桃香
木漏れ日:作

■ 15

桃香は寝たままゆっくり服を脱いだ。
「あ〜気持ちいい!」
そして上着で胸を隠し起き上がった。
「夏なら泳いじゃうけど…。」
「桃泳いだ事あるの、ハダカで…。」
「あるよ何度も!」

「どこで?」
「田舎…。」
「海が近いのか?」
「すぐそばだよ!」
「ハダカで泳げる?」
「水着着た事ないよ!」

「凄いな!」
「そう?」
「そうだよ…。」
「普通だと思うよ…。」
「今度行きたいな!」
「うん、行こうよ!」

一時間が過ぎた。
ボートを返してぶらぶら歩いた。
ハイキングコースと書かれた看板があった。
取り合えず歩く事にした。
コースは整備が行き届いていた。
いり口で貰ったパンフレットを見ると地図がある。

急がずぶらぶら歩いた。
道の両側には樹木が生い茂っている。
「この奥なら写真撮れそう…。」
「そうだね…。」
「撮って…。」
「よし…。」

私達は道を外れて樹木の間に入った。
少し行っただけで樹木に隠れた。
「ここでいいか?」
「うん…。」
「撮るぞ…。」
桃香は服を脱いだ。

ソックスと靴だけの桃香が微笑んだ。
私はその姿をカメラに収めた。
「ねぇ、道路のとこでも撮ろうよ!」
そう言うと桃香は道に飛び出した。
「桃! 誰か来たらどうするんだ!」
「平気だよ!だってあたし子供だもん! それより早く撮って!」
私はシャッターをきった。
ようやく桃香は服を着る。
「ねぇ!」
「ん?」
「もっと脱ぎ易い服にすればよかったね!」

「……。」
「ねぇ怒ってる?」
「いや…。」
「あ…やっぱり怒ってる…。」
「怒ってないよ…。」
私は静かにそう言った。

「嘘!」
「嘘じゃない…。」
「でも何か変だもん!」
桃香はホントにカンがいい。
「心配なんだ…。」
「なにが?」

「桃香の事が…。」
「すぐハダカになっちゃうから?」
「うん…。」
「あたし修と一緒の時しかハダカになってないよ」
「まぁそうだ…。」
「これからもそうだよ?」

「わかるよ!」
「それに…。」
「ん?」
「嬉しいんだ、あたし…。」
「何が?」
「修がそばに居てくれて…。」

「そうか、なんで?」
「一人でハダカになってもつまらないもん!」
「誰かに見てて欲しい?」
「誰か、じゃイヤだけど…。」
「つまり俺って事?」
「迷惑じゃなきゃね…。」

「迷惑なんて思わないよ!」
「ほんと?」
「ああ…。」
「良かった♪」
桃香はそう言うと抱きついた。
「他人が見るぞ…。」

「いいもん…。」
私達はブラブラ歩いて行った。
「あっあれ、温泉じゃない?」
桃香の指差す方を見ると確かに〇〇温泉と書かれた看板がある。
看板の横に「立ち寄りの湯」と書いてある。

「ねぇ、入ってみる?」
桃香は興味津々と言った顔で聞いてくる。
「入るか?」
「うん♪」
私は受付で聞いた。
「混浴ですか?」

「いいえ…。」
受付の女が答える。
「この娘と一緒じゃ駄目ですか?」
女は桃香をチラッ見た。
「あなた小学生?」
「四年生!」

「いいですよ…。」
女が言う。
私はすぐに代金を支払った。
ついでにタオルを買おうとした。
桃香が言った。
「早く行こ♪」

桃香の後について脱衣所に行った。
桃香は当然のように「男湯」と書かれた方へ行く。
私は声を掛ける。
「いいのか?」
「ん? なにが?」
「ここ男湯だぞ?」

「平気だよ」
「いいのか?」
「うん♪」
私と桃香は脱衣所でさっさと服を脱ぐ。
なんのためらいもない。
私も慌てて後を追う。

「わぁ! 気持ち良さそう!」
桃香の声に皆こっちを見る。
そんな事に構わず桃香は湯を浴びる。
「お兄ちゃん! 早くぅ!」
桃香は私を呼んだ。
中に居た四人は一斉に私を見た。

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