桃香
木漏れ日:作

■ 29

「どんな事?」
「あのね…。」
「うん…。」
「毛剃らせて欲しいの!」
「どこ?」
「下の毛。」

「なんで?」
「あたしとおんなじにして欲しいの!」
「……。」
「イヤ?」
「他の奴と風呂入れないよ…。」
「平気よ…。」

「え?」
「彼女の趣味だって言えば?」
「しかしなぁ…。」
「じゃ、いい!」
桃香はふくれっ面をする。
なんとなく気まずくなって泳ぐのを止めた。

プールの始末をして部屋に戻る。
畳に寝そべる。
ひさしぶりに泳いだせいか眠気が襲ってくる。
私は眠りに引きずり込まれた。
目が覚めた時外は闇に包まれていた。
「今、何時?」

「7時、ゴハン出来てるけど食べる?」
「うん…。」
私はその時トイレに行きたくなって、
「桃、トイレに行ってくる…。」
「うん支度しとく…。」
桃香はそう答えた。

トイレに入り放尿した。
違和感があった。
パンツの中に手を入れる。
無い。
ある筈の毛がない。
やられた。

そう思った。
だが何も言わない事にした。
言っても反発するだけだ。
機会があれば話せばいい。
私は居間に戻った。
テーブルには料理が並んでいた。

「おいしそうだ、食べよう!」
私達は料理を食べた。
そのあと風呂に入る。
取りとめのない話をしながら風呂を終えた。
部屋に戻ると桃香が缶ビールを持ってくる。
侘びのつもりらしい。

私は普通の態度で接した。
布団に入る。
酔いが回って良い気持ちだ。
眠い。
「ねぇ…。」
たまりかねて桃香が口を開いた。

「なに?」
私は出来るだけ穏やかな口調で聞いた。
「あのさぁ…。」
「ん?」
「怒ってる?」
「……。」

「あ、怒ってるんだ…。」
桃香は言い私にすり寄った。
「ねぇ…。」
「ん?」
「あたし悪い子だよね?」
「……。」

桃香を見た。
泣いていた。
声を出さずに…。
「なんで泣くんだ…。」
「……。」
桃香は私に頬を摺り寄せる。

「あたし、心配なの…。」
「なにが?」
「修がどっか行っちゃうような気がして…。」
「何処行くんだ?」
「分かんない…。」
「どこへも行かないよ…。」

「ねぇ…。」
「ん?」
「おっぱい揉んだら大きくなる?」
「さあ? どうして?」
「雑誌に出てたから…。」
「桃はおっぱい大きくしたいの?」

「うん…。」
「どうして?」
「修は? どっちがいい?」
「普通でいいよ…。」
「嘘! おっきいほうがいいんでしょ?」
「なんでそう思うんだ?」

「だって雑誌に出てたもん! 男の人っておっきいおっぱい好きだって!」
「それは人によるだろ…。」
「でもあたし胸何にもないからおっきくしたいの!」
桃香は自分の体に自信が持てず不安に駆られて
焦っていたのだ。

「そのうち大きくなるよ…。」
「でも心配…。」
「じゃあどうする?」
「揉んで!」
「え?」
「あたしのおっぱい揉んでよ!」

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