夢魔
MIN:作

■ 第22章 教師10

 沙希の催眠を強くするために、佐山は人形達を与え、沙希に掛けた暗示を強めさせた。
 佐山には、それが一番の目的のように、沙希を手に入れる事に執心する。
 執心は盲目に成り、判断を狂わせる。
 だが、誰もその最中にいて、それに気付く者は居ない。
 催眠術を駆使する佐山ですら、その事に気付いては居なかった。
 沙希が何のためここに来ているか、その時の佐山の頭には、無かった。
 自分がどうやって、沙希の心の隙を突いたか等、今の佐山の記憶の中には残っていなかった。

 ましてや、沙希の希望が満たされ、心が安定する等思いもよらず。
 沙希の心が満たされた時の、反応など望外に追いやられている。
 その結果が及ぼす事象も、帰結も佐山には考え及ばぬ物だった。
 だが、庵の決心により、その時間は刻一刻と迫り、破綻は足を忍ばせ擦り寄ってくる。
 佐山はその時始めて気付くのだった、自分の考えの甘さに。
 危うい危険を孕んだまま、佐山の夜は更けてゆく。

 狂はエレベータに乗り、携帯電話をセンサーに翳す。
 静かにエレベーターは上昇を始め、10Fに向かう。
(システムはほぼ完成、後は微調整だな…。絵美の奴を実験台に使うのは、気乗りしないがあいつも、言い出したら、聞かねぇからな…)
 狂はエレベーターの中で、仏頂面に成って、考え込んでいた。
 エレベーターが、10Fで止まり扉が開く。
 狂は大きく溜息を一つ付いて、扉に携帯電話を翳しロックを解除した。

 自宅の玄関に入ると
「お帰りなさいませ、純く〜ん」
 元気な声で、絵美が挨拶をする。
 狂は絵美の姿を見て、顔を手で押さえ
「お前…本当に、何考えてんだ…悪ノリし過ぎだぞ…」
 ガックリと肩を落とし、項垂れる。
「あ! あれ? …今日は純君の日じゃ…」
 絵美は平伏していた、頭を持ち上げ慌てて奥に引っ込もうとする。

 絵美は濃紺のメイド服を着て、狂を出迎えていた。
 ヒラリとスカートが持ち上がり、絵美のシーム入りストッキングを履いた、スラリとした足が覗いて、実に色っぽい。
「もう、その格好で良い。それに今日は例の奴を煮詰めるって、言ってたろ」
 絵美はクルリと振り返り
「あ〜っ、あっちが先だったんですか〜…。私てっきり…」
 手を叩いて、納得すると、頬を赤く染めモジモジとした。
「お前、本当にエッチが好きだな…。そっちに直ぐ頭が行きやがる…」
 狂が呆れた顔で、絵美に言うと
「そうしたのは、ご主人様じゃないですか〜」
 絵美は膝に手を置き、斜め下から狂の顔を見上げる。

 大きく開いた襟ぐりから、両腕で絞り出された形の良い乳房が、胸の谷間まで露わにしていた。
「お前ワザとしてるだろ…」
 狂がボソリと呟くと
「てへっ…解っちゃいました? だって、ご主人様…好きでしょ…、このポーズ?」
 絵美は笑って白状すると、首を傾げて問い掛ける。
 狂は絵美の顔を見つめると
「全くよ…。ほら行くぞ」
 微笑んで、絵美の頭にポンと手を乗せる。
 絵美は満面の笑顔で、狂の身体に抱きつき、そのままリビングに向かった。

 狂の自宅のリビングで、絵美はパソコンの前に座っていた。
 絵美の頭には、様々なセンサーが付いたヘッドキャップが嵌められている。
 そのヘッドキャップから延びた線は、狂の横に置かれた機械に飲み込まれ、その機械は狂の目の前にある別のパソコンに繋がっていた。
「始めるぞ」
 ヘッドホンをした狂が短く言うと、絵美が片手を上げて、元気に返事をする。
 すると、アラーム音が庵の作ったブラックボックスから流れ、可聴領域を越えた音が、絵美を包み込む。
 絵美の表情は途端に眠そうになり、視線がパソコンのモニターに釘付けに成る。

 パソコンのモニターは、不思議な明滅を繰り返し様々な色を映し出す。
 狂はジッと自分の目の前に有る、モニターを見つめ、チェックをしている。
 数分後、絵美の手がスルスルとパソコンに伸び、次々にインターネットを渡り歩き始めた。
 狂は自分の目の前にある、パソコンを笑みを浮かべながら操作し、ガッツポーズを取った。
 狂がボタンを押すと、ブラックボックスから流れる音が変わり、絵美の動きがピタリと止まる。
 絵美はそのまま、巻き戻しのような動きで、パソコンに取り付く前の姿勢に戻り、表情に力が戻った。
「はえ? え、えっと…?」
 絵美は首を捻って、何か思い出そうとするが、それが何なのか解らないようだ。

 狂はヘッドホンを外しながら、絵美に向かい微笑む。
 絵美は訳が解らず、キョトンとした表情をして、狂の笑顔を見つめる。
「絵美…お前の、そのいやらしい身体を見せてみろ…」
 狂がそう命じると、絵美の身体に変化が起こった。
 頬に一瞬で朱が走り、表情がトロリと蕩け、目に霞が掛かる。
「は…い…。ご主人様…」
 絵美の手がスカートの端を掴むと、ユックリと持ち上げ始め、足をM字に拡げる。
 プルプルと震える足の付け根には、何も身に付けて居らず、秘裂が剥き出しになっていた。
 その秘裂は、パックリと口を開け、ダラダラと蜜を溢れさせている。
 絵美は顔を伏せ、自分の身体の反応を恥じているように、震えている。

 狂は絵美の前に来ると
「絵美…今の気持ちを言ってみろ…」
 絵美に問い掛ける。
「は、はい…凄く恥ずかしい…です…。でも、命令には…従わなきゃ…いけないし…。いやらしい…身体が…恨めしいと、思うと…どんどん…いやらしくなって…。恥ずかしくて…ゾクゾクします…」
 絵美は告白を続けながら、蜜の量を増やし続けた。
 狂は満足げに頷くと、踵を返して自分の操作していたパソコンに移動し、携帯電話を取り出してコールする。
「稔か? 面白いもんが出来た…。データーを直ぐに送るから、見てみろ」
 狂はそう言いながら、パソコンを操作しデーターを転送した。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊