夢魔
MIN:作

■ 第25章 胎動7

 電話を切った佐山は、唐突な展開に大笑いする。
「はははっ! 総合病院の中にも、馬鹿は居るモンだ…。俺達みたいな人間に、わざわざ弱味を見せて呉れるんだからな…。確か外科部長は、あそこのbRだった筈だ。こりゃ、あそこを手に入れるのも、時間の問題だな…」
 佐山の後ろから、身体を押しつけ全身をまさぐりながら、舌を這わせる響子の髪の毛を、右手で掴むと前に引き出す。
 佐山は更に目の前で懸命に奉仕する、明日香の髪の毛を掴んで、グイッと顔を引き起こした。
 2体の人形を見下ろし、その表情を見つめる。
 ゾクゾクする程色っぽい表情を浮かべる明日香と響子は、今の佐山のお気に入りに成っていた。
 明日香と響子は濡れた瞳を、ウットリとさせ、赤い舌を懸命に伸ばして、佐山の亀頭に舌を這わせる。

 佐山はそんな2体の髪の毛を離すと、人形達は自分達の表情が、主人に良く見えるように上を向きながら、2人で奉仕を始めた。
 佐山は、笑いが止まらない。
「人形は良い反応をする様に成るし、素晴らしい奴隷も手に入れ、おまけに養殖場の方も順調で、会社の株価は上がる一方だ。これで、総合病院まで、手に入ったらそれこそ、この市の独裁者に成れるぞ…。近頃良い事ずくめで笑いが止まらんわ」
 佐山は人形達の奉仕に、身を委ねながら2年前から株価が上昇し、資産が3倍程に成った事を単純に喜んでいた。
 その事が、竹内の会社内で問題に成っている事など、執事をしている佐山には知る由もなかった。

 佐山が放出すると、2体の人形はその精を綺麗に舐め上げ、お互い分け合って啜り上げる。
 沙希が1ヶ月の内に使った結果だったが、その様は以前と比べて、雲泥の差があった。
 色気、技術、欲望、願望、そして妖しさ、全てが佐山の飼っていた頃と比べて、飛躍的に上がっている。
 2体の人形は、自ら身体を投げ出し、佐山の精を搾り取ろうとした。
 だが、その行動は全て佐山の命令の範囲内で、行われる。
 佐山が下した命令を受け、その中でどれだけ自分が感じる事が出来、どれだけ主人を喜ばせられるか、明日香と響子は常に考え行動するように成っていた。
 必然、その反応は、他の人形とは比べ物に成らなかった。
 今では佐山は、他の人形も沙希に使わせるように成り、反応の良く成った人形も増えているが、この2体は群を抜いていた。

 佐山が立ち上がると、明日香と響子はスッと移動して、佐山に洋服を着せ始め、自分達もそれぞれの洋服を身に着ける。
 響子は黒のスーツに、明日香はメイド服を身に着けると、佐山の前に平伏した。
 明日香の手には、佐山の携帯が持たれており、チカチカとランプが明滅し、メールの到着を知らせている。
「おお、お前達のご主人様は、働き者だな…。もう、メールを送って来たぞ」
 佐山はそのメールを開いて、確認すると
「何じゃこりゃ? さっぱり解らんぞ…」
 素っ頓狂な声を出して、次々にメールを開き画像を確認する。
 だが、どの画像も佐山には、チンプンカンプンだった。

 庵の図面は、見る者も有る程度の技術を有していないと、読み取れないように書かれている。
 それは、庵の矜持で有ったが、その矜持は全く別の所で、思わぬ役に立つ。
「本当にこれが、図面なのか? 計算書にしては線が多いし、図面にしては形が解らん…」
 佐山はクルクルと、携帯電話を回しながら、図面を判別しようとするが、途中で諦めた。
 携帯電話を閉じると、ポケットの中に入れ、部屋を出て行く。
 スッと佐山の前に出た、響子が音も無く扉を開けると、佐山は本館に向かった。
 その佐山を明日香は、深々と頭を下げて、送り出すと自分の仕事を始める。

◆◆◆

 狂と絵美は食事を終えて、校舎にたどり着くと、職員室の側で怪しげな動きをする教頭を見つけた。
 ジッと職員用トイレの入り口を見つめ、誰かを待っている。
 すると、職員用トイレから春菜が、項垂れながら出てきた。
 教頭は春菜の姿を見つけると、直ぐに動き始める。
(あの馬鹿…。本当こういう事には目聡いな…)
 狂は呆れながら、素早く教頭の後を追い掛け
「教頭先生、少し良いですか?」
 背後から声を掛けた。

 教頭はギクリと驚いて、首を巡らせ狂の姿を見る。
 狂は気弱そうに頭を下げながら、鋭い目線を教頭に投げつけていた。
 教頭はその目線にたじろぐと、項垂れ狂の元に歩いてくる。
「おい、まさか…手を出す積もりじゃないだろうな…。まだ、覚醒していない検体に手出ししたら…お前稔に殺されるぞ」
 教頭に向かって、小声で素早く話し掛けた。
 教頭はバツが悪そうな顔で
「い、いや…そんな積もりは…全く無かったんだ…。ただ、凄い変わり様を…。驚いて…その…」
 しどろもどろに成りながら、狂に説明する。

 狂はそんな教頭に
「良いか、呉々も言っておくが、お前達には何の権限もない。それだけは、理解していろ。それと、俺達を怒らせたら間違い無く、お前の首は飛ぶぞ」
 静かに威圧を込めて告げると、ペコリと頭を下げて離れた。
 教頭は項垂れながら、職員室の中に戻っていった。
 そんな2人のやり取りを春菜は、職員用トイレの壁に隠れて、ジッと見つめている。
 狂が呼んだ教頭と言う言葉に、敏感に反応し身を隠していたのだ。

 春菜は狂を見つめながら、迷っていた。
(どうしよう…垣内君の居場所は知りたいけど…。昨日あんな乱れた姿、見られたかも知れないし…。声を掛け辛いわ…)
 春菜は狂の目の前で、異常な行動に走り、[オナニーする姿を見られてしまったのでは]と考えていた。
 当然狂は見ては居たが、春菜の考えを見抜き、逆に声を掛ける。
「あ、霜月先生。大丈夫でしたか? 昨日急に具合が悪そうに成って、突っ伏したから、直ぐに上郷先生を呼びに行ったんですけど…。上郷先生に[ここは、私が見ますから、早く帰りなさい]って言われて、先生置いて帰ちゃったンです…。ヒョッとして、僕のプログラムで気分が悪くなりました? そうなら、ごめんなさい」
 ペコリと頭を下げて、春菜に謝った。

■つづき

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