緑色の復讐
百合ひろし:作

■ 第四話16

真由羅の腰から胸位の高さの草が行く手を阻んだが、その草村の向こうから常に声が聴こえて来る位の所まで来た。
草を掻き分け、その中に入るとトゲの付いた実や茎が真由羅の肌に容赦無く襲い掛った。手や太股を浅く切り、血が出たが真由羅は構わず進んだ。そして制服にはトゲの付いた実が沢山へばりつき、払ったが鉤爪の様な物で引っ掛かっていたので少ししか取れなかった。
真由羅は制服に付いたものは諦め、更に先に進んだ。足場は悪く転び、身体中にそれらの植物の洗礼を受けた。髪にもつき、ツインテールに沢山の実や種をぶら下げる形になった。

それでも真由羅は進んだ───。

兎に角進んで───青山遥にに会わなければならないと思った。真由羅は遥が何をしているのか位は既に理解していたがそれなら見届けてやらねばならないと思った。
それよりももし、小夜子にいじめなど受けてなかったら、そして真由羅の手で約束の印など付けていなかったら───、遥はこんな人里離れた地でオナニーに耽るなんて事は無く、今頃進路について絞りこみを行っていただろう───いや、遥の事だからそんな事は一年の時に済ませていて、少しでも現状より上を目指していたのかも知れない。そんな時に自分の相談相手になってくれていたかもしれなかった。
真由羅はそんな遥の人生を潰してしまった。しかし、遥は真由羅の友達になりたい意思を示していたので、真由羅は遥の事を見届けてあげないといけないと思っていた。もし遥が見られた事に腹を立てて絶交宣言されても仕方ない、と思いつつそして、人一人分の草が無い所に着いた。目の前に飛込んで来たのは───。

「んあっ、あ……ああっ!」
遥は背中をそらし乳房を揺らしながら膣内愛撫を楽しんだ。親指をクリトリスに当てがい人指し指と中指で膣内をいじった。そこから連続する波の様に押し寄せて来る快感に、ただ声を上げ、腰を上下に振り、足には力が入った。

「───あああっ……」
そしてきつく目を閉じて大声を上げその直後、背中を限界まで反らして硬直した後膣から愛液を吹き出し、更に激しい痙攣をして崩れ落ちた。
「はあ……はあ……はあ……」
遥は暫くそのまま動かなかった。動いてるのは意識と逆に痙攣する下半身だった。
痙攣が段々収まって来ると、遥は膣から右手の指を出し。ぐっちょりと濡れたパンティから抜いた。二年前の屈辱の愛液から今度は満足と快感で濡らし直して───。
一つ安堵の溜め息をついた───。これで全てが終わったのだと思った。そして左手でゆっくりとパンティを直して、左膝を立てて目を開けた。それからゆっくりと起き上がり、手探りで服を取ろうとすると何やら暖かいものに触れた───。
「真由羅……さん?」
遥は驚いたが、飛び退く訳でも乳房を手で隠す事も無く言った。ある意味真由羅にそこに居て欲しかった様なそんな感情が込もっていた───。真由羅は遥が服を置いた所に正座していて、遥の服を畳んで持っていた。
「いつ……から?」
遥は見上げて聞いた。これだけ草に囲まれた場所にいたら人が近付いて来た時に気付かない筈は無い───しかし実際に真由羅がここに来た事には全く気付いていなかった。
風を感じる事も無くただ復讐を果たした事に快感を得てオナニーに耽っていた事を全てを見られてたのだとしたら、と思うと急に恥ずかしくなり、顔を赤くした。真由羅にこの場所を探し当てて欲しいと心の何処かで思っていながら、である。
真由羅は泣きそうな顔をしていた。そして、
「ごめんなさい───でもどうしても青山さんに謝りたくて……会えなかったから声を頼りに」
と言った。つまり最初から見ていた訳では無かったが遥がオナニーをしていたという状況は把握していたという事だった。
「オ……オナニー見ちゃって……ご免なさい。私……私が……青山さんの人生を壊しちゃったせいで……」
真由羅はそう言うと泣き崩れた。遥は、
「ううん……そんな事無い。真由羅さんも、私も被害者───。誰かが新潟小夜子を止めなければまた誰かが被害者になったり───」
と言った後起き上がりしゃがんだ姿勢で視線を外して、
「自分がそういう目にあいたくないからって裏切ったり、とか」
と言った。真由羅が勝手にオナニーを覗いて処か目の前で鑑賞していた事については何も言わなかった。裏切ったとは勿論あの二人の事である。真由羅は泣き続けていたが遥の言葉に反応はしていた。

「それに───気持ち、良かったし。新潟小夜子を───潰すのが」
遥は呟いた。まるで昆虫の足を一本ずつもいで行ってそれでも死なずにもがいているのを楽しんでいたかの様だった。
そう───真由羅は遥は何故ここでオナニーだったのか?この一言で理解した。しかし、遥に対して恐怖心も軽蔑も無く友達としての気持ちしか無かった。

「後悔はしてないよ。真由羅さんとは暫く会えなくなるけど」
遥が言うと真由羅は顔を上げ、
「な……な…で……」
と言葉にならない言葉で聞いた。復讐に全てを捧げて更にそれに快感を感じていた位だから後悔していないのは理解出来たが、会えなくなるというのはどういう事なのか───?真由羅はそう思った。遥は右手をパンティのサイドからバックで拭き、

「自首───するから」

と言った。真由羅は一瞬固まった。そして、遥に飛び付いて押し倒した。
「だ……駄目ぇ……せっかくともだひになりたいいってくれらのに───」
真由羅は上に重なり遥の肩に顔を押し付けて激しく泣きながら叫んだ。遥は真由羅の頭を撫でた後ギュッと抱き締めた。
「罪は罪だから。それに、出たら会えるよ───」
と言った。払い除けようと思えばすぐに出来た。それだけの力の差はあったが、遥は真由羅が納得するまでそのままでいた───。無理に払い除けても意味がない、真由羅に罪"自体"は償うという遥の固い意思を受け入れてもらわなければならないと思っていたからだった。



真由羅が遥の意思を受け入れ、遥の上から退いたのは小一時間経ってからだった。真由羅のスカートは遥の愛液で濡れていたが真由羅はしゃがんだまま気にせずスカートを直し、

「必ず……会えるの……?」
とだけ聞いた。遥は後ろに手を着いてゆっくりと立ち上がってからパンティに指を掛けて直し、
「うん、必ず。連絡するよ」
と答えた。夜空をバックに僅かに光る髪、肩、肌、そしてそんな直ぐには乾かない程濡れたパンティ姿は僅かな光を反射して輝きを見せた。そのシルエットは何よりも綺麗に感じた───。それが外の世界で真由羅が見た遥の今のところの最後の姿だった。

遥はまるで今の自分の姿を記憶に焼き付けて欲しいと言わんばかりに真由羅に向かって仁王立ちになって見せた後ニコッと笑顔を見せた。
それから足元の服を手に取ると音も立てずに走り去った。真由羅は追うことが出来ず、ただただ去っていく遥を見ているしか出来なかった。
「今のは……どういう……意味……?」
真由羅は満天の星の下でそう呟くしか出来なかった───。

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