夢魔
MIN:作

■ 第21章 暗躍8

 明日香は泣きそうな顔で、首をブンブン左右に振った。
 佐山は沙希の後ろから、訝しそうな表情で見詰めている。
(何だ…、何を考えてる? まさか、慈悲を掛けるのか?)
 佐山は顔を険しく変えながら、事の成り行きを見守った。

 沙希は明日香の上体を起こさせると、優しく抱きしめ、傷口を舐め始める。
 明日香はその愛撫とも取れる刺激に戸惑いながらも、感じ始めた。
 だが、次の沙希の言葉で、明日香の表情は凍り付く。
「じゃあさあ〜、変わりの人を指名して。明日香さんの代わりに、私に鞭で打たれる人を明日香さんが、この中から決めて…」
 沙希の言葉は仲間を売れと言って居た。
 同じ地獄で、耐えている仲間をその本人の見ている前で、売れと言ったのである。

 沙希はにこやかに微笑みながら、更に明日香に言葉を掛ける。
「良いわよ。明日香さんが続けて受けるって言うんだったら、別に指名しなくても…。でも、そうなったら、きっと痛くて死んじゃうかも…」
 沙希は悲しそうな顔をして、明日香を上目遣いで見詰める。
 明日香の身体が、ガクガクと震え始めた。
 沙希は再びにっこりと笑い、明日香の目の前に右手を翳し
「5…4…3…」
 数を数えながら指を一本ずつ折り始めた。
 明日香には、躊躇う時間も与えられない。

 明日香は恐怖に負け、震える右手で部屋の隅を差す。
 そこには、テーブルに成ったショートカットの女性、響子が居た。
 沙希は立ち上がりながら、クルリと身体を響子に向けると
「小父さま…あの人、何て名前」
 佐山に問い掛ける。
 テーブルに成って居る響子は、床を見詰めて居るため、自分が指名された事に気付いていない。

 ただ必死に自分が、選ばれ無い事を願っていた。
 だが、そんな響子の願いは、呆気なく佐山の言葉により打ち砕かれた。
「ああ、あれかい? あれは響子と言う名だ」
 響子の心の中は、激しい落胆で満たされ、同時に明日香に対する怒りが、沸々と湧き上がる。
(明日香さん…どうして…どうして、私何ですか…)
 響子は込み上げる恐怖と怒りの中、沙希の言葉により自由を与えられる。
 苦痛に曝される為の身体の自由。

 響子は沙希の元に進みながら、明日香を見詰める。
 その目が叫んでいた[裏切り者]と。
(響子ちゃん、ごめんなさい。そんな目で見ないで…。あなただけが、俯いてたから…。私が、唯一目線を合わせずに済んだから…。本当にごめんなさい)
 明日香は心の中で、必死に手を合わせ、響子に詫びた。
 そんな事は、何の解決にも成らない事を知りながら。

 そして、明日香は絶望する。
 この屋敷のルール、[敷地内で、不用な声を上げては、いけない]が、沙希によって取り除かれたからだ。
 これにより、明日香は自分が売ってしまった、後輩の悲鳴を聞き続けなければ成らない。
 沙希は響子に佐山から受け取った、黒い犬の首輪をはめる。
 この首輪をする事により、彼女達の声帯は機能する事を許される。
「響子さん? 明日香さんに選ばれた気分はどう?」
 沙希が微笑みながら、響子に問い掛けると
「明日香さん…恨みます」
 明日香を見下ろし、呟いた。

 沙希はクスクスと笑い
「響子さん、そんな事言っちゃ駄目よ…。だって、誰でも怖い物は、怖いんだし。それに、響子さんを助けてくれるのは、明日香さんなのよ…。まぁ、助けてくれるかどうかは、我慢次第でしょうけどね…」
 沙希は響子と明日香を見て、妖しく笑う。
 沙希は完全に性格が、変わっていた。
 佐山の暗示により、加虐が快楽に繋げられ、サディストのそれに変わってしまった。
「小父さま…。激しく動く、固定出来るバイブ無〜い?」
 沙希が佐山に注文すると、佐山は壁際の棚から1本のバイブを取り出し、沙希に手渡す。
 佐山はこの少女が、どう言う責めをするのか、興味津々に成っていた。

 佐山が差し出したバイブを見て、沙希はクスリと笑う。
 それは、無数の柔突起と硬質のビーズが絡まる禍々しい物だった。
 沙希がスイッチを入れると、激しくうねりながら振動し、ビーズが竿の部分で回転している。
「小父さま、これって強弱とか無いの?」
 沙希の質問に、佐山はリモコンを手渡す。
 沙希はそれを受け取ると、満足そうに笑い、恐怖に染まる2人を見る。
「は〜い、道具が揃いました〜」
 沙希は無邪気に2人に告げると、バイブを立てて鉄のパネル部分に置いた。

 バイブの底部は強力な磁石に成っており、真っ直ぐ立ったまま、動かなく成った。
「はい、明日香さんここに来て、オ○ンコにくわえ込んで」
 明日香は沙希の命じるままに、しゃがみ込んでバイブをオ○ンコに納める。
「じゃ、次は響子さんね…。響子さんはここに来て、オ○ンコとクリ○リスが、明日香さんの口に来るように立って。そう、足を大きく開いて立つのよ…じゃないと、気が触れちゃうかも」
 沙希の言葉に響子は、恐怖感を募らせ、必死に位置を調整する。
「良い? それが終わったら響子さんは、両手を上に上げて万歳して、終わるまで動いちゃ駄目」
 沙希がそう言うと、響子は万歳してピクリとも動かなく成る。

 沙希は響子の反応に満足気に笑うと、次に明日香に目を向けた。
「次は明日香さんね…。明日香さんは、終わるまで屈伸して、バイブを出し入れして。そして舌と口を使って、響子さんの気が触れ無いように気持ち良くして上げて」
 命じられた明日香は、屈伸運動をしながら舌を伸ばして、響子のクリ○リスを舐め始める。
「あふぅ〜…はぁ〜ん…」
 響子の口から快感を訴える声が漏れる。
「2人共、感覚は5倍から始めて…、イキたい時は好きにイッて良いわ。その代わり、一回イク度に感覚を一つ上げる事。うふっ、明日香さんがイッた時には、もう一つプレゼントを上げるね」
 沙希の命令を受けた2人は、身体の感度を上げ快楽に落ちて行く。

■つづき

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