夢魔
MIN:作

■ 第23章 絶頂15

 ホテルを出てタクシーに飛び乗り、森川家に向かう金田と梓。
 梓はタクシーに乗り込むと、金田に向かい
「良いですか…金田様…あの方は、誤魔化しや嘘を許しません…。そして、相応しい方にしか、私達をお与えになりません…。金田様が、どう言ったレベルをお求めなのかは、金田様がどれだけ真摯に、その心情を打ち明け、自分の行き先を示すか以外有りません…。どうか、呉々もこの言葉をお忘れ無いよう、お願いいたします…」
 稔の事を説明した。
 金田はその言葉を聞き、驚きを隠せず問い掛ける。
「い、今のは…俺に話して良い内容じゃないだろう…。そんな事を、話す許可を彼が与えるとは…」
 そこまで言った時、金田は梓の変化を見つけた。
 梓は暗いタクシーの中でも、解る程蒼白になりながら、ブルブルと細かく震えていたのだ。

 そんな梓を見つめ、金田は全てを理解する。
(梓は、自分で稔様を裏切るかも知れない言葉を俺に告げたんだ…。そこまで、俺の事を…馬鹿野郎だ…俺は…)
 金田は、梓をきつく抱き締め、耳元に囁く。
「梓は悪くない…。梓は俺の求めに答えただけだ…。梓は決して稔様を裏切ったんじゃない…。大丈夫だ、俺が全ての責任を負う…、梓は悪くないんだ…、悪いのは俺だ…」
 梓の耳元に優しく囁き、梓の震えが止まるまで抱き締め、謝罪した。
 梓は金田の優しい抱擁と囁きで、自分を取り戻し
「申し訳有りません…ご主人様…。お陰様で、梓は大丈夫になりました…」
 ソッと金田の耳元に囁き、頬に口づけをして、ニッコリと微笑んだ。

 タクシーを散々急がせ森川家に2人が着いたのは、25分後だった。
 森川家の電気は完全に消え、寝静まっている。
 梓は鍵を取り出し、中に入るとリビングの明かりを付けた。
 煌々と照らされたリビングの奥、梓の部屋の前にいつものように、美姉妹が眠っている。

 梓の直ぐ後ろに着いてきた金田は、その光景を見つめ驚いた。
 スヤスヤと床の上に眠る、2人の少女は金田が見た事もない程、倒錯的だった。
 金田が口をパクパクさせ、指差しながら梓の顔を見つめると
「娘の美香と美紀で御座いますわ。金田様…」
 梓はニッコリ微笑んで、両手をパンパンと叩く。
 すると、2人の美少女は、パチリと目を開け飛び起き、梓を確認すると平伏し
「梓様、お帰りなさいませ」
 深々と、母親に頭を下げる。

 梓が2人に向かって
「急用が出来て、ご主人様がお越しになるわ。用意なさい」
 静かに告げると、2人は驚きを浮かべ、立ち上がる。
 その時、初めて2人は金田の存在に気付き、小さな悲鳴を上げて身体を隠した。
「医院長の金田様よ、ご主人様の大切なゲストです。挨拶なさい」
 梓が2人に告げると、美香と美紀は直ぐさま、金田の前に平伏し
「稔様にお仕えする美香と申します」
「稔様にお仕えする美紀と申します」
 同時に金田に向かって、挨拶し額を床に擦り付ける。

 金田は2人の挨拶を受けても、何も言葉を返す事が出来ない。
「この2人は、ご主人様の奴隷に成りたくて、ご主人様に一番近付いた私を手本にするため、こうして私にひれ伏し、師事しています…。ですから、どうぞ金田様もこの子達を導いて下さいませ…。私は、この子達のどちらかが、ご主人様の第1の奴隷に成ってくれる事を、切に願っております…」
(そう成らなければ…この子達は、この後無間地獄に堕ちてしまう…あんな方、絶対他には居られる筈がないもの…)
 梓は2人を見つめ、悲しそうな表情を浮かべる。
 金田は、梓のその表情を見て、梓の思いを理解し
「ゲストの金田だ…。お前達の母親の素晴らしさに、心底賛美の気持ちを持っている。俺達のような人間には、稔様は眩しすぎるが、頑張りなさい…」
 2人に向かって、優しい声を掛けた。

 美香と美紀は顔を上げて、金田を見つめ
「あ、有り難う御座います…金田様のお言葉、励みに致します…」
「有り難う御座います。梓様のように少しでも、稔様に近づけるよう努力いたします」
 それぞれ、深々と頭を下げて、礼を言った。
 金田は2人の美少女を見つめ
(ちょ、ちょっと待て…この2人は高校生だろ…何だこの色気、この節度は…。溝口が見たら、腰を抜かすぞ…、由美子が小学生に見える…)
 愕然とし、その表情のまま梓に顔を向ける。
 梓は金田の顔を見て、その思いを理解しクスクスと微笑み浮かべ、顔の前でパタパタと手を左右に振る。
 その仕草は、レベルが違うと言っているのが、直ぐに金田にも解った。
 それは、金田自身が感じた事だったからだ。

 2人は挨拶を終えると、稔の来訪に備える。
 洗面所に行き、顔を洗って、口をすすぎ手早く身なりを整えると、直ぐに土間で正座する。
 梓も手早く、洋服を脱いで
「金田様、もう直ぐご主人様がお越しに成られます。私とここでお待ち下さい」
 そう言って全裸に貞操帯と首輪を着けた姿で、リビングの床に正座した。
 2人の少女が、玄関に消えて5分後、玄関の扉が開く音がし、2人の少女の声が聞こえてくる。
「稔様、いらっしゃいませ…」
 挨拶を受けた稔は、玄関からリビングに入って来た。

 2人の美少女を携えた美少年は、リビングに入るなり金田に向かって
「さっきの電話での件ですが、どう言う事ですか?」
 真剣な表情で、金田に問い掛けてきた。
 金田は稔の言葉に、ビクリと震えると力無く俯き、モジモジと始める。
 だが、そんな事を稔が許す筈がなかった。
「それが、貴男の答えですか?」
 稔の言葉に、金田はタクシーの中で、梓が自分の精神を、犠牲にしてまで告げた言葉を思い出す。

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