夢魔
MIN:作

■ 第23章 絶頂17

 稔がポツリと言った言葉で、森川家のリビングは、水を打ったように静まりかえった。
(な、何…、どう言う事…奴隷として、同じ位置って言う事かしら…)
(か、家族…? い、今家族って仰ったわよね…)
(え? え? え〜? 家族…?)
(そ、そんなまさか…稔様…それは…)
 美香・美紀・金田は、その真意を捉える事が出来ず、梓だけが稔の考えを、うっすらと予測した。
 稔はニッコリ微笑み、項垂れている梓に目を向け
「梓、顔をお上げ…」
 優しく声を掛ける。
 梓がスッと顔を上げると、稔は梓に向かい
「これから梓は、金田の事を[旦那様]と呼びなさい…。お前の夫として、終生仕えるんだ」
 そう告げた。

 途端に梓の顔が歪み、震え始める。
「あ、梓は…梓は…もう、ご主人様には…不要なのでしょうか…」
 梓がそう問い掛けてくると、稔は静かに首を横に振り
「それは無いよ。この命令は、便宜上だ。つがいの方が、世間的にも通りが良いでしょ…。こうすれば、梓も人目を気にせず金田に恩を返せるし、金田も僕に接触しやすくなる。娘の同級生としてね。それに今回のような事も、起き難い」
 稔の言葉に、梓が有る事に気付いて問い掛けた。
「で、でも、金田様はご結婚なさってる筈ですが…」
 稔と金田の顔を、交互に見つめながら聞く梓に
「1週間前だね…確か成立したのは…」
 稔が金田に問い掛けると
「はい…。妻の浮気と浪費の動かぬ証拠を突きつけ、家から叩き出しました…。でも、どうしてそれを…、まだ親しい友人にすら話して無いし…。知っているのは、私と妻だけの筈ですが…」
 金田はポカンと口を開け、稔を見つめる。

 稔はニッコリ微笑むと
「今の世の中、秘密にしようとしても中々隠し通せないんだよ…」
 金田に諭すように告げ、梓を見つめ
「これで問題が無いのは、解ったね?」
 問い掛けると、梓は驚きながらもコクンと頷いた。
「あ、あの〜…さっきからの話しの流れを、私なりに頭で整理したんですが…。今の話しで行きますと、何だか私と梓さんが結婚するような感じに、成ってるんですが?」
 金田が恐る恐る、稔に問い掛けると
「ええ、そう言ってるんですよ…。何か不都合でも?」
 稔は金田に問い返した。

 金田は稔にあっさり肯定され、目が点になり
「え〜〜〜〜っ! わ、私が…、あ、あ、梓さんと結婚! そ、そ、そんな…、いや、あれ、おかしい…何か…可笑しいぞ…そうだ、これは夢なんだ…ははは…全く、俺は…」
 余りの成り行きに、泣き笑いのような顔で、頬を抓った。
 一度軽く抓ると、驚いて更に力を入れる。
 金田の頬から、手がポトリと下に落ち、金田は稔に向き直って、泣きそうな声で
「稔様…痛いです…。これは、夢じゃないんですね…」
 稔に問い掛けた。
「ええ、夢じゃありませんよ、それとも、金田は梓と夫婦に成るのは嫌なんですか?」
 稔が認め、逆に問い返すと、金田は首をブンブン左右に振り
「そんな、勿体ない事、口が裂けても言いませんし、天地がひっくり返っても、辞退しません!」
 真剣な顔で、稔に答えた。

 稔が梓に視線を向けると、梓は深々と頭を下げ
「ご主人様のお計らいに、梓は心から感謝いたします…」
 稔の言葉に、礼を言った。
 金田は梓の言葉に、驚いて梓に向き直り
「そ、それじゃ、梓さんは俺と結婚するのは、嫌じゃないんですか?」
 問い掛けると
「嫌だなんて事、有りませんわ。金田様のお側で奉仕が出来、ご恩をお返し出来る機会をどうして、嫌だと言うんですか? 私は喜んで、嫁がせて頂きます」
 梓がハッキリと金田に言った。
「でわ、決まりで良いですね…」
 稔が微笑みながらそう言うと、金田と梓はお互いを見つめ合い、手を取り合って稔の命令に恭順した。

 3人のやり取りを見ていた美香と美紀が、事の展開に呆気に取られ
「え、ええ? ママ…結婚するの?」
「そ、その人が、パパに成るの?」
 ポツリと、梓に問い掛ける。
 梓は2人にニッコリ微笑み
「ええ、そう成る事になりました。金田満夫さんです。病院の医院長さんよ」
 2人の娘に紹介する。
「え、え〜と…。初めまして、結婚を許可された、金田です…宜しく…」
 金田は薄い頭を掻きながら、ペコリと2人の美少女に頭を下げる。

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