哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ 覗かれていた秘密2

 芽衣は、どうすればいいかも考えることができない。その時である。柴田が、一枚の写真を芽衣に見せた。
「芽衣ちゃん。この写真、見覚えない?」
「あっ、この写真」
 それは、芽衣の部屋の中を窓越しに写したものだ。写真の中央には、芽衣と桂が抱き合ってキスをする瞬間が写っていた。
「な、なぜ? こんな写真が……?」
(昨日の写真だわ……。どうして?)
「芽衣ちゃんの部屋から、丘の上のマンションが見えるだろ? あそこに俺、住んでるんだ。望遠レンズ、買ってて良かったよ。こんなスクープが撮れるなんて。高かったけどナ」
「すごいスクープじゃない。学校中、話題になっちゃうわね」
 真由美は柴田から写真を受け取り、ひらひらと振って見せた。
「だめぇ、返して……。だめぇ……」
「ダメよ。この写真は柴田君のだから。芽衣ちゃんって、嘘つきなのね。昨日は、お兄さんとは何でもないって言ってたのに……」
「この後、何してたんだ? ベッドの上に二人が倒れこんだとこまでは見えたのにな。カーテン、閉めちゃうんだもんナ」
 柴田は、意味ありげに言う。すべてお見通しだと言いたげに、ニヤニヤしている。
「何にもしてないもん。お兄ちゃんとは何でもないってば……」
 芽衣と桂の、二人だけの秘密が覗かれていた。知られてはいけない秘密を知られてしまっている。
『芽衣、二人だけの秘密だぞ。誰にも内緒だぞ』
 兄も言葉が頭の中を廻っていた。
(知られてはいけないわ……。なんとかしなくちゃ……)
 写真は、キスをしているところまでだ。兄と結ばれたところが写っているわけではない。しかし、この写真が、みんなにばれたら噂が拡がってしまうだろう。
「芽衣ちゃん、引き受けてくれるわよね、モデル。そうしたら、この写真も返してあげるわ。秘密にもしててあげる」
 芽衣には、引き受けるしかない。秘密を守るには他の方法は残っていないだろう。芽衣は、頭の中が真っ白になって、何も考えることが出来ない。
「でも……、わたし、出来ない」
 しかし、オナニーをして見せるなんて、芽衣には踏ん切りがつかなかった。かといって、どうしたらいいかも思いつかない。
「よく考えればいいわ。わたしたち、マックに行って、ハンバーグでも食べてくるわ。その間に、考えてて……」
「いい結論を期待してるよ。さぁ、行こう」
 3人は、部屋を出て行こうとした。
「その前に逃げないように縛っておかない?」
 柴田が、芽衣が逃げることを心配していった。3人は、柴田の提案に同意し、芽衣を肘掛のついた椅子に座らせ、縛り付けた。芽衣の腰に、幾重にも縄を廻し、椅子の背もたれに縛り付ける。結び目を椅子の下に持っていき、芽衣の手の届かないところで固く結んだ。
「足が自由だと、暴れられると心配だから足も縛っておこうよ」
3人は、芽衣の足を椅子の肘掛に乗せ、手際よく縛り付けていく。
「こんな格好で縛らないで……。逃げたりしないから……」
「あなた、嘘つくもん。縛られても仕方ないわね。こんな重大なことまで嘘ついてたんだもん」
 真由美が、芽衣と桂がキスをしている写真を見せ、言う。頭の中が真っ白になっている芽衣の抵抗は、弱々しいものだった。芽衣は、足をM字に開いたまま、椅子に固定されてしまった。スカートが、M字に開かれた股間を頼りなく隠している。すらりと伸びた太ももが、肘掛の上に、縄を食い込ませて載せられている。白い柔肌と黒い縄のコントラストが痛々しい。なぜか、手は縛られず、自由なままだ。

「わたしたちは、あなたみたいに嘘つきじゃないわ。男の子達には手出しさせないから。よく考えてね」
 そういって、椅子に縛り付けられた芽衣を残し、3人は部室を出て行った。

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