哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ 覗かれていた秘密1

 芽衣は、学校に行くのに、不安がないわけではなかった。柴田たちに迫られたらどうしようという不安は残っている。しかし、昨晩、兄と一つになれたことが、芽衣の不安を和らげていた。迫られてもちゃんと断ろうと心に決めた。
(無理やり写した写真をみんなに見せたら、柴田君たちも退学になっちゃうわ。そんなことはしないはずよ)
 兄との初体験を終えた芽衣は、考えが明るい方に向いていた。

 柴田たちは、何も言ってこない。芽衣の不安とは裏腹に、学校での一日は、何事もなく終わろうとしていた。
(よかった。柴田君たち、何も言ってこないわ。わたしをモデルに使うの、諦めたのね)
 芽衣が帰り仕度をしている時、柴田が話し掛けてきた。
「白川君、昨日はごめん!」
 芽衣は、たじろぎ、胸の前で両手の掌を硬く閉じ、胸を隠すように覆った。
「わたし、モデルなんかもう、しないからね」
 芽衣は、毅然としていった。
「ほんとにごめん! 昨日のことは謝るよ。ちょっと悪ふざけが過ぎただけなんだ。だからモデルを辞めるなんて言わないでヨ」
 柴田は、何度も頭を下げ謝る。その態度に、芽衣も軟化した。
「もう分かったから……。そんなに頭下げないで……」
 何度も頭を下げる柴田に対し、芽衣は、自分が何か悪いことをしているような気持ちになってくる。
「みんなも白川君に謝りたいって言ってるから、部室にもう一度来て……」
「う、うん……。でも……、モデルになるのは別だよ、もうやりたくない……」

 柴田の真剣な謝る態度に、芽衣は、しぶしぶ部室へ行く。部室には、昨日と同じく、藤原と真由美が待っていた。
「白川さん、ごめんね。男の子たちって悪ふざけが過ぎただけなの。無理やり写真を撮るなんかニ度としないから、モデル続けて……」
「ごめん。もう、バストやヒップに触ったりしないから、モデル、続けてくれよ」
 真由美も藤原も、真剣に謝る。
「柴田君にも藤原君にも、胸やお尻に絶対触らせないから……。ねぇ、お願い……」
「でも……。わたし、いや。モデルは……」
 芽衣は、真由美たちの頼みを断った。
「じゃ仕方ないわね。この写真、みんなに配っちゃうから。高く売れるわよ、芽衣ちゃんの下着姿」
 真由美は、数枚の写真を芽衣に見せた。そこには、昨日写された芽衣の下着姿がはっきり写っている。
「うひょー、マン毛もビーチクもしっかり透けてるぜ。この写真ならみんな欲しがるよな」
「だめぇ、そんなことしないで。みんなには見せないで……」
 芽衣に見せられた写真には、恥ずかしい姿が写っていた。
「しゃ、写真……返して!……」
「何言ってんだよ。この写真は、俺たちのものだぞ。カメラもフィルムも俺たちのものだし……」
 芽衣は、顔を赤くして、手を伸ばし写真を奪おうとする。そかし、柴田は、写真を持つ手を引っ込めた。
「モデルを引き受けてくれたら、この写真、あげるわ。どう?」
 真由美が交換条件を出した。
「男子たちには、絶対、触らせないし……。芽衣にとってもいい条件じゃない?」
「絶対触らない? 絶対に?……、もう、いやらしいことしない?」
「約束するわ。引き受けてくれるわよね」
 芽衣は、コクリと頭を小さく縦に振った。モデルを引き受けるしかなかった。

 芽衣は、受け取った写真を急いでカバンに仕舞った。
「それじゃぁ、撮影を始めましょう」
「ど、どんな写真を撮るの?」
 不安げに芽衣が聞く。
「この椅子に座って、足を広げ、オナニーしてくれない?」
 部室の隅に、肘掛のついたどっしりとした椅子が用意されている。
「えっ、いやらしいことしないって言ったじゃない。……わたし……、出来ない、そんなこと……」
「わたしたちは、いやらしいことしないわよ。するのは、あなただもの。芽衣ちゃん自身がするのよ。私たちは手出ししないわ」
「そ、そんな」
 芽衣にとっては、出来ない相談である。人前で、ミニスカートでさえ履いたことのない芽衣にとって、オナニーをして見せるなんて、死ぬより恥ずかしいことだ。まして、写真に撮られることなど想像すら出来ない。
(そんなことできるわけないわ。どうしよう……。どうすればいいの?)

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