夢魔
MIN:作

■ 第23章 絶頂16

 金田は強く頭を振ると
「柳井君…、いや、稔様! 私を奴隷の端に加えて下さい! 私は梓さんに触れ、稔様の偉大さを知りました。稔様のゲストの位置に、私は居られるような尊大な事はこれ以上出来ません…。どうか、奴隷として稔様に仕えさせて下さい!」
 稔に向かって、平伏し自分の思いを真剣に告げた。
 稔は金田の前に立ち、ジッと金田を見下ろすと
「梓…来なさい…」
 梓を呼びつけた。

 梓は弾かれたように、金田の横に平伏すると、稔は静かに問い掛ける。
「これは、梓の差し金ですか?」
 稔の質問に、金田が慌てて
「そ、そんな事はございま…」
 稔に言おうとしたが、その言葉を遮るように
「貴男の言葉を許可していませんよ!」
 稔が強く言い切った。
 その場にいる全員の動きが止まる程、その言葉は強かった。

 梓は震えながら、稔に平伏し
「私が、稔様にお仕え出来る方法として、思いつく事を金田様にお話しいたしました…」
 か細い声で、ハッキリと稔に告げる。
 稔はジッと梓の背中を見つめ、その心を推し量った。
 梓の背中は小刻みに震え、今にも崩れ落ちそうだった。
 金田はそれを目の端に捉え、堪らず身体を起こして、梓の身体を抱きすくめると
「梓さんは悪くありません! 梓さんは、私が求める事を口にしただけです! 梓さんは…梓さんは、稔様を裏切るような事は、決してしておりません! 悪いのは、全て私です!」
 必死の形相で稔に打ち明ける。

 稔はフッと微笑むと、梓の肩に手を添え
「梓…有り難う…梓の僕を思う気持ちに、嘘偽りはない事が良く分かったよ…。梓は、金田さんが僕に必要だと思ったんだね…。そして、金田さんともっと身近な存在に成りたかったんだね…」
 優しく、梓の気持ちを言い当てた。
 稔の言葉を聞いた梓は、その震えがフッと消え、全身の力が抜けて行く。
 稔は金田に向き直り
「金田、今からお前は、僕の奴隷だ…。これからは、僕の命令に服従しなさい」
 静かに力強く宣言した。

 金田は稔の言葉を聞いて、おこりが来たように細かく震えた。
(う、うおぉ〜〜〜…な、何だ…全身が震えて、止まらない…。それに、この充実感は…)
 自分の身の内に起きた変化に戸惑い、自分が涙を流している事にも気付かなかった。
 金田は只、梓を包み込み、その感覚に酔いしれていた。
 そして稔に視線を戻すと、自然と頭を下げ
「誠心誠意尽くす事を誓います」
 そう言って平伏していた。

 稔はスッと立ち上がり、金田の背中に向かって
「金田…お前は凄いぞ…。ここまで成った梓が、その精神を掛けてお前を取り込みたい、側に居続けたいと思わせたんだからな…。お前はそれに対して、示さなければならないぞ…」
 静かに優しく告げる。
 金田は稔の言葉に、更に頭を深く下げ
「何なりと、ご命令下さい」
 稔の言葉に答える。

 稔はスタスタと、2人の前を横切りソファーに深々と、腰を下ろす。
 稔はリビングの入り口で四つん這いに成っている、美香と美紀を見つめ。
「美香・美紀、こっちへおいで」
 手招きすると、2人はスタスタと高足の四つん這いで、這い進んでくる。
 稔の前に進み出た2人に、スッと手を伸ばした稔は
「梓…、今日で何日目ですか…」
 静かに低い声で問い掛けた。
 梓はその声に、ビクリと震え
「は、はい…3日目で御座います…」
 項垂れながら、稔の質問に答えた。
 稔がした質問は、この美姉妹の世話を焼かなかった日数だった。

 稔はスッと視線を梓に向け、金田に向ける。
「僕も説明不足だったのは、認めますが…、可哀相に…」
 そう呟きながら、美香と美紀を抱き締めた。
 稔達の会話の内容が、全く解らない金田は、言葉の断片を必死に集める。
(今日で3日…、稔様の雰囲気、梓さんの態度、それにこの少女達から匂うモノ…。ああぁ! お、俺のせいだ!)
 金田は直ぐにそれに気が付いて、ガバリと頭を下げ、稔に謝罪する。
「み、稔様! 悪いのは、悪いのは私で御座います! この3日間、仕事が終わると遅くまで、連れ歩いていた私に責任が御座います! 梓さんは私について来ただけで、非は全て私に御座います!」
 金田はブルブルと身体を震わせ、梓を擁護した。

 稔は金田を見つめ、首を左右に振ると
「いいえ、非は僕、梓、そして金田。この3人に有ります。しかし、良く理解できましたね?」
 金田に問い掛けた。
「はい。稔様の怜悧な雰囲気は、何かのミスが発生している事を意味し、そして梓さんの態度と、それを守れなかった原因、そして日数を充て嵌めると、必然私の罪が浮き彫りになりました。恐らく、このお嬢さん方の世話を私のために、放棄せざるを得なかったと判断しました」
 金田は平伏しながら、稔に数分の間に把握した事を説明した。
「流石は切れ者です。ほぼ完璧に状況を読みましたね」
 稔が満足して、頷くと
「どうです? この方がこれから、お前達の家族に成るんです」
 美香と美紀にニッコリ微笑んで話した。
 稔の言葉を聞いた、その場の全員が意味を把握できず、固まった。

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