夢魔
MIN:作

■ 第23章 絶頂20

 金田が謝罪を終えると、梓が金田を促す。
「さあ、旦那様、この子達を3日振りに洗いますわ…髪の毛は2回洗って上げて下さいね…」
 梓はそう言うと、金田の洋服を脱がし始める。
 すると、美香と美紀も立ち上がり、梓の手伝いをして金田の服を脱がせた。
「おあ、ちょ、まって…脱ぐ…脱ぐから…」
 金田は小さな抗議の声を上げ、3人の奴隷に洋服を剥ぎ取られていった。
「はいはい、で、次はどうすれば良いんだ…教えて呉れ梓…」
 全裸にされた金田は、開き直って諦め声で梓に質問すると
「ええ、洗って上げて下さい…」
 梓は金田の手を指差し、普通に答えた。

 金田は目が点になって
「は? 何? い、今なんて言った? これ、手で洗えって…。はぁ?」
 両手を顔の前に持ち上げ、何度も聞き返す。
 だが梓は、金田に向かい
「そうです、こうやって身体の隅々まで、洗って上げるんです」
 説明すると、美香の身体を両手にボディーソープを塗し、撫で始めた。
 美香はウットリとした顔で、梓に身体を預け、されるままに全身を撫でられていた。
 金田はボディーソープのボトルを見つめ、美紀を見る。
 美紀はペタンと床に座り、ジッと金田を見つめていた。
 金田は両手にボディーソープを塗し、美紀を手招きすると、美紀はピョンと飛び起き、金田に身体を預けた。
 4人はその後、お互いに身体を摺り合わせ、全身を洗いあった。
 金田は自分の今置かれている状況が、本気で恐くなる。
 そう、今迄の不幸を全部合わせても、今日、行われている幸福が、強すぎて本気で夢でないかと考えていた。

 お風呂場で全身を洗い終わった金田は、改めてリビングで美香と美紀に挨拶した。
「え、え〜と…。今度、稔様の命令で、管理者に成った金田満夫です。お二人の母親の梓さんとは、結婚させて頂く事に成りました…。見た目もこんなブサイクですが、気持ち悪がらずに付き合って下さい…」
 ペコリと頭を下げて、俯いた。
 そんな、金田に梓は
「ほら、旦那様…。そんな顔をしないで下さいませ、もっと、胸を張って下さい。この方は、私の大切な方なの、貴女達にもちゃんと接して欲しいの…」
 金田を励まし、美香と美紀にお願いした。

 美香は金田の顔を正面から見つめ、ニッコリと微笑んで口を開く。
「私は外見なんて、何とも思いませんし、お風呂で身体を洗って頂いた時に、この方が優しい方だと解りましたから、大丈夫です。それに、こんな素敵なママが、ここまで肩入れなさる方に、ちょっと興味も持ちました。私の方こそ宜しくお願い致します」
 美香はそう言うと、折り目正しく深々と頭を下げた。
 美紀は俯きながら、上目遣いに金田を見つめ
「えっと…美紀も、小父さまの事…嫌じゃ無いです。お姉ちゃんの言うとおり、優しい人だって解ります。だから、お願いしても良いですか?」
 金田に問い掛けた。

 金田が不思議そうに首を傾げて、[なんだい?]と問い掛けると
「ママと結婚したら…、パパって言って良いですか? パパって言って甘えん坊して良いですか?」
 美紀は金田に恥ずかしそうに、囁いた。
 梓は美紀の言葉に、それがズッと有った願望だと、初めて気が付き、目頭が熱くなった。
 美紀は父親という者を全く知らずに育ち、憧れに近い物を持っていたのだ。
 金田は、梓の反応を見て、何となく理解し
「ああ、良いよ…。何にも無い時には、うんと甘えなさい…」
 優しく微笑んで、美紀に答えた。
 美紀は顔を上げ、嬉しそうに笑うと
「パパ、有り難う! えへっ…これからもよろしくお願いしま〜す」
 勢い良く頭を下げて、金田に挨拶した。

 お互いの挨拶が終わり、梓の家族にも受け入れられた金田は、梓と共に梓の自室のベッドにいた。
「なあ、梓さん…おれ、このままで良いんだろうか…。こんな、夢のような状態に成って良いんだろうか…」
 金田はベッドの上で、天井を見上げながら、梓に問い掛けると
「あら、金田様はご不満なんですか? 稔様の決定。ご命令に…」
 梓が問い返してきた。
 金田はガバリと、身体を起こし
「不満が有るわけ無いじゃないか! ただ、俺が望んでいた事を、遙かに凌駕して居るんだ…俺は、恐いんだ…こんな幸せが、俺に回ってくるはずがないんだ…。こんな素晴らしい女性を妻に娶り、あんな可愛らしい娘達が出来、あまつさえその身体の管理まで委される…。普通有り得ないだろう…」
 最初は食って掛かりながらも、徐々にトーンダウンしていった。

 金田は、大きく溜息を吐くと
「それに、これから先どう言う態度で、行動していけば良いんだ…俺は、解らんよ…」
 ボソボソと呟いた。
「あら、そんな事、TPOに合わせれば良いと思いますわ…今迄もそうでした、医院長の顔とサディストの顔。それに後数個加わるだけです、マゾヒストの顔、管理者の顔、そして旦那様の顔…。そう考えれば、良いじゃありません?」
 梓が金田の胸に指を這わせながらそう言うと
「そんなに、簡単に使い分けれるのか?」
 金田が問い返してきた。
 梓は妖しく微笑むと、金田の上にのし掛かり、表情をクルクルと変え、その表情に合わせて、金田の名前を呼んだ。
 金田は梓の変化を驚きながら見つめ、自分も同じような変化を持っている事に気付く。
「梓…やっぱり、君は素晴らしい女性だ…。こんな、俺にも自信を付けさせてくれる」
 金田は満面に笑みを浮かべ、下から手を伸ばし、梓を抱き締め感謝を告げた。

 梓はそんな金田の胸の中から、顔を覗かせ悪戯っぽく笑うと
「実は、私もう一つ、顔を持って居るんです…。久しぶりなので、出せるかどうか不安なんですが…お披露目して良いですか?」
 金田に問い掛けてきた。
 金田は驚きながらも頷いて、梓の顔を覗き込む。
 梓は、はにかんだ少女のような顔で
「あ・な・た…」
 と金田を呼んだ。
 金田はこの新妻が、愛おしくて堪らなくなった。
「梓…お前は…本当に、凄いな…」
 金田は満面の笑みを浮かべ、身体を入れ替え、梓の身体に覆い被さり、優しくキスをした。

 モソモソとベッドで2人が動き始めた時、梓が急に金田の動きを止め、ソッとベッドから降りて襖に向かう。
 梓が呼吸を整え、襖に手を掛けると、勢い良く開いた。
「貴女達! 今日は自分のお部屋で寝なさいって言ったでしょ!」
 梓の声に、ビクリと震えながら、えへへっと笑う2人の影を見て、金田が笑いを噛み殺す。
「美香ちゃん、美紀ちゃん…今日は、全員で寝ようか…」
 金田がそう言うと、梓は頬を膨らませ、美香はモジモジとし、美紀は手放しで喜んだ。
 金田は幸せの絶頂を感じた。
 だが、この結婚を望まない2人の人間に、金田の人生は、大きく変わる。

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