桃香
木漏れ日:作

■ 31

桃香が去ると、暫く沈黙の時が流れた。
「あの…。」
右に居る女が口を開いた。
「はい…。」
「失礼ですけど気になっているのでお聞きするんですが?」

「なにか?」
「妹さん、もしかして下着着けていらっしゃらないのではないかと?」
女は遠慮しながらそう聞いた。
「そうですよ…。」
私はあっさり認めた。

女は分からない、という顔をする。
「あなた寝る時ブラしてます?」
「いいえ…。」
「なぜですか?」
「締め付けるのがイヤなんです…。」
「そうでしょ?」

「はい…。」
「妹も同じ理由です…。」
「そうですよね…。」
女は納得するようにそう言った。
桃香が戻ってきた。
「トイレ混んでて…。」

暫くすると先程の女がトイレに立った。
帰って来るともう一人も。
その時さっきの女が言った。
「トイレのついでに脱いできちゃいました。」
「ホント! 見せておねえちゃん!」
桃香が言うと女はスカートを少し捲くった。

確かに下着がない。
女が言った。
「旅行ノーパンでしょうかしら?」
「それ、いいかも…。」
桃香が言う。
もう一人の女が戻ってきた。

なんとなく恥ずかしそうだ。
私はピンと来た。
桃香も気がついたようだ。
「おねえちゃん脱いじゃったの?」
そう聞くと、
「何で分かるの?」

「顔、赤いもん!」
「やだ…。」
その娘は更に顔を赤くする。
「ねぇ、気持ちいいでしょ?」
桃香が聞くと、
「うん…。」

と頷いた。
「おねえちゃん、初めて? こういう事?」
「ううん…。」
「やっぱり!」
「どうして?」
「嬉しそう……。」

「分かる?」
「うん…。」
「お2人はどこへ行くんですか?」
私が聞くと、
「有給取ってのんびり温泉に行きたいと思って……。」

「そりゃいい…。」
「ですよね?」
「おねえちゃん露天風呂行くの?」
「そのつもり…。」
「気持ちいいよ!」
「そうよね!」

「お2人は同じ仕事?」
「ええ…。」
2人は職場の同僚らしい。
「おねえちゃん家に居る時どんな格好?」
「Tシャツとショーツ…。」
「そうなんだ…。」

「あなたは?」
「あたしね…。」
桃香はチラっと私を見る。
「この子裸族なんです…。」
私がいうと、
「ホント?」

「うん、そうだよ!」
「マッパなの?」
「うん!」
「気持ちいい?」
「うん!」
「そっか…。」

昼になった。
通り掛かった社内販売で駅弁を買った。
「ねぇ、桃ちゃん?」
「なぁに?」
「裸族いつからなの?」
「小さい時から…。」

もう一人が聞いた。
「学校、ノーパンで行く?」
「しょっちゅうですよ…。」
「きゃー大胆!」
「スカートめくりされない?」
「されない…。」

「なんで?」
「めくると苛めちゃうもん!」
「どうやるの?」
「パンツ脱がして写メ撮って女子全員に送っちゃう」
「おー怖…。」
「あとは?」

「〇〇のアレ小さいよね…。」
「とかおしゃべりしてると謝ってくるよ!」
「凄い……。」
2人は顔を見合わせる。
「夏涼しい?」
「うん…。」

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