緑色の復讐
百合ひろし:作

■ 第二話2

「お友達ですか?青山さんなら昨日───、引っ越しましたよ」
管理人が出て来て言ったその言葉に小夜子は驚いた───。これで遥の行方は完全に分からなくなってしまった。
「そうですか、残念です」
小夜子は頭を下げた。

しかし小夜子は諦め無かった。市内に知られたいじめグループのリーダーである、ならば、と別の高校に行った仲間を使って探し出してやろうと思った。スマホに収めた写真の中から、普通に制服を着ている遥の写真を選び、50件近くにも及ぶ仲間に一斉にメールを送信した。そして全員から10分以内に承知した旨の返信が来た。それを見て満足そうに笑い、
「引き上げましょう」
と言った───。
「絶対に逃がさないわ、青山遥」

教室に残された真由羅は何時もの様に小夜子が掃除担当となっている教室を掃除して、それが終わると、遥が座っていた席に掛けた。
思い出すと涙ばかりが出てきた。
『早く楽になろうよ』
『生まれ変わったら、お互いに幸せになろうね』
今の自分の立場を遥には気付かれていた。そして遥自身がとても辛い立場にあるにも関わらず真由羅にはそういった言葉を掛けてくれた遥に対して申し訳無い気持ちで一杯になった───。
遥が小夜子から受けたいじめを真由羅は中学生の時に受けていて、やはり同じ様にクラスメートの前で、ツインテールなら縞パンよね、と縞パン一枚姿で公開オナニーをさせられた上に、太股の内側に約束の印として火傷を負わされた。そこで真由羅は心が折れてしまい、小夜子に服従する道を選んだ───。
服従してからは楽だった。小夜子の奴隷をしていれば守られた。公開オナニーの事を馬鹿にしようものなら小夜子やグループのメンバーが、逆に仲間を侮辱されたといって制裁した位だったから。

辛かっただろう。小夜子に掃除の件で注意をしてしまったがゆえいじめのターゲットにされ、それでも耐え続け、そして退学する羽目にまでなってしまうとは───。
しかし、真由羅にとってそんな遥は退学した事で本当の意味で自由になれたのだと羨ましく思った。自分には手に入れられなかった自由を手にし、旅立ったのだと。
「青山さん……ごめんなさい……友達になりたかったのに……」
真由羅はこの日、閉門時間まで遥の座っていた席で泣き続けていた───。

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