夢魔
MIN:作

■ 第23章 絶頂7

 沙希が思い浮かべた[餌]と成る倒錯は、やがて現実に変わって行く。
 庵の舐め回す唇から、鋭い歯が剥き出しになり、沙希の乳房に噛みついた。
 その噛み方は愛撫のような甘噛みでは無く、本気で歯を立て肉に食い込ませる噛み方だった。
 沙希の頭の中で、苦痛が走り力無く開いた唇から、声が漏れる。
「くっ、ふぅ〜ん…、あっ…、はぁ〜〜っ…」
 その声は、苦痛の声ではなく、明らかに官能の色を含んでいた。
 庵の唇は、沙希の身体を動き始める。

 肩、胸、腕、腹、太股、その全身を、舐め噛みついた。
 沙希の口からは、熱い吐息が漏れ、瞳は熱に浮かされたように潤む。
 股間からは、しとどに愛液が溢れ、ヒクヒクとオ○ンコが蠢いている。
 薄く血が滲む歯形が、全身を飾り始めると、沙希の心に火が点き
「庵様…沙希は、庵様の餌です…。如何様にも貪って下さい…。愛して下さいなんて、絶対に言いません。ですから…、ですから…沙希を食べて下さい! お側に置いて、食べ尽くして!」
 頬をピンクに染め、潤んだ目で宙を見詰めながら、恍惚とした表情で叫び、庵に哀願した。

 庵は沙希の哀願の叫びを聞いて、ビクリと身体を震わせ、上体を起こすと沙希の身体を見詰める。
 血にまみれ、あちこちに無数の歯形が付いた、その身体は庵の目に眩しく映った。
(俺は、こいつを幸せに出来るのか…)
 脳裏に浮かんだ言葉を、直ぐさま別の言葉が塗りつぶす。
(俺はこいつを忘れられるのか…)
 庵は押し寄せる、暗い不安に頭を振り
「俺と一緒にいても、お前は幸せには成れないぞ…」
 庵が言った言葉に、沙希は愕く程穏やかな表情で
「私の幸せは、人とは違います…。私は、庵様と一緒にいる事が、一番幸せなんです…」
 庵に対して言い切った。

 庵は、その沙希の自信に、首を傾げ
「何で、お前はそんな事が言えるんだ?」
 不思議そうな表情を浮かべ、問い掛ける。
 すると、沙希は顔を真っ赤に染め、視線を外すと庵の右手を掴んで、股間に導き
「こんな風に成っちゃうんです…」
 ビショビショに濡れた、オ○ンコを触らせた。
「こんな風にしてくれるの…庵様しか居ないんですもん…。だから、沙希は庵様のお側が良いんです…」
 上目遣いで、庵の表情を盗み見る。

 庵は沙希のその行動、身体の反応、物の言い方全てに驚き、[くっくっくっ]と噛み殺した笑い声の後、爆笑する。
 庵の爆笑に、沙希はキョトンとした表情を浮かべ
「あ〜っ! 庵様、沙希が一生懸命言ったのに、馬鹿にした〜…」
 真顔に戻ると、唇を尖らせ抗議した。
 庵は笑いを堪えながら
「す、すまん…。お前は、理屈じゃないんだな…、お前の牝が、俺の牡に反応する…。ただ、それだけの理由か」
 沙希の言葉と行動の意味を理解する。

 沙希は馬鹿にされたような感じを受けたが、庵の余りに明るい表情に
「庵様が、何か納得されたなら、良いんですけど…。馬鹿だと思ってません?」
 言葉尻を和らげ、問い掛けた。
「いや、お前は凄いな…。狂さんにも言われたが、俺みたいな奴が、ちっちゃく感じる」
 庵は今までに無い笑顔を見せると、ガシガシと沙希の頭を撫でる。
 沙希は庵に撫でられ、先程までの不満を吹き飛ばし、犬が撫でられて喜ぶように、眼を細めた。
 そして、庵が言った次の言葉に、沙希は全身を振るわせる。
「お前は今から俺の物だ。稔さんにも、お前の試合の件が終わったらそう伝える。朽ち果てる迄俺の側に居ろ」
 庵は笑いを顔から消し、沙希の目を見詰めながら、ハッキリと宣言した。

 沙希はその言葉を聞いて固まり、頭の中で何度も反芻して、意味を理解する。
(え? …今のは、庵様が私のご主人様に成ってくれるって、事だよね? 朽ち果てる迄、側に居ろって事は、ずっと飼ってくれるって事? 庵様の、側にずっと居て良いって…? う、嘘? えっ? ホント? い、庵様の奴隷で、良いの…?)
 理解した瞬間、沙希の瞳からポロポロと涙が溢れ出し、平伏すると
「庵様、有り難う御座います。礼儀を知らない奴隷ですが、ビシビシ躾けて下さい」
 庵に奴隷の挨拶をした。
 庵は沙希の髪の毛を掴み、持ち上げるとニヤリと、獰猛な笑いを浮かべ
「ビシビシで良いんだな?」
 沙希の顔を覗き込みながら、問い掛ける。

 沙希は視線を泳がせ、焦りながら
「え〜っと…。最初は程々に…」
 ゴモゴモと言葉を濁して答えた。
 庵は沙希の髪の毛を引き寄せ、顔を近づけると、貪るような口吻をし
「いや、駄目だ」
 沙希の口の中に、言い聞かせる。
 沙希は全身が熱くなり、腰が砕けるのを感じながら
「申し訳御座いません…。庵様の好きなようにお使い下さい…」
 ウットリと、瞳を潤ませ庵の口の中に答えた。
 沙希は庵の奴隷になり、生涯を過ごす事を誓う。

 沙希が庵にしなだれかかると、庵は沙希の両肩を持って突き放す。
 沙希が盛り上がったムードを壊す、庵の行動に流石に眉を顰めると
「沙希、取り敢えず血を止める。これ以上流すと、流石の俺でも明日がきつい」
 真剣な顔で、沙希に告げた。
 沙希は庵の言葉に、ハッと我に返り
(左手の傷! 私が着けたも同然なのに…。ほんっと私って馬鹿!)
 沙希は蒼白の顔になり、庵の左手を掴んで見つめる。

 庵の左掌は、掌の真ん中を端から端迄、横に一直線に走り、5o程の深さで切れていた。
 バックリと開いた傷口を見て、沙希は目の前がクラクラとした。
(な、何…これ…。し、白い物が…見えてる…。あ、あれって骨…?)
 沙希が蒼白な顔で、傷口を見つめていると、庵が左手を握り始める。
「うん、大丈夫だ…、筋までは行ってないな…。ほら、心配するな…これぐらい、直ぐ治る…」
 庵は沙希の頭を、右手でグリグリ撫でると、立ち上がって薬箱を取りに行く。
(な、何で…、そっか、庵様痛みが無いから…。で、でも…あれが、本当に直ぐ治る訳無い…。庵様…ごめんなさい)
 普通なら、苦痛でのたうち回る傷の大きさで有るが、庵は一言も沙希を責めず、笑顔すら向けたのだ。
 沙希は庵の優しい気遣いに、心の底から感謝し、深々と頭を下げて平伏した。

■つづき

■目次3

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊