緑色の復讐
百合ひろし:作

■ エピローグ1

進学校で起きた通り魔事件───その裏には酷いいじめがあり、事件の犯人がいじめの被害者だった事が明らかになった事でワイドショーは賑わった。
それまで犯人については色々憶測が飛び交い、目撃情報から制服姿で仮面を着けていた事は判っていたので160cm代中盤過ぎという身長から、女装した男性等と言うコメンテーターもいたが、実際はかつてのクラスメートの女子生徒だった事で更に大騒ぎになっていた───。

一方、事件の原因となった新潟小夜子グループはどうなったかと言えば───一連のいじめが過去まで調べられ、更に斉藤真由羅や中村和歌子の証言等もあり明らかになった。
それによりグループのリーダー新潟小夜子と副リーダーは退学処分になり、グループに属していた大半のメンバーも停学になった。そして『約束の印』を付けた実行犯の真由羅はというと───、

停学3日の処分

だった。真由羅は直接の加害者であると同時にその印の最初の被害者であり、小夜子に逆らえない状態だった事と、今回のいじめ事件に対して数多くの証言をした事から情状酌量の余地ありと判断された為だった。
また、捜査の手は犯人が通っていたとされる空手道場、出身中学校等にも及び、遥を知る者達は様々なコメントをしていた。

「信じられない」
「みんなに好かれるタイプだったのに」
「真面目な性格だったのに」

等々顔にモザイクがかかった状態でお決まりのコメントをしていたのであったのだが、同級生や元担任はどちらかというと素行の良かった遥が復讐という暴力行為を働いた事よりも、いじめを受けて退学をしていた事が信じられない様子だった。

萬田友近は遥とは中学時代、あまり接点が無かったので捜査の手は及ばなかった。一方天宮希美はインタビューを受け、大人の対応をしていた。報道ではこちらも顔や道場の看板にはモザイクがかかっていたが───。
ある程度遥の家庭の事情は知っていたという設定で、予め遥と打ち合わせしていた内容を話していた。
「ま、妥当な線だな」
友近は希美とは面識が無かったが遥の自首を後押しした的な事を希美がインタビューで話していたのを聞いて呟いた。


一ヶ月もすると、この事件は世の中からほぼ完全に忘れ去られていた───というのも、いじめの加害者の主犯が退学処分になるなど学校が一応動いた事、そして遥に暴行された者が多かったにも関わらずいじめの主犯を始め死者が出てなかった事、そして遥が真面目に生活している事等から潮が引くようにメディアでは扱われなくなった。
その時───、一人の人が呼び掛けを行った。

青山さんに会いませんか?

呼び掛けたのは真由羅だった。真由羅は、遥に会った最後に過ごしたあの山奥の場所は当然の事ながら把握していなかったので、報道では遥が通ったとされる無心流空手道場に行った。インタビューに答えていた師範と隣にいた妹があの山奥で会った人と同一人物だと思ったからだった。
遥は他県からの生徒で、遥の地元にある道場だった為真由羅の住んでる所からはかなり離れていたが、真由羅は構わずに行った。今遥と繋がりがあるとしたらそこしか考えられなかったからだった。
しかし、実際に行くと師範の希美も妹の霞も留守で、門下生が練習しているだけだった。聞いてみると、戻るのは明後日になるとの事だった。真由羅はその時にもう一度来ます、と言って帰った。
そして二日後───再び訪れると今度は希美と霞は二人共居て、会って話をすることが出来た。

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