしよう……。
スカート...、捲られたらばれちゃうな……)
 バスの中でも、学校でもそんなこと起こるわけはない。しかし、そんなことまで想像してしまうほど、芽衣の感性は過敏になっていた。身に付けた下着が変わったことと、先週末の出来事……両親の部屋を覗き見たこと、兄の裸を見たことで芽衣の頭の中は、いままでぼんやりとした好奇心・想像がくっきりとした想像に変わっていた。それは、妄想に近いものだった。

 昼食の弁当が終わり、5時間目の授業も中頃に差し掛かった。何事もなく、いつも通りの授業風景が通り過ぎている。午前中の授業は、スケスケランジェリーを身に付けている緊張感から、身に入らなかった。そのランジェリーの頼りなさ、空気が直接恥丘を撫ぜているような恥辱感に襲われた。その緊張感も薄れて来ていた。芽衣は、食事をとった満腹感と、ここ数日の寝不足がたたり、睡魔に襲われた。
(寝ちゃあダメ、芽衣。しっかり授業を受けなくちゃあ……)

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