夢魔
MIN:作

■ 第25章 胎動4

◆◆◆

 薄暗いダーツバーの店内で、下卑た笑いを浮かべながら、3人の男がダーツをしている。
 男達は酒を煽りながら、ゲームに興じていた。
 それは、このような店では、ごく普通の風景だった。
 たった一つ違う事は、その的に成っているのが、生身の人間だという事だけだった。
「ごぉ〜が〜っ」
 矢が刺さる度に、的にされている男が、口にねじ込まれたおしぼりの下から、苦鳴を上げ首を激しく振る。
 男は手錠を掛けられ壁に吊られ、身体には1から50迄の数字が書き込まれ、それを区切るように線が走っていた。
「へへへっ…トップは俺だったから、次のオ○ンコは俺の番だぜ」
 男はそう言うと、フロアーの端に踞っている、女の手を取り引き摺ってくる。

 女性は20代前半の様だったが、その顔はボコボコに腫れ、あちこちから血を流していた。
 2人は同じデザインの指輪を左手の薬指にしており、年齢的に考えて新婚のようだった。
「ちぇ…。俺はまたケツの穴かよ…」
 もう1人の男が、女の腰を掴むと背後に回る。
「いやぁ〜…も、もう…やめへぇ〜…」
 女が涙を流しながら、か細い声で哀願した。
「うるせぇ! こうなったのも、お前らが悪いんだろうよ」
 もう1人の男が、女の髪の毛を掴み、拳を顔面に打ち付ける。

 女は首をカクカクとさせ、項垂れると
「たら…グラスを…倒したらけなのに…」
 口から新しい血を流しながら、ボソボソと囁いた。
 床には、折れた歯がポトリとまた一つ、落ちる。
 的にされていた男は、[う゛〜う゛〜]とうなり声を上げながら、真っ赤な顔で哀願している。
 そんな男の前に、女を引き摺り出し、男達は女を犯し始めた。
 女は抵抗を止め、力無く、為すがままに成る。
 もう何度目か解らない陵辱。
 最初は10人以上居た男の仲間達も、今はこの3人に成っていたが、執拗な責めに女は何も感じなくなっていた。

 男の1人が反応を見せない女に、不満を感じると
「おい、マスター…あれ出せよ…」
 カウンターの中で黙々と下を向いて、グラスを磨くマスターに告げた。
 マスターは顔を上げると、泣きそうな顔をして
「ぼっちゃん…もう、勘弁して下さい…。こなあいだも、小火騒ぎに成ったばかりじゃ無いですか…」
 男に哀願する。
 男はイラリとした顔をマスターに見せ
「本当に、燃やして欲しいのか?」
 問い掛けた。

 マスターは項垂れながら、カウンターの上にアルコール度数90のスピリッツの瓶を載せる。
 男はその瓶を持って、女に近付くと頭から注ぎ、全身に振りかける。
 強烈なアルコールの臭いに、女が驚くと
「おい、ちゃんと喘ぎ声ぐらい出せよ…。じゃないと、燃やすぞ…」
 オ○ンコにチ○ポを差し込み、女の目の前にライターを差し出し、火を付ける。
 女の顔は恐怖に引きつり、歯が何本も欠けた口を大きく開け、喘ぎ声を上げ始めた。
 男の1人が、的にされた男に近付くと、髪の毛を掴んで、犯される女の姿を見せ付ける。

 男達は必死で喘ぎ声を上げる女を大笑いして、なじり馬鹿にしながら犯し続ける。
 男達は腰を振って、勝手に果てると、女から離れ
「今の喘ぎ声、嘘くさいと思う人…」
 問い掛ける。
 3人が手を上げると、女の顔が引きつり、男はニヤニヤ笑って、火の点いたジッポを女に投げた。
 女の身体は、あっと言う間に火に包まれ、全身を覆う。
 ゴロゴロと床を転がり、慌てふためいて火を消そうとする女を、男達は腹を抱えて嘲った。

 そんな中、店の扉を開けて、地味なスーツを着た1人の男が唐突に現れ
「ぼっちゃん…、荒れてますね…。あんまり無茶は止めて下さい…、揉み消すこっちの身にも成って下さいよ…」
 カウンターのスツールに腰を掛けると、1人の男に告げる。
「榊原さんか…、何言ってんです…。俺が無茶すると、榊原さんが儲かるんでしょ…」
 榊原と呼ばれた男が、薄笑いを浮かべ
「違いない…。この間も、随分お手当頂きましたからね…」
 男に告げた。
 男は苦虫をかみつぶしたような顔で、榊原の横に座り
「言わないで下さい、今思い出しても腑が煮えくりかえるんですから。折角良いオモチャが手に入ると思ったのに…、工藤の野郎…。親父のファイルに貧乏って書いてたから、入院費なんか出せないだろうし、金で縛り付ける積もりだったのに、あっさり用立てやがって…。しかも、その後速攻で、手出し禁止なんだもんな、わざわざ待ち伏せして、チビを跳ねた俺が馬鹿みたいだったぜ…」
 男は轢き逃げした事実をあっさり話し、グラスを空ける。

 男がグラスをカウンターに置くと榊原がクスクスと笑い
「所で、ぼっちゃん…今日から、期末試験じゃ無かったんですか…? 行かないと、またどやされますよ…」
 男に告げた。
「あ、やべぇ…。完全に忘れてた。親父、うるせぇからな…、理事長なんだから、息子のテストくらい操作しても、罰はあたんねぇのに…。めんどくせぇけど、近々学校で面白い事をやるみたいだから、怒らすのも何だし、ちぇ、行ってくるか…」
 そう言って、竹内伸也(たけうち しんや)は椅子から立ち上がり、フラフラと店を出て行った。
 榊原は死んだ魚のような目で、伸也が出て行ったドアをジッと見つめる。
 榊原は伸也がこの辺りを、離れる時間を量り、店内を振り向くと
「今日は解散しろ。これ以上やるなら、しょっ引くぞ!」
 残った男達に、大声で告げる。

 男達は榊原の言葉に、急いで店から出て行き、残ったのは被害者カップルと、マスターだけに成る。
 榊原は床に転がった女に目を向けると、女の火は完全に消えていた。
 女は失禁しながら、虚ろな笑い声を上げ涙を流し、その瞳からは意志も消えていた。
 榊原は吊られた男に向き直り
「良いか…お前達は何処の誰とも、解らない連中に掠われて、知らない場所で乱暴を受けた…。もし、万が一警察に届ける事が有ったら、そう言うんだ…。この市は、行方不明者が大都市圏並みに多い、お前達がそう成らない保証は、何処にも無い。解るか? 俺の言ってる意味が…」
 静かに威圧を込め告げる。

 吊られた男は、ブンブンと首を縦に振り、榊原の言葉に答えた。
「マスター…暫くしたら、[善意の第3者]として救急車ぐらいは、呼ばせてやるよ…。良いか、俺の仕事を増やすなよ」
 榊原は店に来た時と同じ唐突さで、惨状を後にする。
 所轄の刑事には、不良少年が悪さをする場所は、網羅しているのであろう。
 今日の尻ぬぐいで、また懐が暖かくなる。
 榊原にとっては、良いアルバイトだった。

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