夢魔
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■ 第25章 胎動17

 由香が飛び出した職員室は、どこかいつもと違っていた。
 教頭はそんな職員室の状態を、ジッと見つめ分析する。
(ん〜…。面白いね〜、今迄から考えると、有り得ない反応だ…。打たれた藤田もそうだが…、周りの教師が誰一人止めようとしなかった)
 教頭はニヤニヤと笑いながら、辺りを再度見渡し
(それだけじゃ無い…、明らかに陶然と見ていた者も、チラホラと居た…。さて、次は俺の番だな)
 教頭は顔を巡らせ、獲物を見る。
 志保里はジッと机に視線を向けたまま、今職員室で起きた事を考えていた。
(教師が教師に、あんな体罰許せない…。でも、身体が動かなかった…どうして…)
 志保里は、体罰が苦手だった。

 叶志保里について、補足しておこう。
 志保里は幼い頃に、両親に先立たれ、親戚中をたらい回しにあって、養護施設に入れられた。
 志保里が育った養護施設は、修道院系で神の名の下、体罰が認められていた。
 志保里は我が強く、意志も強かったため、良くシスター達に体罰を受けて育った。
 体罰を受ける志保里は、更に反抗心を持ち、シスター達を嫌うようになる。
 その嫌悪はシスターの象徴である[禁欲]に向けられ、反発から自慰に更けるように成った。
 その行為は、志保里の身体を開発し、開花させていった。
 志保里は小学生の高学年から、自分を慰める事を覚え、それに溺れる毎日になる。
 そんな中、高校生になり友人達との会話の中で、処女喪失はかなりの苦痛を伴う事を知り、志保里は性交を躊躇うようになる。

 だが、美人でスタイルも良く、頭脳明晰だった志保里は、友人達からも経験済みと勘違いされており、何度も体験談を求められた。
 プライドの高い志保里はそれに答え、自分が持っていた知識だけを頼りに、経験談を語る。
 知識はやがて底を突き、それを補うために様々な本を読み漁った。
 志保里のSEXの知識や興味は膨れ上がる一方、同年代の男子では、とても太刀打ちできないと噂が広まり、志保里に近付こうとする男子は減ってゆく。
 志保里はこうして、同年代の恋人とロストバージンも出来ぬまま、高校大学に至る。
 その結果、志保里は26歳の現在も、SEXを経験して居らず、処女のままだった。
 人一倍SEXに興味が有り、性欲も異常に強い処女が、志保里なのだった。

 志保里をズッと見つめていた教頭が、口を開き志保里を呼びつける。
「叶先生ちょっと…」
 志保里は教頭の声に気付かず、まだ自分の考えにのめり込んでいた。
「叶先生! 居ないんですか!?」
 教頭が声を張り上げて呼びかけると、周りの教師が志保里をつつき
「叶先生、教頭先生がお呼びですよ…」
 耳打ちされて、志保里は初めてその事に気付く。
 志保里が顔を上げ、教頭の方を向いた時には、もう手遅れだった。
 教頭は真っ赤な顔をして、立ち上がり机から離れて、真っ直ぐ志保里の方に、向かってきた。

 志保里は教頭の形相を見て、臨戦態勢に入るつもりで、心を落ち着けようとしたが、一向に上手く行かなかった。
(ど、どうして…。なんで、こんなに気持ちが落ち着かないの…)
 志保里は幼少時代、院長先生に呼び出され、竦み上がって居る時の事を思いだし、ブルブルと震えている。
 教頭が志保里の目の前に来ると
「叶先生…。どうやら、先生は私の方から出向いてこないと、話しもする気が起きないようですね…」
 押し殺したような声で、志保里に問い掛けた。
「い、いえ…そ、そんな事は…有りません…」
 志保里は怖ず怖ずと首を縮め、目を伏せて身体を強張らせる。
(い、いや…どうしたの…、自分の身体じゃないみたい…。思うように動かない…)
 志保里は普段なら、昂然と顔を上げ教頭の言葉など、鼻で笑うような視線を向けるのだが、今は蛇に睨まれた蛙のように、身体が動かない。

 教頭は、愛用の金属製の指示棒をシャカシャカと出し入れし、志保里を見つめる。
 志保里の立っている姿を足の先から、頭の先まで舐めるように見た教頭が
「今日はまた、一段と私の言葉を無視するような、お召し物ですな叶先生…」
 志保里に向かって、馬鹿丁寧な言い回しで、問い掛けた。
 志保里の服装は、白のブラウスに黒のタイトスカートと言う、極標準的な物だった。
 だが、それはあくまで分類上の物であり、その姿は清楚とは行って来る程の違いが有った。
 白のブラウスは、シースルーで下に着込んだ、チューブトップのシャツが胸の谷間を強調している。
 黒のタイトスカートも膝上5pながら、フロントに深々とスリットが入ったものだった。

 教頭はジッと志保里を見つめ
「以前にも、指導しましたね…? 華美な服装は、控えなさいと…。貴女達は、そんな格好をしていて、一度男性教師が目に止めれば、セクハラだと騒ぎ立てますが、こんな姿を晒している貴女は、セクハラじゃないんですか?」
 説教を始めた教頭は、いきなり指示棒で、志保里の露出している胸元を、指し示して問い掛けた。
 志保里はビュッと勢い良く指された指示棒に、ビクリと身体を強張らせると
「す、すみません…。あ、あの今日は学校が終わって、用事があった物ですから…」
 教頭に謝罪し言い訳をする。
「叶先生…。確か、女性教師には更衣室とロッカーが支給されている筈なんですが…?」
 教頭が問い掛けると、志保里は更に小さく成り、モジモジと始めた。

 教頭はネチネチと志保里を攻撃し、如何にいやらしい格好をしているかを、蕩々と語り続ける。
 志保里は項垂れ、教頭の指示棒が胸や腰や股間に動く度、そこに視線を向けビクリと震えた。
 30分も過ぎると、志保里の心は教頭の言葉と指示棒の動きに、悲鳴を上げ限界を迎える。
 ブルブルと震える、志保里に教頭は
「私の言っている事は、間違いですか?」
 問い掛けると、志保里は涙を浮かべた顔を上げ
「間違っていません…、私は教師の身でありながら、露出度の高い服を着て、男性を誘惑して楽しんでいました…」
 教頭に激情をぶつけるように告げた。

■つづき

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